第78話 何かにぶつかった?

 僕らはエメラルドグリーンの海で、ゴロゴロしていた。

 西海岸へ来た当初は物珍しさもあってか、僕らを見物に来る人々もいたのだが、今ではほとんどいなくなった。すっかり飽きられてしまったようだ。馴染んでいると言っても良いだろう。

 もっとも僕らとしても浅瀬ばかりで飽きてきた。


 ---------------大緑洋たいりょくようも堪能したし、一旦、棲家へ帰ろうか。


《はい、そうですね。モフモフにも会いたいです》


 大緑洋にも無人島はあったが、モフモフはいなかった。その上、大緑洋は深海が少なく、それに比例して巨大生物も少ないため、食糧を確保するのも大変だ。

 結局、光る巨大な卵がありそうな雰囲気もないため、僕らは撤収することにした。


 ---------------帰りも北極圏を通って行こうか。


《はい。そうしましょう。またセイウチに会いたいです》


 ---------------あのデカいやつね。じゃあ同じルートで帰ることにしよう。


 僕らはアルティア共和国西海岸を離れて、北極圏へと向かうことにした。海面付近を泳いで行くと、上空に飛行機が旋回していた。誰だかは分からないが、挨拶をしておいた。


『ゴガオオオン!』(こんにちは)



 ◇



 北へ向かって泳いで行くと、次第に流氷が増えて寒くなってきた。


 ---------------冷えてきたし、海底を進もうか。


《はい。寒くなってきましたね。深いところへ潜りましょう》


 僕らは温度が一定の海底を進んで行く。

 ツノを光らせると、巨大タラバガニの群れを発見した。空腹気味だったので美味しくいただく。

 北極圏は寒くて嫌だけれど、食事は美味しい。


 僕らはのんびりと数日かけて北極圏を進んでいた。


《そろそろセイウチがいたところですよ》


 ---------------あ、ここら辺だっけ。向こうから見つけてくれるかなぁ。


《ツノを目一杯、光らせましょう》


 僕らは最大にツノを光らせてみた。暗い海の中でかなり目立つ。これなら近くに巨大セイウチがいれば、見つけて寄ってくるだろう。


 しばらく周囲を見渡しながら進んでいると、遠方から巨大が影が迫ってきた。


《来ましたよ!》


 --------------あのデカい物体は!


 あの巨大な影は巨大セイウチに違いない。凄い勢いでぐんぐんと近寄ってくる。


 ドッガアアアァァァ!!


 そのままの勢いで激突してきた。


 --------------いやいや、戯れ合うレベルじゃない!


《セイウチ、興奮してますよ!》


 興奮した巨大セイウチが、全力で僕らを追いかけてくる。

 久しぶりの再会で嬉しいのだろうけど、パワフル過ぎる。僕らは後方にぶっ飛ばされる。その影響で海底の岩が周囲に飛び散る。


 ドガッ、ガギンッ! ガガガガガガッ!


 ---------------ん? 変な音? 飛び散った岩が何かにぶつかった?


《変な音がしたような》


 ---------------ま、いいか。気のせいでしょ。それどころじゃないし。


 僕らは巨大セイウチをなだめるのに精一杯。

 変な音を気にする余裕は全くなかった。


 僕らは巨大セイウチを力づくで抑えつける。

 しばらく抑えつけていると、巨大セイウチは落ち着いて、ブサ可愛い顔を擦り寄せてきた。


 ---------------ふぅ、巨大セイウチは力強いな。戦ってるわけではないんだけど。


《はい、疲れましたね。でも楽しかったです》


 ニノが満足そうにしている。全力でスポーツでもした後のように爽やかだ。


 ---------------すっかり疲れたね。ここで少し休もうか。


《はい。そうしましょう》


 僕らはすっかり疲れてしまったので、大きな岩場の影で休むことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る