第84話 閣僚級会談?
ジャピア王国から少し南の海域。たくさんの熱水噴出孔から温水が噴き出ている。その周辺は温水を求めて様々な生物が集まり、賑わっている。僕らもご多分にもれず、気持ちの良い温泉として利用していた。
---------------この場所を温泉付き別荘にして正解だね。
《はい。温泉とタラバガニは最高です》
僕らは何とか北極圏を脱出し、ジャピア王国近海の温泉付き別荘へ戻ってきていた。
凍っている時は感覚もなく、真っ暗い海底で視界も悪く怪我の具合がよく分からなかった。なので、僕らは明るい浅瀬で怪我の具合をキチンと確認してみた。
あらためて確認してみると、思った以上に身体のあちこちが削れている。よく死なないものだと、自分の身体ながら感心するほどだ。
---------------それにしても思った以上に身体中がボロボロだね。
《はい。島で凍っている時は、よく分かりませんでしたね》
僕らは湯治気分で1週間ほど温泉付き別荘で傷を癒すことにした。じゃんじゃん食べて、温泉に浸かる。しかし、これだけの怪我だ。どの程度まで治るのか心配だけど、出来るだけ早く治って欲しい。
ついでに知らない国へ上陸してどのぐらい怒られるかも心配だけど、時間が経つことにより、忘れてくれないかなと期待していた。
◇
その頃、パウンドの北極圏での行動は、ソーヴォイツ連邦とアルティア共和国という2つの超大国の間で大きな問題となっていた。
ソーヴォイツ連邦所属の潜水艦が大破したあと、ソーヴォイツ連邦とアルティア共和国の両国は、すぐに事務レベルの会談を行った。そして、その問題の大きさから、両国は閣僚級の会談をセットした。
閣僚級会談の席で、ソーヴォイツ連邦閣僚が主張する。
「我が国の潜水艦は、巨大生物パウンドからの攻撃により大破1、小破2という損害を受けた。そして我が国は、過去の実績からパウンドを貴国の防衛軍の一員として認識している。貴国に謝罪と賠償を要求する」
ソーヴォイツ連邦は、パウンドをアルティア共和国の手先と決めつけ、謝罪と賠償を要求。それに対してアルティア共和国の閣僚は、パウンドが自国の一員ではないと真っ向から否定する。
しかし当然、ソーヴォイツ連邦閣僚は、自国の主張を取り下げる気など全くない。
「アルティア共和国は、過去にパウンドと共闘し、敵を撃退している。アルティア共和国及びジャピア王国において、何度かその事実は確認されている。今回は我が国を敵と見なして、攻撃してきたという疑念を持たざるを得ない」
アルティア共和国は、その主張に対して反論する。
「パウンドに接近したソーヴォイツ連邦所属の潜水艦に非があるのではないか」
アルティア共和国は、ソーヴォイツ連邦の自業自得だと主張する。
ソーヴォイツ連邦とアルティア共和国の閣僚級会談は、数時間におよんだ。しかし、会談は平行線を辿り、解決策は見出せずにいた。
会談が完全に物別れに終わりそうな気配になった頃、ソーヴォイツ連邦は最後に一つの解決策を提案する。
「我が国としては、我が国と貴国、両国が協力してパウンドを抹殺することを提案する。強大な力を持つパウンドは貴国にとっても邪魔なのではないか。元凶であるパウンドを人類の敵であるとすれば、この問題は解決する。この提案を受けるのであれば、我が国の潜水艦へ生じた損害について、不問とする用意がある」
会談の最後にソーヴォイツ連邦は、本命の解決策を提示してきた。
アルティア共和国としても検討の余地がある解決策と受け止めたが、この場での合意は難しいとの判断。閣僚級会談は終了した。
この問題の解決は、両国の大統領へ委ねられることになった。
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