第51話 メイの活躍?

 メイは時間の許す限り防衛隊からの要請に応えていた。

 巨大生物が人里付近へ現れると、防衛隊と共にメイもその場へ向かう。


「メイちゃん、また巨大生物へ話をしてもらえるかしら?」


「はい! ソフィアさん」


 普段は人里離れた山奥にいるモフモフとした毛むくじゃらの巨大生物。

 そのモフモフとした巨大生物が1匹群れから逸れて迷ってしまったのか、民家のある地域へ近づいてきてしまっていた。


「ねぇねぇ、モフモフさん。モフモフさんのお家はこっちじゃないよ」


 メイは1匹のモフモフとした巨大生物に話しかける。

 近づいてくる少女にモフモフとした巨大生物は困ったようにジッとしている。


「メイちゃん、近づきすぎ。危ないんじゃ‥‥」


 巨大生物へあまりに近づくメイを見て心配そうにソフィア隊員が声をかける。


「大丈夫です。ソフィアさん」


 メイはモフモフとした巨大生物へさらに近づき、モフモフの体毛に手で触れる。


「わぁ、気持ちいい」


 メイに触られてもモフモフとした巨大生物は、大人しくしたままだ。


「モフモフさん、こっちだよ」


 メイはモフモフとした巨大生物の群れが住む方向へ歩きだす。

 しかし、モフモフとした巨大生物はジッとしている。


「こっちだよ、こっち!」


 メイは身振り手振りを交えて大きな声でモフモフとした巨大生物を呼び寄せる。モフモフとした巨大生物はメイに興味を持ったように動き出す。


 メイはソフィア隊員の乗る車輌に乗り込み山奥へと続く山道を行く。

 モフモフはメイを乗せた車輌を追いかけて山奥へと帰って行った。


「メイちゃんは凄いね。今日もありがとう」


 ソフィア隊員がメイへお礼を言う。

 モフモフとした巨大生物を山奥へ帰し、ソフィア隊員にお礼を言われたメイは嬉しそうに返事をする。


「モフモフさんが無事に帰ってくれて良かった! ソフィアさん、また私を呼んで下さい!」



 ◇



 また別の日には。

 メイの目の前には、巨大ヤドカリがいる。まだ子供なので、巨大ヤドカリの中では小型である。

 今日のメイへの要請は、巨大ヤドカリを海へ帰すことだった。


「ヤドカリさん、海へ帰ろうよ」


 メイは先ほどから一生懸命に話しかけている。しかし、巨大ヤドカリはジッとしている。

 街の方へ進む気は無さそうだが、動く気もなさそうだ。


「ヤドカリさん、聞いてる?」


 メイは頑張って話しかけるが、巨大ヤドカリはジッとしている。

 しばらくすると巨大ヤドカリは殻に収まってしまった。


「ヤドカリさーーん、おーーーーい」


 メイの懸命の呼びかけにも関わらず、殻に収まった巨大ヤドカリは身動き一つしなかった。それを見て、さすがのメイも諦めた。


「ソフィアさん、あのぅ、無理です。ごめんなさい」


「そ、そうよね。そういうこともあるわよ。殻に収まってしまったから危険ではなさそうね」


 危険は無さそうということで、複数の艦船から巨大ヤドカリへいくつものフックを掛けて沖へと引っ張ることにした。巨大ヤドカリは、大人しく引きずられて海へと戻った。



 ◇



 そんなある日。

 冬の寒さが到来した頃、アルティア共和国の近海のある島に1匹の新たな巨大生物が出現した。

 防衛隊が見たその姿は異質だった。


 黒くガサガサとした丈夫そうな黒っぽい表皮。

 頭部にはツノがあり、口は大きく裂けている。

 体格に比べて小さな腕、その反対に脚は重量感があり極太だ。

 長い尻尾があり全長は100mを超えている。

 そして、その巨大生物は全身から黒い瘴気を発していた。


 島に住む住民の安全確保のために巨大生物に対する防衛隊が出動した。それとは別に正規の軍隊も出動した。

 黒い瘴気を放つ巨大生物は、上陸した島にある最大の街を襲撃する。住民の安全を確保した後、防衛隊および正規軍は黒い瘴気を纏う巨大生物へ洋上艦から砲撃を敢行する。しかし、黒い瘴気を放つ巨大生物への効果は認められない。黒い瘴気を放つ巨大生物は島を縦断した後、悠然と深海へ戻って行った。


 それから数日後、黒い瘴気を放つ巨大生物は、再びアルティア共和国へ姿を現す。

 黒い瘴気を放つ巨大生物は、本土と目と鼻の先にある島へ上陸した。

 アルティア共和国は、黒い瘴気を放つ巨大生物をその島で抹殺すべく、大艦隊を出撃させる。出撃した艦隊は、空母2隻を中心としたアルティア共和国最強の空母打撃群。その空母打撃群の旗艦に乗艦する艦隊司令から駆除作戦が発令される。


「これ以上、ヤツを本土へ近づけるわけにはいかない。あの島をヤツの墓場とする。総員、気を引き締めていけ。駆除作戦、状況を開始する」


 空母から爆撃機が飛び立ち、洋上艦は黒い瘴気を放つ巨大生物を砲撃の射程に収める。

 黒い瘴気を放つ巨大生物への爆撃、砲撃が一斉に始まる。島の形が変わるほどの一斉攻撃だ。

 さすがの黒い瘴気を放つ巨大生物も凄まじい物量攻撃に足元がおぼつかない。苦しいからなのか、怒りからなのか、鳴き声をあげながら、ヨロヨロと海中へと姿を消した。


「やったか?!」


 その様子を見ていた軍人は一様にそう思ったのだが、その認識は間違っていた。海中に潜った黒い瘴気を放つ巨大生物は、全力で空母打撃群へと向かってきた。

 空母打撃群は海中を猛スピードで進んでくる黒い瘴気を放つ巨大生物へ爆雷、魚雷で迎撃を開始するのだが、効果はない。

 艦隊直下の海中に潜られた空母打撃群は、なす術もなく敗北した。


 空母打撃群が敗北した数時間後、アルティア共和国に衝撃のニュースが報じられる。


「我が国の艦隊が黒い瘴気を放つ巨大生物により半数以上が撃沈されました。その後、その巨大生物は我が国の東海岸へ上陸、人間を襲い海岸線の街を破壊しながら首都へと向かい北上しています」


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