第99話 巨大な卵を発見した?

 ウォッカを嬉しそうに飲んで良い気分になっている僕らの映像を見て、ますます友好的になったソーヴォイツ連邦。

 そんなソーヴォイツ連邦から、白く光る巨大な卵を発見したとの連絡が僕らに届いた。


 僕らが白く光る巨大な卵を探しているということは、広く世界に知られていて、世界の各国で探してくれていたのだ。


 光る巨大な卵が見つかった場所は、ソーヴォイツ連邦のすぐ近くにあるデルゾン島だ。

 よりにもよって最強と言われる巨大生物がいる島だ。


 超大国アルティア共和国が探しても見つからないので、敵対するソーヴォイツ連邦の周辺が怪しいとは思っていたのだが、嫌な予想が当たってしまった。正直なところ怖いので、デルゾン島には行きたくない。

 しかし、ニノは卵が見つかって、とても嬉しそうに喜んでいる。


《やりましたね。卵が見つかりましたよ》


 ---------------そうだね。見つかったのは良かったんだけど。


《だけど?》


 ---------------最強の巨大生物がいる島は怖いなと思って。


《大丈夫ですよ。殺し合いになることは、そんなにありませんよ》


 その言い方だと、殺し合いの可能性も少しはあるのかな。ニノもなかなか物騒なことを言うものだ。


 巨大な卵が見つかったと伝言してくれたファイン少尉も嬉しそうに微笑んでいる。


「見つかって良かったですね。ちょっと怖い島ですけど、パウンドさんならたぶん大丈夫ですよ」


 ファイン少尉なら『危ないから行かない方が良い』と言ってくれるかと思ったが、そんなことは全くなかった。


「最強の巨大生物が決まるのか。楽しみだな、相棒パウンド。頑張れよ」


 ノックス中尉に至っては、楽しみにしてしまっている。

 僕としてはあまり行きたくはないけれど、この状況では行くしかない。


 ---------------よし、デルゾン島へ卵を取りに行こうか。


《はい。楽しみですね》


 僕らは白く光る巨大な卵が見つかったデルゾン島へ行くことにした。



 ◇



 北ラーシア大陸と南ラーシア大陸に挟まれた細く長い海峡。その海峡を抜けるとデルゾン島がある大黄洋たいおうようだ。

 大黄洋を囲む北ラーシア大陸にはソーヴォイツ連邦が存在し、南ラーシア大陸には様々な中小国家が存在している。


 以前はそれらの国々から警戒されて、細く長い海峡を通って大黄洋へ行くことは出来なかった。しかし、今では僕らへの警戒感は少なくなり、まあまあ歓迎されている。そのため僕らはスムーズに海峡を通ることが出来る。


 僕らは航行している艦船などに気をつけながら、慎重に海峡を進む。海峡を通り抜けると、いよいよ中央にデルゾン島がある大黄洋だ。


 大青洋たいせいようは、とても深くて青い海。大緑洋たいりょくようは、浅いエメラルドグリーンが印象的な海だった。

 大黄洋というからには、何か黄色要素があるのかなと思ったら、薄黄色に発光している巨大電気クラゲが大量にいた。人間がこの海に近づかない理由が、さっそく分かった。


 ---------------巨大クラゲに近づくと、ビリビリと痺れるね。


《はい。チクチクして嫌ですね。あと不味そうです》


 大抵は美味しそうというニノなのに、珍しく食べたくないようだ。

 僕らはそんな不快感だらけの巨大電気クラゲを避けながら、大黄洋の中央にあるデルゾン島を目指して泳いでいく。


 しばらく泳ぐと、前方に大きな島が見えてきた。


 ---------------あの島だね。


《大きな島ですね》


 広々とした砂浜があり、その先には木々が生い茂った深い森に大きな山脈。人の気配が全くなく、大自然の力を感じる。これが巨大生物が支配する島。


 ---------------緊張するね。


《はい。ドキドキしてきました》


 しかし考えてみると、僕らは普通に巨大生物なので、巨大生物だけの島に緊張するのは変な話だ。

 ということで、僕らは堂々と正面の砂浜から巨大生物だけが生息する島、デルゾン島へ上陸した。

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