第92話 新技お披露目?
僕らはモフモフ島へ再上陸した。モフモフ島の周囲は、アルティア共和国の艦隊に取り囲まれている。
上空には、派遣されてきた国連機と思われるヘリコプターまで僕らの様子を伺っている。
注目してもらえて、ちょうど良いのだが、緊張してきた。
《凄く見られている気がします》
---------------やっぱりニノもそう思うよね。緊張するね。
僕らは渾身の『グルグガガアアン!』(やめなさい)を2連発。そこから余悠然と泳いで、余裕綽々にモフモフ島へ上陸した。そんな僕らの行動に各国の興味は集まっていた。
アルティア共和国とソーヴォイツ連邦は、ともに戦闘を開始せず、僕らの動向を注視している。
先ほどまでは、僕らの行動を無視してでもソーヴォイツ連邦やアルティア共和国の思惑通りにことが進みそう状況だった。しかし、その後の核ミサイル、それに対する僕らの行動により、風向きが少し変わった。
僕らはモフモフ島の小さな山に登って、四方を見渡す。どこまでも続く広い海。まずはソーヴォイツ連邦のある北方を向く。
僕らは海の彼方を見ながら、準備していた新技を繰り出した。
『キュルルルゥゥゥン!』(ごめんなさい)
これが僕らの新技である新しい挨拶だ。知らない島に勝手に上陸してしまったことを謝ろうかと思って用意していた。
ノックス中尉やファイン少尉などアルティア共和国の防衛軍に対して、ツノをチカチカさせるだけのモールス信号より謝っている感じが出るかなと思って練習しておいた。
僕らは続けて、頭をペコリと下げる。
正直なところ、巨大生物が唐突に『キュルルルゥゥゥン!』と言っても意味が分からないだろうと思う。しかし、頭を下げるアクション付きなら、謝っている雰囲気が出るのではないだろうか。
もっともお辞儀をする文化があるかも知らないし、ペコペコと頭を下げるのは良くないかもしれないが、まあ僕らは人間ではなく巨大生物。巨大生物がやることなので、ここは雰囲気重視だ。
僕らは知らなかったとはいえ、潜水艦を沈めてしまっていたようなので、まずは丁寧にソーヴォイツ連邦へ謝罪する。おおよそは巨大セイウチが体当たりしてきたせいな気はするが、巨大生物代表として謝っておく。
北へ向けて謝った後は、西に向けてだ。僕らはアルティア共和国のある西の方角へ身体を向ける。
アルティア共和国に向けて丁寧に謝罪をする。
『キュルルルゥゥゥン!』(ごめんなさい)
再び頭をペコリと下げる。
アルティア共和国にもご迷惑をお掛けした。おおよそはソーヴォイツ連邦軍が核ミサイルを発射したせいな気はするが、メカパウンド3番機が消滅してしまったし。
---------------せっかくだから南と東もやっておこうか。
《はい。たくさん練習しましたしね》
なんとなく間が持たないので、南と東にも挨拶しておくことにした。
僕らは南を向いて。
『キュルルルゥゥゥン!』(ごめんなさい)
併せて頭をペコリと下げる。
今度は東を向いて。
『キュルルルゥゥゥン!』(ごめんなさい)
併せて頭をペコリと下げる。
僕らは四方へペコリと頭を下げて謝罪をした。なんとなく全世界へ向けて謝った感じが出たと思うが、ソーヴォイツ連邦やアルティア共和国の反応はどうだろうか。
---------------どうだろうね。
《反応がないですね》
---------------意味不明で、とまどっているのかもね。
やはり巨大生物が唐突に頭をペコリと下げて、謎の鳴き声を発しただけでは、何も伝わることはないのだろうか。
ファイン少尉やノックス中尉、メカパウンドを作ったとかいう変な博士あたりなら分かってくれると思うのだけれど。
僕らの行動によりモフモフ島の周辺は、異様な空気に包まれた。
アルティア共和国艦隊とソーヴォイツ連邦艦隊ともに臨戦態勢を保持したまま、状況が膠着している。
ソーヴォイツ連邦によるパウンドへの攻撃が再開されるのか、それとも超大国間での戦争が始まるのか、何が起きても不思議ではない緊迫感が漂っていた。
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