第75話 綺麗な海で?
僕らは寒い北極圏を抜けて、初めての海である
大緑洋は名前の通り、エメラルドグリーンの綺麗な海だ。どこを見ても綺麗なエメラルドグリーンの海が広がっている。そんな綺麗な海が広がるアルティア共和国の西海岸には人気の観光地が多い。
---------------綺麗な海だね。
《そうですね》
---------------綺麗な海を背景にして、ニノが映えるよ。
《ありがとうございます。まあ第一の脳〈あるじ〉の想像ですけど》
エメラルドグリーンの綺麗な海に、銀髪の美少女がよく映える。とても絵になる。
僕とニノはキラキラと輝くエメラルドグリーンの海をじーっと見つめていた。
そして、絶望していた。
---------------浅いね。
《そうですね》
そう、エメラルドグリーンの海ということは、浅いのだ。
白い砂に浅い海だと光が吸収されずに青ではなく緑に見える、確かそんな感じの理由だったと思う。
エメラルドグリーンの海は、とにかく浅い。
---------------こんな浅瀬に巨大な卵があれば、人間がすぐ見つけるだろうから、ここには絶対にないね。
《そうですね……》
大緑洋は、エメラルドグリーンに輝く浅い海域が多いようだ。
深海もあるにはあるのだが、割合的にずいぶん少ない。
全く大緑洋にはガッカリだ。しかし、巨大な卵探しとしては期待外れだが、観光と思えば綺麗な海で素晴らしい。
---------------せっかく綺麗な海だし歩こうか。
《はい。卵が無さそうなのは残念ですけど、気持ちの良い海ですね》
僕らはアルティア共和国の西海岸を、優雅に歩くことにした。
遠くに見えるビーチでは、グラマラスな水着美女たちが僕らに向けて手を振っている。
初めて来た西海岸だが、僕らはなかなか人気があるようだ。
---------------おお! 水着美女たちが手を振ってる! 挨拶しようか!
《何か急にテンションが上がりましたね》
--------------えっ、ああ、そうかな。
気のせいか、ニノがジト目で僕を見ている
開放感の溢れるビーチのせいで油断し過ぎた。ついつい浜辺の水着美女たちをガン見していた。
当然だけど目線は完全にニノにバレるよね。何しろ同じ身体なんだから。
『ゴガオオオン……』(こんにちは)
僕とニノは息が合わず、水着美女に向けて今ひとつキレのない挨拶をした。
《第一の脳〈あるじ〉は水着が好きなんですか》
今日のニノはしつこい。どうしたんだ。
---------------まあ好きだけど。
僕は歯切れの悪い返事をした。
《それなら最初に私を想像する時に水着すれば良かったじゃないですか》
---------------確かに!
ニノが成長して賢くなっている! 鋭いことを言ってきた。少し怖いぐらいだ。
だけど転生して最初にニノを想像したとき、そんな余裕は全然なかった。むしろ、よく銀髪の美少女を想像したと、その時の自分を褒めてあげたい。
まあ別に今だって僕の想像なのだから、ニノを水着にすることは出来る気はする。
しかし、ニノのことを立派な別人格だと思っているので、そんな勝手なことを出来るわけがない。
そこで。
---------------綺麗な海だし、ニノも水着になってみたい?
《いつも海だし、別になりたくないです》
---------------そっか。そうだよね。
同意を取ればいいかなと思ったが、ダメだった。
『いつも海』全くその通りだ。そう言われてしまうと、これ以上、何も言えない。
しょうもない話をしながら僕らは何の緊迫感もなくアルティア共和国の西海岸、エメラルドグリーンの綺麗な海を散歩した。
もちろんアルティア共和国は僕らを発見しているが、攻撃してくる素振りは全くない。とても平和だ。
◇
その頃、ソーヴォイツ連邦総司令部では。
「ジャピア王国方面の警戒を強化した途端に姿を見せなくなっただと?! どういうことだ?!」
「まさか我が国の情報が漏れているのか?!」
「こんなことが続けば、我々総司令部は大統領閣下に粛清されてしまうぞ」
「すぐにイバルコフ連邦軍総司令官、サルマーン海軍大将へ報告だ!」
パウンドが何を考えているのか理解できないソーヴォイツ連邦軍総司令部の面々は、混乱を極めていた。
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