第56話 メカパウンド開発秘話?

 オタマジャクシ型の巨大生物を殲滅した直後、ナオト少尉とツムギ少尉は南山島にいた。


「ツムギ少尉、これからが大変だな」


「そうね。南山島を奪還したとはいえ、完全に復興するには時間がかかりそうね」


 南山島の中でも特に荒れ果てた地区の様子を確認しながら、ナオト少尉とツムギ少尉が話をしていた。


「ああ、それでもオタマジャクシ型が群れを形成していてくれたおかげで被害のない街が多くて良かったな」


「本当ね。これなら早く戻って来られる住民もたくさんいるわよ。それもパウンドとメカパウンドのおかげね」


「パウンドとメカパウンドか。そういえば、ツムギ少尉はメカパウンド開発時の話を聞いたか?」


「何も聞いてないわ。レーン博士の話かしら? 聞かせてもらえる?」


「ああ、アルティア共和国の兵器開発部の知り合いに聞いた話だが、こんなことがあったらしい」



 ◇

 


 アルティア共和国、巨大生物防衛軍の一組織である兵器開発部。

 その兵器開発部では日々、巨大生物へ対抗するために兵器の研究、開発が行われていた。


 そんな兵器開発部へ新人が配属された。超一流工科大学を次席で卒業した将来有望な新人だ。


「きみが新人のホルダー君か」


 白髪の男性が新人のホルダーを見つけて声をかけた。新人のホルダーは身を正して返事をする。


「はい、本日付けで配属されました新人のホルダーです。レーン博士、お目にかかれて光栄です」


 声をかけた白髪の男性の名はレーン博士。斬新な兵器を数多く研究、開発したアルティア共和国の偉大な博士だ。


「ホルダー君、きみはメカパウンドが何故パウンドを模した形状をしている知っているかね?」


「いえ、全く分かりません。正直に言いますと、AI搭載レールガンで良いのではないかと思っています。足などは飾りかと」


「なるほど。きみははっきりものを言って気持ちがいいな。しかし、まだまだ勉強不足だ」


「と言いますと、やはり理由があるわけですね。ご教授願えますでしょうか?」


「いいだろう。まずメカパウンドの半分は愛とロマンで出来ていると言うことは知っていると思うが、それ以外には……」


「えっ、レーン博士。まずメカパウンドの半分が愛とロマンだということを知りませんでした」


「そうか、兵器開発部では常識だぞ。覚えておくように」


「えっ、あ、はい、分かりました。愛とロマンは大事と」


「次にただのレールガン発射台とメカパウンド、どちらが子供に人気だと思う?」


「子供に人気ですか、やはりそれはメカパウンドでしょうね」


「その通りだ。兵器開発部は企業からの献金も多いのだがな、その企業の中にはエンターテインメント系の企業も多い。従ってただの発射台より、アニメ、映画、玩具などにし易いメカパウンドがいいのだよ」


「献金のためだったんですか」


「兵器開発部は巨額の献金で成り立っていると言っても過言ではない」


「そうなんですね」


「ある企業から今回は玩具の売れ行きがいいと聞いている。メカパウンド1番機、2番機でカラーリングが違うだろう。あれは同じ金型で2種類発売することが出来るからだ」


「そうだったんですか、戦闘時の視認性を考えているのかと思っていました」


「もちろんそういった意味もある。次にきみはパウンドが他の巨大生物に恐れられていることは知っているかね?」


「はい、それは聞いたことがあります」


「だからパウンドを模すことにより他の巨大生物に対して威圧感を出している。巨大生物が引き返してくれれば戦わずに勝つことができる」


「急に普通ですね」


「きみは何を言っている? 全て普通だぞ」


「はい。失礼致しました」


「あと私はパウンドの研究をしているのだが、パウンドはロマンが分かる巨大生物ヤツだと思っていた。パウンドは機械メカを見てテンションが上がり、それと共に戦闘力があがると読んでいた」


「そうだったんですか、確かに機械メカを見てから急に動きが良くなっていました」


「そこにパウンドお得意の挨拶も付け加えれば完璧だ」


「確かに。パウンドは挨拶を聞いてすごく嬉しそうで、張り切っているように見えました。戦闘力も格段にアップしたように思います」


「そうだろう。私の計算通りだ」


「凄いですね。自分は何もわかっていませんでした」


「うむ、分かってくれたか。それからな、私は巨大生物を悪だとは思っていない。世界中にいる全ての生物に対して愛と敬意を持っている。ただし、巨大生物が人類を脅かすならば、私は全力で巨大生物を倒す兵器を開発し、人類を守りたいと考えている。きみも同じ気持ちでこれから職務にあたってほしい」


「はい!」


 アルティア共和国防衛軍、兵器開発部。人類を守るため、今日も巨大生物に対抗しうる兵器を開発する。



 ◇



「そんな話があったのね。ちょっと私のような凡人には分からないところもあるけど、メカパウンドが活躍したのは確かね」


「ああ、俺もどこまで本当の話なのかは分からないが、この話をしてくれた兵器開発部の知り合いのヤツも少し変わっている。そういう人物が独自の研究をして巨大生物に対抗する兵器を開発しているのかもな」


「オタマジャクシ型に有効だったSAKEミサイルもレーン博士のチーム

が開発したと聞いたけど」


「そうらしいな。SAKEのアルコール成分が黒く腐食した土地の浄化までしていたからな。驚いたよ。アルティア共和国の兵器開発部は奥が深いな」


「ええ、私たちが理解するのは難しいわね」






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