第83話 戦いのあと?
パウンドとの緒戦が終わり、近海に潜む大型潜水艦からメカレッドソックスの指揮をとっていたサルマーン海軍大将は満足していた。
ツルツルと氷上を滑って転ぶ滑稽なパウンドの姿を見て、大型潜水艦の艦内は緊迫した空気から一転して笑いに包まれていた。
「ハハハハッ、サルマーン海軍大将、ヤツは本当に賢い巨大生物なんでしょうか? 自ら不利な状況を作っていましたが」
大型潜水艦の艦長が笑いを堪えられずに、サルマーン海軍大将へ質問する。
「そうだな。研究者によると賢いとのことだったが、転んでいる姿を見ると、とてもそうは見えなかったな」
パウンドのあまりに無様な姿を見てしまい、アレが本当に知能がある巨大生物なのか不思議に思っていた。
「はい。ただヤツは尻尾から煙を出していましたが、まさかダイヤモンドダスト砲を理解しての対応なのでしょうか。それともただの苦し紛れなのでしょうか」
「そこが分からないところだ。氷で滑っているバカなのに、攻撃への防衛だけはそれなりにしていた。ヤツについては、まだまだ情報不足なので、油断は出来ない相手ではあるな」
サルマーン海軍大将は一度バカな姿を見ただけで、パウンドに対しての警戒を解くことはなかった。
「はい。我が方からの攻撃に怒るわけでも怯えるわけでもなく、不思議な相手ではありました」
艦長はパウンドを掴みどころのない相手だと認識した。
「うむ、そうだな、まあとにかくだ。ヤツとの初コンタクトで、ダイヤモンドダスト砲の効果を確認でき、様々なデータが取れた。実際に対戦した成果は大きい。皆、よくやってくれた」
サルマーン海軍大将はパウンドとの緒戦で十分な成果を得たと判断した。サルマーン海軍大将は話を続ける。
「輸送班がメカレッドソックスを回収後、本艦も直ちに帰投してくれ。その間、私は今回の成果をまとめている。あとは艦長、基地まで頼むぞ」
「はい。速やかに帰投します。お任せ下さい」
ソーヴォイツ連邦軍総司令部は、この結果を踏まえてパウンド抹殺計画をさらに進めるべく、次の作戦のへ準備を開始した。
◇
僕らはメカレッドソックスの攻撃でボロボロにされたため、急いで北極圏を抜けようと南に向かって泳いでいた。
冷却レーザー光線で凍らされてからの音速ミサイル攻撃は辛かった。その攻撃を受け続けた最大の原因はツルツル滑る氷の大地。気軽にそこへ行った僕らの自業自得だけれども。
---------------今回は酷い目にあったね。全身ボロボロだよ。
《はい。何だかヒリヒリと痛みが出てきましたね》
---------------滑って遊んでいる場合じゃなかったね。
《大変でしたね。変な
アルティア共和国の西海岸というリゾート地でくつろぎ過ぎて、旅行気分になり過ぎていたようだ。
すっかり油断して、アルティア共和国かジャピア王国のどちらかだと思い込んで、知らない無人島に上陸してしまった。
---------------あの無人島、どうやらアルティア共和国でもジャピア王国でもない他の国の島だったみたいだね。
《北東にはソーヴォイツ連邦という国があると言っていました》
---------------ソーヴォイツ連邦か。ファイン少尉に怒られそうな気がするね。
《やっぱり怒られてしまいますか。怖いですね》
他の国に近づかないようにと言われていたのに、これは失敗だ。
とはいえ、僕らだって別にただの巨大生物だし、そのぐらい普通なのではないかと思う。巨大ヤドカリや巨大エビとか他の巨大生物だって普通に上陸することがあるし! などと子供のような言い訳を考えていた。
---------------傷だらけだし、ジャピア王国の別荘に寄っていこうか。
《はい。温泉でゆっくり休みたいです》
僕らはジャピア王国の南にある温泉付き別荘で休息することにした。
酷い目にあった北極圏からの脱出するまで、あとひと踏ん張りだ。
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