第58話 復興支援ボランティア?

 僕らはモフモフ島でのんびりしていた。特に任務もないので、動くと言ったら食事をする時ぐらいのものだ。何なら動かなければ腹も減らないので、食事も1カ月ぐらい摂らなくても大丈夫な気がする。人間なら立派なニートだが、野生の巨大生物なので別に普通のことだろう。あまり動かない爬虫類とかもいるわけだし。


 そう思っていたのだが、毎日モフモフと戯れながら寝転がってモニターを見ている僕らを見かねたのか、ファイン少尉から仕事を頼まれた。


「ジャピア王国の復興支援ボランティアに参加して下さい」


 毎日ダラダラと寝ているな、ということだろう。


【はい】


 僕らは素直に返事をして、ジャピア王国の復興支援ボランティアに行くことにした。

 さすがに毎日やることもなくて暇だったので、ジャピア王国へ行く用事が出来て少し嬉しい。


 ---------------ちょっと楽しみだね。


《そうですね、何をするんでしょうか》


 指定された場所へ行くと、対応してくれる職員さんがいた。とても緊張しているようなので、挨拶して可愛く尻尾を振ってみるが、緊張がほぐれたようには全く見えない。顔が強張っている。やはり普通の人は僕らと話をするのは怖いのか。大人しく作業内容だけ聞くことにする。


 僕らは職員さんから瓦礫を燃やして埋める作業を依頼された。

 埋める場所は暗黒オタマジャクシが大量にいて荒れてしまった土地だが、街から少し離れていることは幸いだ。

 その荒れてしまった土地に瓦礫を埋めるための穴を掘る。


 ガシ! ドガガガガッ!


 横穴と違い地面に穴を掘るのは苦手なのだが、ツノと腕と尻尾を使って器用に掘っていたら感心された。


《こんなところでしょうか》


 ---------------いい感じだね。これなら十分じゃないかな。


 とりあえず地面に大きな穴を掘った。僕らがすっぽり入るほどの大きな穴だ。近くに大量の瓦礫がトラックにより運ばれてきているので、掘った穴に押し込んで消し炭にする。出来るだけ有害物質が発生しないように超高温で一気に燃やす。


 そんな感じに穴を掘って埋め立てまで完了させる出張焼却炉として頑張っていたところ、黒いスーツをきた人たちがゾロゾロと視察に集まってきた。集めた瓦礫を爆炎で焼却しまくっている僕ら。その姿を緊張感を持って注視している。


 ---------------誰だろう?


《凄く見られてますね》


 かなり偉い人なんだろうなという感じはあるのだが、ボワットモワ大統領やトムベーク氏のような強烈なオーラは感じない。


 ---------------まあいいか。忙しいし放っておこう。


《はい。作業を続けましょう》


 完全にスルーしてしまったのだが、後で聞いたらジャピア王国の大臣だった。これは失敗、挨拶ぐらいはしておくべきだった。


 また別の日。今度は作業服を着た一団がゾロゾロとやってきた。

 その中でやけにオーラのある1人が周りの制止を振り切って、僕らを怖がりもせずに近づいてきた。そして普通に話しかけてきた。


「お疲れ様、パウンド君。ジャピア王国のためにありがとう。私は巨大生物との関係をより良くしていきたい。議員になってくれなかったのは残念だが、共に頑張っていこう」


 僕らは迫力に負けてよく分からないまま、挨拶をしていた。


『ゴガオオオン…』(こんにちは)

『ピヤアアアン…』(ありがとう)


 そのやけにオーラのある人は僕らの挨拶を聞いて満足そうに去っていった。後で誰かと尋ねたところ『巨大生物を応援する党』の党首ジンシロウ氏とのことだった。


 ---------------迫力があったね。


《はい。全く怖がらずに近づいてきましたね》


 ジャピア王国にもド迫力の人がいるようだ。


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