第68話 第2部ダイジェスト版?(前編)
暗黒ヤドカリとの戦いから半年後、僕らを取り巻く状況は好転していた。
モフモフ島は僕らの生息圏となった。上陸しても攻撃されない。
そして僕らは、人間と会話が出来るようになっている。言葉はニノが覚えてくれた。ニノは一度見聞きするだけで、おおよそは記憶する。
僕らから伝言するときは、ツノを点滅させてのモールス信号。ツノモールス信号は、防衛軍の一部の人に対してだけ使っている。
言葉を教えてくれた先生は、防衛軍のファイン少尉だ。ファイン少尉は僕らを怖がらず友好的な軍人のお姉さん。
僕らの監視役はノックス中尉。暗黒ヤドカリを倒した僕らのことを『相棒』と呼んで信頼してくれている。
そうして僕らは、のんびり過ごすことが出来るようになったと思っていた。しかしそう簡単に巨大生物が人間と共存することは出来なかった。
◇
超大国アルティア共和国で強力な権限を持つ大統領。その選挙戦が始まることになる。
「来週からアルティア共和国、第52代大統領を決める選挙戦が始まります。現職の大統領ボワットモワ氏、対抗する新人トムベーク氏。今回の選挙はこの2人の争いとなります。両者、政策の違いは多々ありますが、その中で1番の大きな違いは巨大生物への対応となります」
現職のボワットモア大統領は、巨大生物容認派。それに対して、新人のトムベーク氏は。
「対してトムベーク氏は、巨大生物は殲滅させた方が良いと主張しています。巨大イカや巨大エビは食用が可能、巨大生物の生息圏へも人類が進出すれば経済的にもより発展が可能だとの考えです」
---------------ぶっ!!! 殲滅だって?!
《また攻撃されてしまうのですか》
このトムベーク氏が大統領になったらヤバ過ぎる。にも関わらず世論はトムベーク氏に傾いている。僕らにはどうしようもないが、これは大ピンチだ。
やはり巨大生物が人間と共存することは難しい。
そんな中、ボワットモア大統領陣営から僕らに対して依頼があった。
「応援演説を頼みたい」
僕らは本気なのかと戸惑ったが、巨大生物容認派である大統領の依頼を受けることにした。
僕らは『ゴガオォォォン!』『グルグガガアアン!』『ピヤァァァン!』という3種類の挨拶を駆使して、ボワットモア大統領を応援した。
僕らの挨拶パフォーマンスは民衆に受けて人気を博す。
僕らの応援演説の効果もあり、大統領選挙は現職のボワットモア大統領は勝利した。
ボワットモワ大統領の再選により、僕らは引き続き、モフモフ島でのんびり過ごすことが出来るようになった。
◇
僕らが生活する深海の棲家。その北方には、アルティア共和国の同盟国であるジャピア王国という国が存在する。
ジャピア王国は大きな3つの島から成り立つ国で、最も南に位置する島である南山島に危機が忍び寄っていた。
ジャピア王国の近海にオタマジャクシのような形状をした巨大生物が現れた。その巨大生物は黒い瘴気を発していた。暗黒オタマジャクシだ。
暗黒オタマジャクシは、大群で現れて南山島を侵略した。
さらにジャピア王国の不幸は続く。
暗黒オタマジャクシの出現に呼応するかのように、南山島の中央にあるアソジ山から新たな1匹の巨大生物が出現した。
8本の首を持つ巨大生物。その巨大生物もまた黒い瘴気を発していた。暗黒8本首だ。
僕らはジャピア王国の危機を知り、南山島へと向かう。
僕らは暗黒オタマジャクシを数匹ばかり倒したあと、向かってくる暗黒8本首と対峙した。
暗黒8本首は、8つの大きな口から火球を吐いて攻撃してくる。僕らもツノ攻撃などで応戦するが、一進一退の攻防となり勝負はつかない。
その時、アルティア共和国防衛軍が援軍にやってきた。大量の爆撃で、僕らの援護をしてくれる。
暗黒8本首は弱体化した。僕らは弱体化した暗黒8本首にツノ攻撃で追撃する。そして最後は、尻尾の炎で暗黒8本首を黒焦げにした。
プスプスと黒い煙に包まれた暗黒8本首を見て、僕らとジャピア王国軍は勝利したと思い込む。
しかし、暗黒8本首は生きていた。黒い煙は黒くて濃いモヤとなり、黒焦げの暗黒8本首を包み込む。
その黒くて濃いモヤの中から、暗黒8本首は姿を変えて復活した。復活した暗黒8本首の強さは圧倒的だった。僕らは暗黒8本首の攻撃になす術もない。
暗黒8本首の攻撃を受け続け、ついに僕の視界にいたニノがガクンと膝から崩れ落ちる。
ニノは倒れたまま全く動かない。
---------------ニノ、死んじゃダメだ!
僕は最後の力を振り絞り、這いずりながら海中へと逃げ込んだ。何とか暗黒8本首から逃れることはできたが、逃れたあとの記憶はない。
僕らの敗北後、アルティア共和国とジャピア王国の連合軍は、暗黒8本首と暗黒オタマジャクシに抵抗したが、最後は全軍撤収することとなる。
そうして南山島は暗黒8本首と暗黒オタマジャクシが支配する絶望の島となってしまった。
ジャピア王国は、南山島を奪還すべくアルティア共和国と共に作戦を練っていた。ジャピア王国とアルティア共和国は、連合軍を結成する。連合軍には、その主力となるべく開発した新兵器が存在した。
KM-29 メカパウンド1番機(アルティア共和国オリジナル)
KM-30 メカパウンド2番機(ジャピア王国カスタム)
2機のメカパウンドの開発は、アルティア共和国巨大生物防衛軍の一組織である兵器開発部が担当した。
兵器開発部の中心人物はレーン博士。レーン博士は、愛とロマンを探求するアルティア共和国を代表する偉大な博士だ。
そんなレーン博士が開発したメカパウンドの資料を、ジャピア王国巨大生物特別対策室のメンバーであるナオト少尉とツムギ少尉が確認する。
「体高30m、全長60m。パウンドよりかなり小さい」
「武装は電磁加速砲、通称レールガン。背中にある弾丸パックで補充」
「AIによるセミオートマ、搭乗者はなく遠隔操作」
「専用のドローン映像をAIが解析、相手についてのデータ量が増すほどに強くなる」
「開発中だった大型兵器をパウンドの身体情報を元に改良」
資料を見たナオト少尉は、巨大生物対策室のトップであるユウリ室長へ確認をする。
「それで自分たちは、何をすれば良いでありますか」
「2人にはメカパウンドの眼になって貰いたい」
「眼、ですか?」
「ああ、君たち2人にはメカパウンド専用ドローンを操作してもらう。複数のドローンが撮影した映像をAIが解析、メカパウンドの動作をサポートする仕組みになっている。博士によるとデータの質と量が大事ということらしい」
そう聞いたナオト少尉とツムギ少尉は、南山島を奪還作戦の主力となるメカパウンドのため、専用ドローンを使い献身的に暗黒8本首のデータを収集した。
メカパウンドの初陣となった暗黒オタマジャクシ迎撃戦。その戦いで、メカパウンドは多大な戦果を上げた。
メカパウンドが暗黒巨大生物に対して有効と判断した連合軍は、南山島奪還作戦を決定する。
それと時を同じくして、暗黒8本首に異変が起きた。
暗黒8本首は突如として、周囲の暗黒オタマジャクシを食べ始める。周囲の暗黒オタマジャクシを食べ尽くした暗黒8本首は、黒いモヤに包まれた。
ついに連合軍による南山島奪還作戦の状況が開始される。
黒いモヤに包まれた暗黒8本首を2機のメカパウンドが強襲する。メカパウンドはレールガンを放つが効果はなく、黒いモヤに変化が起こる。メカパウンドの目の前で、暗黒8本首が2匹に分裂した。
想定外の出来事だったが、連合軍は冷静に対処する。
連合軍はメカパウンドを温存し、もう1つの新兵器であるSAKEミサイルを発射した。SAKEミサイルの目的は暗黒8本首を眠らせること。
しかし、SAKEミサイルを受けた暗黒8本首が眠ることはなく、無差別に暴れ始めた。
それを見た連合軍は暗黒8本首の消耗を待ち、情報収集を行いつつメカパウンドの待機を継続する。
◇
一方でパウンドは、暗黒8本首に敗北後、その姿を消していた。ノックス中尉とファイン少尉は、姿を消したパウンドを懸命に探していた。
2人はパウンドの捜索中に白い不思議なモヤを海中で発見する。ファイン少尉は、その白いモヤこそがパウンドだと確信していた。
長い間、変化のなかった白いモヤだが、ファイン少尉の見守る中、強い光りを放ち始めた。
それを見たファイン少尉は呟いた。
「今度の輝きは凄い」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます