第90話 反撃開始?

 メカパウンド3番機は、向かってくる核ミサイルにレールガンを発射した。メカパウンド3番機の正確無比な照準を誇るレールガンが、核ミサイルの側部に命中する。


 続けてメカパウンド3番機の特殊装備である巨大ブースターが火を噴き、メカパウンド3番機が飛翔した。

 飛翔したメカパウンド3番機は、レールガンにより減速した核ミサイルをキャッチし、核ミサイルを抱えたまま海へと消えた。


 ---------------メカパウンドが!


 メカパウンドが海中へ消えた数秒後、海中で大爆発が起きた。海面が白く盛り上がり、凄まじい水飛沫が拡散する。

 核ミサイルを抱えて海中に沈んだメカパウンド3番機は、そのまま戻っては来なかった。


《私たちは、あの機械メカに助けてもらったのでしょうか》


 ---------------そうだね。メカパウンドに助けてもらったね。


 メカパウンド3番機は自国の艦隊を守っただけかもしれないが、結果的に僕らやモフモフたちも守ってくれた。

 メカパウンド3番機の犠牲により、ひとまず大惨事は防がれた。


 しかし、ソーヴォイツ連邦が核ミサイルを発射したという事実により、アルティア共和国艦隊は陣形を整えて、ソーヴォイツ連邦艦隊へ向けての攻撃態勢へ移行する。


 アルティア共和国艦隊が攻撃態勢を取るということは、先ほどの核ミサイルはソーヴォイツ連邦が発射したものと思って良いだろう。

 アルティア共和国が攻撃態勢を取るのは当然だ。核ミサイルを発射するとは酷すぎる。僕らとしても、これはもう許せない。


 ソーヴォイツ連邦の艦隊もアルティア共和国に対抗するように布陣する。今にも全面戦争を始めそうな両艦隊の動きを、僕らはこのまま見過ごせない。

 こうなったら仕方がない。アルティア共和国より先に、核ミサイルを発射したソーヴォイツ連邦へまずは僕らから一発お見舞いしよう。


 僕らは全力でソーヴォイツ連邦の艦隊へ向かって泳いで行くことにした。僕らは海中に隠れずに堂々と海面スレスレを泳いでいく。

 僕らの泳ぐ姿は、アルティア共和国艦隊とソーヴォイツ連邦艦隊から丸見えだ。


 ソーヴォイツ連邦艦隊は、核ミサイルの報復に来た僕らを当然のように攻撃してくる。

 全く人の話を聞こうともしない人たちだ。もっとも僕らは人ではなく巨大生物なんだけれども。好き勝手に攻撃してきたのだから、覚悟は出来ていることだろう。軍艦とは撃沈されることを想定した艦船だ。


 僕らはソーヴォイツ連邦艦隊へ接近し、その中心にいる巨大な空母を発見した。


 ---------------あの大きな空母を標的にしよう。


《はい。分かりました》


 僕らは偉い人が乗っていそうな空母を選んで近づいた。僕らのすぐ目の前には、ソーヴォイツ連邦艦隊の巨大な空母。僕らは海面から顔を出して、巨大な空母を睨みつける。


 ---------------ニノ、全力でいくよ!


《はい! いきましょう!》


 僕らの全力を喰らうがいい。


『グウゥルルグゥガガアアアアァァァァァァンンンッッッン!!!!!』(本当にやめなさい! 怒りますよ!)


 僕らは全力で雄叫びをあげた。あまりの大きさに空気が振動している。さすがは巨大生物の渾身の雄叫びだ。

 雄叫びをあげた僕ら自身ですら、少しビックリする程の大きさだ。


 どうだろう。効果はあるだろうか。

 いつもは『遺憾の意』だけだったが、今回は『甚だ遺憾である』だ。僕らの繰り出すことの出来る中では、最上級の抗議のつもりだ。


 ソーヴォイツ連邦が、『ゴガオオオン!』など僕らの挨拶シリーズを知っているのか、いささか不安ではあるが、わりと世界的に有名と聞いたことがあるので知っていて欲しい。


 空母との距離が近すぎて攻撃オプションがないのかもしれないが、ソーヴォイツ連邦艦隊からの反撃はない。反撃がないどころかソーヴォイツ連邦の大艦隊が凍りついたように全く動かない。


 僕らは周囲の艦船をゆっくりと見渡した後、悠然と身体を反転させる。そして海上へ顔を出したまま、堂々と泳いでモフモフ島へ戻ることにした。

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