第73話 北の海域へ?

 ファイン少尉から世界の地理を教えてもらい、ニノが覚えた。僕自身は、ざっくりとしか覚えていない。


 ---------------どう? 世界の地理しっかり覚えてくれた?


 僕の記憶力は怪しいので、すっかりニノにお任せだ。


《はい、聞いた内容は覚えましたよ。安心して下さい》


 さすがは、脳の容量が大きいニノ様だ。頼りになる。

 別に僕の容量が少ないからといって、拗ねているわけではない。いや、少しぐらいは拗ねているかも。

 もっとも、こうやってニノにお任せしてばかりだから、第一の脳なのに容量が少なくなってしまうのだろう。


 世界中のどこから探すか、大いに迷う。

 ニノと相談した結果、まずは安心して移動のできるジャピア王国方面から北極圏を抜けて、大緑洋たいりょくようへ行くことにした。世界第2位という大きな海、僕らが住むいつもの海との違いはあるのか楽しみだ。


 大緑洋に到達したら、アルティア大陸の西側となるアルティア共和国の西海岸に行ってみたい。リゾート気分だ。



 ◇



 光る巨大な卵を探しながら、のんびりと北上する。ジャピア王国の南山島より北に行くのは初めてだ。ジャピア王国の本島にずいぶんと近づいてきた。


 僕らが巨大な卵を探しに北方へ行くという話を聞いたジャピア王国は、イベントを開催するのでトーキ湾に顔を出して欲しいと言ってきた。イベント自体は良いのだが『秋のパウンド祭り』という名称はどうなんだ? そう思いながら、僕らはトーキ湾の指定された場所へと向かう。


 ---------------船だらけで危ないね。


《はい。ぶつからないか緊張しますね》


 ぶつかって船を沈めてしまったりしたら大変だ。航行する船に気を付けながら慎重にトーキ湾の奥へと進んで行く。


 ---------------指定された場所は、この辺なのかな?


《この辺で良いと思います》


 僕らは指定された場所へ到着し、海面からちょこんと顔を出してみる。湾岸沿いから多くの人が僕らを見ている。


《たくさんの人が集まって、楽しそうですね》


 ---------------そうだね、とりあえず言われた通り挨拶しようか。


《はい。そうですね》


 湾岸沿いは人工物ばかりで僕らが上陸できる場所がないため、海面から顔を出して挨拶をする。


『ゴガォォォン!』(こんにちは)


 それを見て沿岸沿いの観衆は拍手喝采。

 僕らは挨拶に続き、海面から尻尾を出してフリフリした後、その場を去る。


 ---------------こんなんで良かったのかな。


《すぐ終わってしまいましたね》


 イベントに顔見せすると、報酬としてジャピア王国製SAKEミサイルを貰うことになっている。報酬がミサイルというのもどうかと思うが、弾頭に詰まったジャピア酒は美味かった。


 僕らは北の海域を回遊しながら光る巨大な卵を探した。たまにジャピア王国からイベント要請のあった場所へ行っては、顔見せをした。僕らはその度、ジャピア王国製SAKEミサイルを貰うのだった。


 ---------------イベントとSAKEミサイルのせいで、目的の光る巨大な卵探しを忘れそうになるよ。


《ダメですよ。しっかりして下さい》


 ニノにダメ出しをもらいながら、北の海域で光る巨大な卵を探し続ける。浅瀬の目立つ場所に光る巨大な卵があれば話題になるはずなので、基本は暗闇の深海を探すことにする。


《光っていれば目立ちそうですけど、見つからないですね》


 ---------------目立ったとしても海は広いからね。


 僕らはジャピア王国を越えて、さらに北の海域をウロウロと探索した。

 僕らが光る巨大な卵を探している北の海域。その海域の東側、北ラーシア大陸には、ソーヴォイツ連邦が存在する。

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