第4部

第98話 観察される?

 無事に超大国間の戦争は回避され、僕らの抹殺を企てる国もなくなり、平和な日々。

 僕らは卵探しを一休みして、深海の棲家でのんびりしていた。人々のいる喧騒の世界も楽しいが、1匹でのんびりとする棲家はやはり落ち着く。


 ---------------静かな海の底もやっぱりいいね。


《はい。ここは落ち着きますね》


 僕らは巨大生物だというのに気疲れしていた。


 ---------------でもそろそろモフモフ島へ行かないとね。国連の人たちが来るって言ってたし。


《そういえば言ってましたね》


 僕らの様子を見に国連査察団がモフモフ島へやってくることになっている。僕らがモフモフ島にいないことには始まらない。先日の有り難い話が無駄になる。


 ということで、僕らはモフモフ島へ向けて出発した。


 モフモフ島へ到着すると、国連査察団っぽい人たちが待っていた。

 僕らはいつも通り上陸して挨拶をする。


『ゴガオオオン!』(こんにちは)


 国連査察団の人たちはビビりながらも『こんにちは』と言っている。

 僕らは、いつもと変わらずモフモフたちと戯れながら、のんびり過ごす。そんな僕らを国連査察団の人たちは、何やら一生懸命に記録している。僕らはモフモフたちと戯れているだけなのに、何を頑張って記録しているのか。


 国連査察団の人たちが見守る中、僕らはアルティア共和国から本土へ近づく巨大ヤドカリを遠ざける任務を依頼された。

 国連査察団の人たちは、モニターを見て内容を把握している僕らに驚いていた。いつに間にか当たり前になっていたが、初見ならば驚くのも無理はない。


 国連査察団の人たちは、僕らがアルティア共和国から依頼された巨大ヤドカリを遠ざける任務にも潜水艦でついてきた。僕らは巨大ヤドカリを穏やかにアルティア共和国から遠ざける。イメージを良くするため、いつもより優しくやってみた。世界に向けて優しさをアピールだ。


 依頼された任務を終えてモフモフ島へと撤収する。

 モフモフ島に帰った僕らは再びモフモフたちに囲まれて、のんびりとする。いつものようにくつろいだ。

 国連査察団の人たちは、基本的には食事をするかゴロゴロと寝ているだけの僕らの記録を取り続けていた。


 ----------------仕事、頑張ってるね。僕らはこんなにダラダラしてるというのに。


《はい。大変そうです》


 ----------------いつまでいるんだろうね。


《あの人たち、よく飽きませんね》


 --------------そうだ! 少し変化をつけて、あの練習をしてみよう。


 僕らは頑張っている国連査察団の人たちが飽きないように『キュルルルゥゥゥン!』の進化版、土下座の練習を始めてみた。しかし僕らは、足が短いので、正座が出来ない。


 ---------------やっぱり正座は無理だね。


《足が短いですからね》


 僕らが正座が出来ない様子も、国連査察団の人たちは一生懸命に記録していた。


 僕らのモフモフ島での様子は、注目のニュースとして世界中へ広まった。世界中での感想は、おおよそこんな感じだった。


『毛むくじゃらに囲まれて座っているか寝ているだけだね』

『ニュース見てる、凄い。だけど横になって寝ながら見るんだ』

『正座は無理だろ、笑う』

『くつろぎすぎ。見た目は怖いが、危ない生物とは思えない』

『寝てばかり。アレが人間を襲うとは思えない』

『毛むくじゃらの巨大生物、モフモフして可愛い』

『パウンドよりも毛むくじゃらのモフモフを映せ』


 僕らに危険性はない、モフモフが可愛いという感想が多かった。

 僕らが可愛いという感想は全くなかった。


 ---------------僕らよりモフモフの人気が出たね。


《はい。モフモフは可愛いですからね。私たちは仕方ないですね》


 可愛くはなくとも僕らが危険な巨大生物ではないことが世界中に広まった。


 モフモフ島からの映像と国連査察団からの正式な報告で、僕らに危険がないことが、ついにあの人物にも伝わった。ソーヴォイツ連邦エメリスキー大統領だ。

 そのエメリスキー大統領から、友好の証としてメッセージと共に大量のウォッカが送られてきた。


『同志パウンドへ。最高のウォッカを楽しんでくれ』


 これは嬉しい。僕らはソーヴォイツ連邦とも仲良くなった。

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