第71話 子供が欲しい?

 北ラーシア大陸を支配する超大国ソーヴォイツ連邦で、パウンド抹殺計画が始動した。

 遠く北の大地にて、未知の存在に対する恐怖心から芽生えた殺意が、パウンドへと向けられていた。



 ◇



 僕らは、毎日モフモフ島でのんびりしていた。そして、すっかり太っていた。それもそのはず、ジャピア王国の近海に作った別荘で、温泉に浸かりながら、巨大タラバガニを食べ過ぎたのだ。

 そんなぷっくりと太った僕らに対して、久しぶりにファイン少尉から、巨大生物を追い払う任務の依頼がきた。依頼がきたのはいいが、身体が重い。


 ---------------身体が重い。困ったね。


《はい。進化前に戻ったように重いです》


 ---------------温泉で食べ過ぎて、ダラダラし過ぎたね。


《美味しすぎて、調子に乗ってしまいましたね》


 食べすぎて動かないと、巨大生物でも太るようだ。知らなかった。

 とにかく、これはいけない。少しダイエットをしなくては。


 しかし、真面目にダイエットするのは面倒だし、時間がかかる。そこで、僕はあることを思いついた。


 ---------------炎を出すと体力を使うから、簡単にダイエットできるんじゃない?


《!! さすが第一の脳〈あるじ〉です! 良いかもしれません》


 ニノに絶賛された。


 ---------------よし、やってみよう。


 ボッゴゴオオオオオオオオ!!!

 ボオオオオオオオオオッッッ!!!


 僕らは、尻尾の炎を出しまくった。とても疲れて、そして痩せた。

 尻尾の炎ダイエットは成功した。


 ---------------いやあ、痩せて良かったね。


《本当に痩せるものですね。良いアイデアでした。さすがです》


 ---------------あんまり太ったから、子供でも産まれるかと思ったよ。


 僕は気軽に冗談を言った。

 そう、冗談のつもりだった。


《それも良いですね。子供が欲しいです》


 ん? ニノは何を言ってるの?

 子供が欲しい?! そんな馬鹿な。聞き間違いか。


 ---------------ニノ、ちょっとよく分からなかったから、もう一回言って。


 僕の聞き間違いかなと思い、確認してみた。


《はい。子供が欲しいですね》


 聞き間違いではない。ニノは子供が欲しいと言っている。

 えっ?! どうやって?! 本気で?!


 ---------------えっ、どうやって?!


 僕は、もの凄く動揺してニノに尋ねた。


《どこかに卵があると思うので、探したくなりました》


 ……そういうことか。

 慌て過ぎて一瞬忘れてしまったが、僕らは人間ではなく正体不明の変な巨大生物なんだった。

 そういえば転生した当初『仲間はいないけど卵があります』みたいなことを言っていた気がする。その時は凄くショックを受けたのに、僕は卵のことなどすっかり忘れてしまっていた。


 ---------------ああ、なるほど卵ね。そういえば、どこかにあるって言っていたね……


《あれ? 急にテンションが下がりましたね。どうしたのですか?》


 ---------------いや、何でもない。気にしないで。


 僕とニノの子供! と少し興奮してしまった自分が恥ずかしい。

 でもまあ卵探しも面白そうなのでヨシとする。


 ---------------ずいぶん前に卵の話を聞いたけど、未だに卵のままなの?


《はい、おそらく》


 どんな卵なんだろう。まだ孵っていないとは変な卵だ。まだ卵のままと分かるのも不思議だ。だけど世界中に僕ら1匹しかいないと分かるぐらいだから、どこかで同種が生まれたら、何となく感覚で分かるのかな。


 ---------------どこにあるのか、手がかりはあるのかな?


《ないですけど、白く光っている卵です》


 手がかりは、見た目だけか。


 ---------------ふーん、光ってるんだ。やっぱり大きいの?


《とっても大きいはずです》


 ---------------探すのは大変そうだけど、大きくて白く光る卵なら珍しいし、見つかるかもね。


《はい。見つかって欲しいです》


 広い世界で手がかりもなく、簡単に見つかるとは思えないが、卵探しも面白いかも。


 ---------------面白そうだし、のんびり探してみようか。


《はい。楽しみです》


 僕らは、何となく卵探しを始めることにした。この広い世界をニノと旅するのも楽しそうだし。


 僕らは楽しそうとか気軽に思ったのだが、実際の世の中は世知辛かった。


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