第59話 少女メイと少年レーンの夏休み(前編)?
「お母さん、行ってきまーす」
「メイ、また海に行くの? 気をつけなさいね!」
「はーい、お母さん!」
元気に家を出る少女の名前はメイという。巨大生物に話しかけることが好きな少し変わった少女だ。メイは今、夏休み。毎日のように海岸に遊びに行っていた。
「今日は大きな生き物さんたちいるかなー?」
メイはいつも遊んでいる海岸へ到着する。海岸には、メイの知らない少年が海を眺めていた。
「あれ? 誰だろう? 珍しいな」
滅多に人の来ない場所だったので、メイは不思議に思ったが、好奇心旺盛なメイは知らない少年に声をかけた。
「こんにちはっ!」
突然、声をかけられた少年は、驚きながらもメイの方を向いて返事をした。
「こ、こんにちは。え、誰?!」
「私はメイだよ。あなたは?」
「僕はレーン。急に話しかけてくるからビックリした!」
少年の名前はレーン。メガネをかけた賢そうな少年だ。
「驚かしちゃってごめんね。私はいつもここに遊びにくるんだよ。レーン君は何してたの?」
「ここら辺に巨大生物が来るって聞いたから見に来たんだけど、いないみたい」
「私も同じ、大きな生き物さんを見に来たよ。今日はここよりあっちの方にいるかも」
「そうなんだ、どこ? 行ってみたい!」
「じゃあ一緒に行こうっ!」
メイとレーンは2人一緒に岩場へと向かう。
向かった先の岩場の陰には、エビ型の巨大生物がいた。
「あ、エビ型がいる! 凄いや! 初めて見た!」
レーンは初めて見る巨大生物に興味津々。エビ型の巨大生物に怯えながら遠巻きに眺める。
そんなレーンに対して、メイはお構いなしにどんどんエビ型の巨大生物に近づいていく。
「えっ、メイちゃん。そんなに近づいたら危ないよ!」
「大丈夫、大丈夫」
そう言ってメイはエビ型の巨大生物のすぐ近くまで行き、エビ型の巨大生物に話しかけた。
「エビさん、怖くないよねー」
エビ型の巨大生物は、メイを見ても暴れることもなく大人しくしている。レーンにはエビ型の巨大生物がメイの話を聞いているようにすら見えた。
レーンは驚いてメイに尋ねる。
「メイちゃんは巨大生物と話が出来るの?!」
「うん、いつもお話しているよ」
「本当?! 凄いね。メイちゃんは」
「レーン君もこっちに来なよ。大丈夫だよ」
レーンは恐る恐る近づいてみる。レーンは、初めて近くで見る巨大生物にロマンを感じた。
「凄く大きくてカッコいい。神々しいな。ロマンがある」
レーンは、持っていたメモ帳に感じたことを書き出していった。メイは何故メモしているのか不思議に思い、レーンに尋ねる。
「何してるの?」
「巨大生物の記録と感じたことを書いているんだよ。忘れないように」
レーンはメガネをクイっと上げてメイに答える。
「お勉強? レーン君は変わってるね。子供なのに博士みたい」
「メイちゃんの方が変わってるよ。巨大生物と話をするなんて」
そうして、顔を見合わせて2人でアハハと笑う。
「僕は夏休みの間は叔父さんのところにいるから、また遊ぼうよ」
「うん、いいよ。私、毎日、ここへ来るから」
2人はまた一緒に遊ぶ約束をした。
メイは帰り際にエビ型の巨大生物にも話しかける。
「エビさんも見つからないように気をつけて帰ってね」
エビ型の巨大生物はメイをジッと見つめたあと、海中へと去っていった。
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