第82話 氷上での戦い?

 雪山の影から現れた4本脚の機械メカが、僕らを射程圏内に収めている。

 4本脚の機械メカの肩には、左右それぞれ3つずつ計6つの筒型の装置が装着されていた。

 その6つの筒型の装置が、何やらキラキラと輝き出した。


 ---------------最初のミサイルよりヤバいのがきそうだよ。逃げないとマズい!


《でも滑って動けないですよ》


 色々と状況がダメ過ぎて、大ピンチだ。

 僕らはひとまず立ち上がることを諦めて、うつ伏せのまま何が来るのか見極めようと4本脚の機械メカを注視する。

 何が来るのか分からないが、僕らなら一撃で死ぬことはないだろう。


 4本脚の機械メカに装備された6つの筒型の装置が、僕らに向かってレーザー光線を照射してきた。

 6本のレーザー光線が、僕らの身体の一点へ集中する。


 集中してレーザー光線を受けた部分が、異常に冷たい!! というか冷たいを通り越して痛い! とても冷たくて痛い!


 ---------------えっ、冷たい?! 痛い?!


《えっ、何ですか?! これは?!》


 レーザー光線の一点集中を受けた箇所が凍ってしまった。

 冷却するレーザー光線?! 熱い攻撃よりも冷たい攻撃に弱い僕らにとっては、非常に厳しい攻撃だ。


 そして間髪入れずに、4本脚の機械メカは音速ミサイルを放ってきた。凍った箇所へ命中する。


 ビキッ! バリバリッバキンッ!


 これは?! 凍っていた部分が砕け散って、エグれてしまった。

 これはヤバい! 本格的にヤバい!


《どうしましょう?!》


 どうしましょう? とニノに言われても困ってしまう。滑って立ち上がれないのではどうしようもない。

 動揺しながらも何か手はないかと考える。僕はメカパウンドを思い出し、一つ良いことを思いついた。


 ---------------煙幕! 煙幕を出してみよう。


《はい、煙ですね》


 僕らは対メカパウンド戦の時に習得した煙幕を撒き散らした。周囲が白煙に包まれる。


 ---------------ついでに尻尾で周囲の雪を撒き散らそう。


《はい。大忙しですね》


 煙や雪でレーザー光線を阻めば、レーザー光線の威力が弱まり、少しは冷却性能が落ちるのではないだろうか。さらに姿が見えなければ一点集中も難しくなるだろう。まあ熱探知とかされそうだけども。


 とにかく僕らは手を掛けて立ち上がることが出来そうな岩場を目指す。尻尾から煙幕を出し続け、モクモクとした白煙の中を少しずつ這って行く。


 やはり何らかの手段により居場所を探知されているようで、2発目の冷却レーザー光線を受けてしまう。

 煙と雪のおかげか先ほどよりは、威力がない。


 --------------岩場まであと少しだよ!


《頑張りましょう》


 岩場へ到着した僕らは、凍っていない岩へ手を掛けて立ち上がる。


 ---------------よし、このまま海まで慎重に歩いていくよ。


《はい》


 僕らはゆっくりと慎重に海に向けて歩き始める。ここで戦っても勝ち目はない。

 尻尾からの煙幕で身を隠しながら歩けば、海まで逃げ切れるだろうと思ったのだが、またしても甘かった。


 ズガアアアアアアン!


 僕らの足元に音速ミサイルが着弾した。僕らはその衝撃により滑って転んだ。


 ---------------またか! しつこい!


《酷い人たちですね》


 転んだところに冷却レーザー光線が襲ってくる。

 冷たくて痛い! 続けざま凍った部分を目掛けて、音速ミサイルが飛んでくる。

 音速ミサイルが着弾し、身体の凍っていた部分が砕けてしまう。皮膚の感覚がなくなって痛みもない。ずいぶんと身体が削れてしまったが、大丈夫なのだろうか。


 ---------------これ、治るよね?


《時間はかかると思いますけど、たぶん治ると思いますよ》


 立ち上がれないので、僕らは這ったまま海へと向かう。その間も冷却レーザー光線、音速ミサイルが交互に僕らを襲ってくる。全くしつこい攻撃だ。


 真っ平でツルツル滑る凍りついた一帯を抜け、僕らはやっと立ち上がる。立ち上がった僕らは4本脚の機械メカを正面に見据える。


 4本脚の機械メカは、近距離からの方が冷却レーザー光線の威力が増すためなのか、かなり近くまで接近していた。僕らからの攻撃も、尻尾の炎を細かく噴射する火球ならば届きそうなほど近くにいる。


 4本脚の機械メカに人が乗っている感じはしないので、少しだけ反撃してみる。


 ---------------ニノ、軽く反撃してみるよ。


《はい。軽くですね》


 僕らは牽制程度に火球を放ってみる。4本脚の機械メカは、その火球に反応して、僕らから過剰に離れていった。


 ---------------えっ、警戒し過ぎじゃない?


《凄く遠くまで行きましたね》


 冷却レーザー光線も届かなそうなので、僕らはそろそろと海へ向かった。時々、振り向いて4本脚の機械メカが、近づいていないかを確かめる。全く楽しくはないが『だるまさんが転んだ』をやっているようだ。


 何とか海へ到達することができたが、凍ってしまった部分の感覚はなく、どれだけ酷い状況なのかもよく分からない。

 冷却レーザー光線と音速ミサイルの連続攻撃で、僕らは全身ボロボロだ。

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