第76話 水中無酸素洞窟?

 僕らはアルティア共和国の西海岸にある観光地で寛いでいた。

 寛ぐのは良いのだが、このままでは何しに来たのか分からないので、光る巨大な卵を探すことにする。


 ---------------大緑洋たいりょくようの深海に行ってみようか。


《はい。行ってみましょう》


 大緑洋は、エメラルドグリーンに輝く浅い海域が多いが、暗闇のような深海も当然ある。

 僕らは、暗い海の底を光る巨大な卵を探して歩いていたところ、不思議な洞窟を発見した。

 縦横に数百メートルの巨大な入り口で、内部はさらに広く奥深くまで広々とした空間が続いている。洞窟と言っていいのか分からないほど、巨大な空間だ。その洞窟の中に入ると何故だか分からないが、水中の酸素濃度が薄い。水が澱んでいるのか、それとも洞窟内にいる生物が多すぎるのか。


 ---------------何だか息苦しいね。


《そうですね。呼吸が大変ですね》


 変わった洞窟だし、光る巨大な卵があるかもしれないと思って、洞窟の奥へ進んでみる。息苦しさを感じながら歩いていると、突然、海底が盛り上がる。


 グワァ、ズガガアン!


 ---------------何だ?! 海底が?!


《ヤドカリを踏んでしまいましたね》


 海底の岩のように見えたが、そうではなかった。踏み付けたものは、窪みに潜んでいた巨大ヤドカリの殻の部分だった。全然、気が付かなかった。

 踏みつけられた巨大ヤドカリが驚いて襲いかかってきた。


 以前の僕らなら巨大ヤドカリは難敵だったが、進化した僕らの敵ではないだろう。

 そう思ったのだが。


 ---------------ん?! このヤドカリ強くない?


《そうですね。凄い力です》


 何故か、もの凄く力強さを感じる。


《それに力を入れると、息苦しくて辛いですね》


 ---------------そうだね。


 これは酸素の薄い場所で心肺機能を鍛える高地トレーニング的なものだろうか。こちらは薄い酸素ですっかり弱っているが、相手は元気いっぱいだ。

 僕らは、なんとか力を振り絞って、巨大ヤドカリを振り切った。しかし、巨大ヤドカリを振り切り移動した先には巨大ダコがいて、僕らは激突してしまう。


 ---------------今度は大ダコ!


《タコも普通のよりパワフルですよ》


 どうやら奥に行くに従って酸素が薄くなり、中にいる巨大生物が強くなっているようだ。

 一番奥はどうなっているのだろう。もしかしたら無酸素状態で、とんでもない巨大生物が生息していても不思議ではない。

 戦いたくないので引き返そうとも思ったが、こういう変な場所にこそ、光る巨大な卵があるかもしれない。そう思って進んでみる。


 だんだんと空間が狭まり、酸素もより薄くなっていく。それにもかかわらず、普通に巨大生物が生息いるのだが、なぜ好き好んでこんなところにいるのだろう。洞窟にいる巨大生物が一心不乱にトレーニングしているように思えてきた。


 いよいよ最深部へ到着する。ほとんど無酸素状態ではないだろうか。とても息苦しい。

 そんな無酸素状態の最深部にも関わらず、そこにはヤシガニ、イカ、チョウチンアンコウのような巨大生物がいた。

 こんな苦しいところで修行でもしているのだろうか。3匹から謎のオーラを感じる。

 ヤシガニのような巨大生物は子供なのだろうか。まだ小さい。まだ小さいのに目つきが悪く、普通に怖い。

 イカのような巨大生物は、僕らがいつ食べてるスルメイカのようなスリムな形状はなく胴体が丸々と太っている。あと身体がぼんやりと白く光っている。

 チョウチンアンコウのような巨大生物はチラチラと光る頭部の突起物がとても可愛い。触りたくなる。でもその後ろに見える顔は口が大きく、とても怖い。本来なら暗闇で見えないのだろうが、隣にいる光るイカのせいで、姿が丸見えだ。良いのだろうか。さらにその姿をよく見ると手足が生えている。これはキモい。


 3匹を見てニノは、どれも美味しそうと言っている。確かにカニ、イカ、アンコウなので美味しいのかもしれないが、見た目的にはとても食べる気になれない。そもそもこの息苦しい状況では、3匹に勝てる気がしない。


 ---------------息苦しいし卵もないし帰ろうか。


《そうですね。美味しそうですけど》


 僕らは酸素の薄い息苦しい不思議な洞窟をでることにした。結局、光る巨大な卵は見つからず、怖そうな巨大生物がいただけだった。少し期待したけど残念だ。そろそろ次の海域へ移動かな。

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