第94話 巨応党代表の援護?
僕らは、四方へ向けて新しい挨拶『キュルルルゥゥゥン!』(ごめんなさい)を披露した。ペコリと頭を下げるアクション付きだ。
元々は、ファイン少尉とノックス中尉にお披露目するぐらいに思っていたが、思いがけず全世界に向けて、お披露目することになってしまった。
--------------言ったはいいけど、全く無反応だね。どうなるかなあ。
《うーん、どうなんでしょうね。私には予想できません》
新しい挨拶を披露してしばらく経つが、いまだに何の反応もない。煽ってるとか思われて攻撃されるよりはマシだが、無反応でも困ってしまう。
ここからどうなるのか予想が出来ない。心配だ。
僕らとしては頑張ったつもりなのだが、実際にやったことと言えば、渾身の『グルグガガアアン!』と『キュルルルゥゥゥン!』という雄叫びをあげただけ。よくよく思えばこれだけで、超大国同士の戦争が回避できるとは思えなくなってきた。
もの凄く不安になってきたその時だった。突然、モフモフ島に設置されたモニターにファイン少尉が映し出された。
「今からジャピア王国の巨応党ジンシロウ党首が、国連本部から会見をするそうです。パウンドさんもこのままモニターで見て下さい!」
モニターに映るファイン少尉から伝言がきた。
その後、モニターに映し出される映像が、ファイン少尉から巨応党ジンシロウ党首に切り替わる。
---------------あっ、巨大生物を応援する党の代表! 久しぶりに見た。
《あの怖がらずに近づいてきた人ですね》
モニターに映る人物は、ジャピア王国で復興支援ボランティアをした時に、僕らを恐れずズカズカと近寄ってきた人だ。やけにオーラのあったことを、よく覚えている。
そんな人が国連本部から、一体何の話をする気なんだろう。
モニターに映る巨応党ジンシロウ党首が話を始めた。
『私はジャピア王国の国会議員、巨大生物を応援する党代表のジンシロウです。ジャピア王国を代表して、全世界の皆さんへ私の考えを伝えたい。先ほどのパウンド君の行動を、世界の皆さんは、どう捉えたでしょうか。あのパウンド君の行動は、ソーヴォイツ連邦へ損害を与えて世界中をお騒がせしたことへの謝罪だと、私は考える』
おお、これは凄い。僕らの新しい挨拶『キュルルルゥゥゥン!』が謝罪という意味だと、巨応党ジンシロウ党首には伝わっているようだ。
『一部の国で、我が国やアルティア共和国が、パウンド君を兵器として利用するのではないかと、不審に思っていることは承知している。しかし、我が国もアルティア共和国も、パウンド君を使って他国を脅かすようなことはしないと世界へ向けて断言する。そもそもパウンド君は、仮に我々がそのような指示を出したとしても人類を攻撃することはないだろう。核攻撃を受けても反撃しない、先ほどのパウンド君の行動を見れば、それは明らかだ』
それはそう。どこかの国を襲うように指示されても従うわけないし。そもそもアルティア共和国とジャピア王国が、そんな指示をしてくるわけがないと思っているけれど。
巨応党ジンシロウ党首の話が続く。
『我々がパウンド君を使って他国を攻撃する意思がないことを証明するために、我が国は国連査察団の受け入れを表明する。アルティア共和国も同様に国連査察団を受け入れて頂きたい』
国連査察団?! 僕らの行動を国連の人たちが見にくるのかな。
『そして、全世界の皆さんに考えてもらいたい。巨大生物であるパウンド君は、核攻撃を受けてもなお、戦闘になることを望んではいないのだ。これ以上、パウンド君を中心に緊張状態を継続することは無意味である。そうは思わないだろうか。巨大生物と人類、ましてや人類同士で殺し合う意味はない。アルティア共和国、ソーヴォイツ連邦、両国ともに艦隊の引き上げという英断を希望する』
おお、さすがは巨大生物を応援する党を名乗るだけのことはある。僕らが言いたいこと以上に、しっかりと代弁してくれた。
僕らは『グルグガガアアン!』『キュルルルゥゥゥン!』しか言っていないというのに。
僕らは周囲を見渡す。今のところ周囲にいる艦隊に動きはないが、どうなるのだろうか。
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