第72話 世界の地理?

 僕らはのんびり世界を旅しようと思ったのだが、思ったより世の中は世知辛かった。卵探しの件をファイン少尉に伝えたところ、色々な情報を教えてもらった。


 陸上での卵探しは無理だろうとは思っていたが、海だとしてもアルティア共和国とジャピア王国以外の国に近づくのは危ないだろう、とのことだった。まだまだ僕らを安心安全な巨大生物だと思っていない国の方が多いようだ。


 アルティア共和国より強い国はないようなので、僕らが負けることはないとは思うが、争いはしたくない。出来るだけ陸地には近づかないように気をつけよう。人間から攻撃されないように注意しながら移動するとか、のんびり旅をする感じではないが、正体不明の巨大生物なので仕方がない。


 それからファイン少尉に、この世界のおおよその地理を教えてもらった。


 僕らが今住んでいる海は『大青洋たいせいよう』と言って世界で一番大きい海らしい。大青洋の西側には、南北に長いアルティア大陸。反対に大青洋の東側には東西に長い北ラーシア大陸と南ラーシア大陸が対になるように存在している。

 今の僕らは、西にアルティア大陸、東に南北ラーシア大陸に挟まれた大青洋の真ん中より少し北西辺りに住んでいる。


 僕らの棲家から南方にあたる大青洋の南部海域には、火山島がたくさんある。そのたくさんの火山島の中には人間が住むには適さない島が多く、巨大生物が住み着いている島もある。以前、訪ねた翼竜型の巨大生物がいた島もその一つ。

 進化してからは一度も行っていない海域だ。


 大青洋の火山島海域を越えたずっと先には南極がある。

 氷の大地。南極大陸の周辺の海は『大白洋たいはくよう』と呼ばれて、とても寒いということだ。

 寒い海域ということだが、僕らは寒さに強いのだろうか。


 ---------------ねぇ、僕らって寒いところは大丈夫なのかな?


《行ったことがないので分かりませんが、大丈夫でしょう》


 ---------------そうだよね。寒さに弱いとは思えないよね。


 今まで暑さ寒さを感じたことは、ほとんどない。

 今まで本気で熱いと思ったのは、暗黒8本首の青白い火球ぐらいだ。たぶん僕らの身体は、一万度ぐらいだと熱いと感じるのではないだろうか。

 一万度……落ち着いてよく考えてみると、相当感覚が狂っている。この身体なら寒い方も大丈夫と思って良いだろう。


 僕らの棲家から北に向かうとジャピア王国。そのジャピア王国を越えてずっと北に行くと、北極がある。

 さらに北極を越えると『大緑洋たいりょくよう』という世界で2番目に大きい海に出る。僕らの住む大青洋の裏側ということになる。


 最も気になるのが『大黄洋たいおうよう』という海だ。

 北ラーシア大陸と南ラーシア大陸に挟まれた内海で、西側から続く細く長い海峡か、東側にある運河を通るしか到達する方法がないということだ。

 気になる理由は、到達が難しいというだけではない。その大黄洋にはデルゾン島というとても大きな島があり、その島には巨大生物しか住んでいないとのことだ。

 なぜ人間が住まないのかファイン少尉に尋ねてみたところ。


「デルタ級の中でも最強と言われる4本脚の巨大生物がいるんですよ。レッドソックスと呼称しているんですけど、その巨大生物が島を支配しているんです。デルゾン島は固有種が多くて、変わった巨大生物が多いんですよ」


 デルタ級最強とか怖すぎる。僕としては怖いので、近づきたくないと思ったのだが。


《変わった島みたいだし、行ってみたいですね》


 ニノの方は興味津々だ。


 ---------------いやいや、変な島だし最強とか怖いでしょ。


《あれ? そうですか》


 ---------------そもそも細くて長い海峡も運河も、近隣の国が通してくれないだろうから、行けないけどね。


《そう言ってましたね。残念です》


 北ラーシア大陸と南ラーシア大陸の国々が僕らを素通りさせることはない。ファイン少尉にそう言われたので、行きたくても行くことはできないのだ。もっとも僕は行きたくもないのだけれど。


 世界の地理はこんな感じらしいが、細かいことは気にしない。おおよそ知っていれば大丈夫だろう。

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