第95話 大統領演説?

 ジャピア王国の巨応党ジンシロウ党首が、僕らの言いたいこと以上に良い感じのことを世界へ向けて発信してくれた。

 なぜ巨応党ジンシロウ党首はジャピア王国の首相でもないのに、国連でジャピア王国を代表して喋っているのか分からないが、僕らにとってはとても有り難い。


《どうなるのでしょうか》


 ---------------さっぱり分からないけど、ジャピア王国は味方になってくれたね。


《はい。嬉しいですね》


 ジャピア王国が国際的にどれほどの影響力があるかを、僕らは知らない。もしかしたら、僕らとジャピア王国が孤立するなんてこともあるかもしれない。これからどうなるか。


 再びモニターにファイン少尉が映し出された。しかし、ファイン少尉は何も言わない。何かを言いたそうではあるけれど。


《何か喋りたそうですね》


 ---------------そうだね。でも軍人さんだから何も話せないのかな。


《人間は面倒なところがありますね》


 ---------------僕らみたいに1匹で生活してるわけじゃないから仕方ないね。


 ファイン少尉から直接、言葉を聞けなくても、その表情を見るだけで『キュルルルゥゥゥン!』の意味が伝わっていると感じとれる。

 ファイン少尉やノックス中尉もきっと解決に向けて頑張ってくれているに違いない。


 僕らはファイン少尉を見て希望を持ったが、現状は巨応党ジンシロウ党首が演説したあとも、モフモフ島の周辺は緊張感に包まれたまま。

 いまだにアルティア共和国、ソーヴォイツ連邦とも臨戦態勢を崩さない。超大国同士の睨み合いが続いている。


 しばらくして、モニターに映るファイン少尉が慌てた様子で、僕らへ向かって伝言してきた。


「ホワイトハウス前からのライブ中継が始まります。ボワットモワ大統領が世界へ向けて伝えることがあるそうです。パウンドさんも見て下さい!」


 今度は、モニターにボワットモワ大統領が映し出された。何を喋るのだろうか。ボワットモワ大統領は余裕のある笑みを軽く浮かべたあと、堂々と話を始めた。


『アルティア共和国の国民、そして全世界の人類へ伝える。我が国は先ほどのジャピア王国ジンシロウ党首から提案のあった国連査察団の受け入れを表明する。そこで巨大生物パウンドが我が国の軍隊とは一線を画すことが証明されると確信する。巨大生物パウンドを我が国は兵器として利用する気など毛頭ない。ただし! 巨大生物パウンドは我が国にとって、ただの巨大生物というわけでもない』


 僕らとしても兵器として利用されるつもりは全くない。だけど、ただの巨大生物ではないとはどういうことだろう。

 ボワットモワ大統領の演説は続く。


『それでは巨大生物パウンドは、我が国にとってなんなのか? その疑問に対する答えは明快だ。巨大生物パウンドは、我が国にとって大切なトモダチである! 我が国に対し、共闘してパウンドを抹殺するという提案がソーボイツ連邦からあった。世界的に反巨大生物運動が起きていることも認識している。しかし我が国は、巨大生物パウンドを抹殺するというソーヴォイツ連邦からの提案を断固として拒否する! 繰り返して言う。巨大生物パウンドは、我が国の大切なトモダチである! 従って我が国の領域内でトモダチである巨大生物パウンドへ、これ以上の攻撃は認められない。我が国は巨大生物パウンドが示した非戦の意志を尊重し、貴国がここで艦隊を引き上げれば、先ほどのミサイル攻撃は不問とする。貴国も巨大生物パウンドが発した誠心誠意の謝罪を受け入れてもらいたい。ソーヴォイツ連邦エメリスキー大統領、貴君もまたトモダチであることを切に願う。賢明な判断を要望する』


 おお、超大国アルティア共和国の大統領がトモダチ発言! 僕らをトモダチと言ってくれるとは、こんなに嬉しいことはない。

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