第80話 氷上で?
パウンドからの攻撃により、1隻の潜水艦に大損害が発生したとの報告が、ソーヴォイツ連邦軍総司令部へ入る。
イバルコフ連邦軍総司令官とサルマーン海軍大将は、潜水艦への損害が発生したことを喜んでいた。
「これでパウンドへの総攻撃、さらには背後にいるアルティア共和国を糾弾する大義名分が出来たな」
イバルコフ連邦軍総司令官が、サルマーン海軍大将へ話しかける。
「はい。1隻が大破、航行不能。怪我人も発生しました。その他にも2隻が小破。私の理想通りです」
サルマーン海軍大将が満足そうに答える。
「猛牛と言われるサルマーン海軍大将だが、ずいぶんと優しいな。私はあの場にいた全艦が沈没、名誉の戦死をしてもらっても良かったのだが」
そう言ってイバルコフ連邦軍総司令官は、ニヤリと笑った。
最前線へ出向き兵士を労わるサルマーン海軍大将に比べ、過剰な自国愛を持つイバルコフ連邦軍総司令官は冷酷だった。サルマーン海軍大将ですら、狂気を感じるほどだ。
イバルコフ連邦軍総司令官は話を続ける。
「これで次の段階へ進めるな。サルマーン海軍大将、ゼールゲイン博士から要望がありメカレッドソックスを一度、実戦で使ってもらいたい。出来るか?」
「はい。兵器開発省からも聞いております。今のところパウンドは往路と同じルートを通っておりますので、我が国の無人島へ上陸する可能性が高いと予測しております。そこでメカレッドソックスを投入する作戦を立案します。また上陸しなかった場合には、海上での戦闘がどこまで可能かを検討しております」
「またあの島へ……ヤツがまたしても我が国の領土へ無断で上陸するのを許すしかないのか。本来ならその場で殺してやりたいところだが、条件を整えるまでの辛抱だ。私の方はアルティア共和国を糾弾する手筈を整えねばならない。核戦力も用意して、早くあの不気味なパウンドへぶち込んでやりたいものだ」
ソーヴォイツ連邦軍総司令部は、自軍の潜水艦がパウンドの攻撃により大破したことを口実に、抹殺計画を進めていく。
この一件をソーヴォイツ連邦が利用することにより、世界ではパウンドをはじめとした巨大生物を排除すべきという反巨大生物運動がより加速するのだった。
◇
僕らは巨大セイウチと別れて、のんびりと泳いでいた。
北極圏に来てからはずっと海中なので、たまには陸上に出たいと思う。
---------------行きにも寄った大きな無人島に寄って行こうか。
《はい。広々として良いところでしたね》
僕らは、行きに上陸した大きな無人島へ向けて進路をとった。しばらく泳ぎ、何事もなく無人島へ到着。誰もいないことを確認して上陸する。
《誰もいなくて良かったですね》
---------------この島は吹雪だし地面も凍っているし、人間が住むには辛いよね。
《そうですね。今日は特に真っ白ですね》
前回の上陸時は秋のためマシだったが、冬になって寒さが増し、雪と氷に覆われた白い大地になっていた。
僕らは滑らないようにゆっくり歩いて、島の中央へ進んで行く。
---------------危ないっ、ツルツルするね。
《転びそうになりますね》
僕らの足裏は大した凹凸もなく、滑る氷上を歩くようには出来ていない。なので、ゆっくりと気をつけて歩いても転びそうで、とても危ない。さっきから転びそうで危ないのだが、ニノを見ると楽しそうな表情だ。
《氷の上を滑って歩くのは、楽しいですね》
ニノは氷上を楽しんでいた。
---------------あれ、ニノは楽しかったんだ。じゃあ転んでも良いから滑って遊ぼう。
僕らは童心に帰って、氷の上を滑ってみた。
ドッシイイイインンン!!
ボッフワワァァァァァ!!
僕らはすぐに転んで雪まみれになる。スケートの才能は無いようだ。
《ふふ、ダメでしたね》
---------------ははっ、そうだね。
すぐに転んだが、ニノが楽しそうなのでOKだ。僕も楽しい。
僕らは立ち上がろうとするのだが。
ドッシイイイインンン!!
滑って転んで、立ち上がることが出来ない。
---------------あら、滑って立ち上がれないね。
《これは困りましたね》
今、僕らがいる一帯は、真っ平で一面凍りついている。ここでは立ち上がれそうにない。
立ち上がるには、前方に見える雪が積もった岩場へ行くしか無さそうだ。
---------------あっちに見える凍ってなさそうな岩場へ行こう。
《はい。そうしましょう》
僕らはモゾモゾと手足の爪を引っ掛けて、岩が見え隠れする雪山へ向けて前進を始める。
すると、その雪山の影から、キラキラと輝く巨大な物体が姿を現した。
ん?! 四本脚の
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