第60話 少女メイと少年レーンの夏休み(後編)?
メイとレーンは、毎日のように海岸へ来ては巨大生物を探して遊んでいた。巨大生物を見つけるとメイは話しかけ、レーンは一生懸命にメモを取っていた。
そんなある日。腹に卵をつけたエビ型の巨大生物が現れた。
「卵があるよ、私、初めて見たっ!」
メイは初めて見る卵に驚いた。
「凄い!!! 卵だ!!! 卵!!!」
それ以上にレーンの驚きようは凄かった。巨大生物の卵を発見した事例は数える程しかないので当然だ。
「卵がお腹に3つもあるね。三つ子だよ。凄いね、レーン君」
「うーん、エビ型でも卵は3つしかないのか。少ないな」
「3つもあるのに少ないの?」
「普通のエビなら種類によって何十、何百から何万とかだってあるからね」
「そうなんだー、レーン君は物知りだね。じゃあ3つって少ないね」
「あまり襲われることがないから少なくても良いんだろうね。メモしとこう」
レーンはそう言いながら一生懸命に記録した。その間、メイはエビ型の巨大生物に話しかける。
「元気な赤ちゃんが産まれるといいね。頑張ってね、エビさん」
2人で好きずきに過ごしていると、エビ型の巨大生物の腹にある卵が孵化し、エビ型の赤ちゃん巨大生物が誕生した。赤ちゃんと言ってもメイとレーンよりずっと大きい。
「凄いよ、メイちゃん。こんなに近くで見られるなんて。メイちゃんに見せたかったのかな」
「そうなのかな。エビさん、頑張ったね」
エビ型の巨大生物は卵が孵化すると、海中へ帰って行った。
産まれてきたエビ型の赤ちゃん巨大生物3匹のうち、2匹は親と一緒に海中へと向かって行った。
しかし何故か1匹だけは、浅瀬からメイとレーンのいる方に向かって歩いてきた。それを見て、メイとレーンは慌ててしまう。
「メイちゃん、どうする? 1匹こっちへ来ちゃうよ!」
レーンが慌ててメイへ話しかける。
「エビの赤ちゃん、間違えちゃってるね! こっちじゃないのにね」
メイはレーンに返事をした後、続けてエビ型の赤ちゃん巨大生物へ注意する。
「こっちに来ちゃダメだよ。反対だよ!」
メイにつられてレーンも初めて巨大生物へ話しかける。
「違うよ。こっちじゃないよ」
エビ型の赤ちゃん巨大生物は、騒ぐ2人に反応する。
『プシュ、プシュゥ』
エビ型の赤ちゃん巨大生物は楽しそうに近づいてくる。2人は困ってエビ型の赤ちゃん巨大生物を大きな声で話しかかる。
「こっちじゃないよ。あっち。お母さんはあっちだよ!」
メイはエビ型の赤ちゃん巨大生物を心配してキツく言う。レーンもメイと同じようにキツく言う。
「メイちゃんの言うことを聞いて! 海の方へ行きなよ!」
ワーワー言っている2人に圧されたのかエビ型の赤ちゃん巨大生物は反転し、海中へと進み始めた。
『プシュ、プシュゥ』
2人はそれを見てホッとする。
「エビの赤ちゃん、楽しそう。元気に大きくなって欲しいな」
メイが呟く。
「うん。元気に育って欲しいね。あれ? そういえば僕、初めて巨大生物に話しかけてた」
レーンは自分が自然に巨大生物へ話しかけていたことに少し驚く。
「本当だ。普通に話しかけてたね。あはは」
「あははは、メイちゃんのおかげで楽しかった」
「うん、私も凄く楽しかった」
エビ型の赤ちゃん巨大生物を見送りながら、2人で笑いあっていた。
「私、大きな生き物さんたちが大好きだから、みんなで仲良く暮らしたいんだっ」
「えっ、巨大生物と仲良く?!」
「うん、レーン君は?」
「僕も仲良く暮らしたい!」
そうして日は過ぎ、夏休みの最終日。2人は来年の夏休みにまた遊ぶ約束をする。
「メイちゃん、来年もまた来るね」
「うん、待ってるね。レーン君」
しかし、その年の晩秋。冬の到来と共に人類に敵対する黒い瘴気を放つ巨大生物が現れた。黒い瘴気を放つ巨大生物は、人類に甚大な被害をもたらしたあと、海中へその姿を消した。
巨大生物と話が出来る1人の少女と共に。
◇
翌年の夏休み。
レーンはメイが黒い巨大生物災害により行方不明になったことを知った。レーンはメイと遊んだ海岸を1人で訪れる。
エビ型の赤ちゃん巨大生物へ一生懸命に話しかけた思い出の海岸だ。
「メイちゃんと一緒に来たかったな」
レーンは呟く。
(私、大きな生き物さんたちが大好きだから、みんなで仲良く暮らしたいんだっ)
レーンは、思い出の海岸でメイとの会話を思い出す。
「メイちゃん。僕はもっともっと色々な勉強をして、巨大生物と愛を持って暮らせる世界を目指すからね」
しかし、メイが行方不明になったのも巨大生物が原因であるという事実。
「だけど、メイちゃんを奪った人類を襲う
少年レーンは心に誓った。そして大人になり、アルティア共和国を代表する博士となる。
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