第49話 気になるニュース?

 深海の棲家でしっかりと体力を回復した僕らは、モフモフ島にやってきた。


 ---------------モフモフ島も久しぶりだね。


《進化後は初ですね》


 見た目が変わった僕らだけど、モフモフたちの反応に変化はない。いつもと同じように近づいてくる。

 そういえばファイン少尉たちも「痩せましたね」ぐらいで反応は薄かった。そこそこ見た目が変わった気がするので、もっと反応があると思ったのだけれど、自意識過剰なのだろうか。


 そんなことを思っていたら、進化した身体に興味を持っている人たちがいた。その人たちの代理として、ファイン少尉がモニターを使って連絡してきた。


「また身体測定をして良いですか? 兵器開発部でパウンドさんのデータが欲しいようで」


 アルティア共和国の兵器開発部。以前も一度、体型と骨格情報が欲しいとか言って調べられたことがある。

 その結果としてメカパウンド、僕らを模した機械メカを開発していた。


 ---------------まあ良いよね?


《良いですよ。あまり好きじゃないですけど》


 僕もニノも身体を調べられるのは好きではない。好きではないが、協力はする。メカパウンドのお陰で暗黒8本首、暗黒オタマジャクシを倒せたし、何より見た目がカッコよかった。


【いいですよ】


 ファイン少尉へ返事をして、身体測定を受けることにした。

 数日後、モフモフ島よりもアルティア共和国の本土に近い無人島へ出向いていくと、島には巨大な装置が設置されていた。設定されている装置にはMRIみたいな機能があるらしい。

 ロケットの発射台のような装置が円形に5つ建っているので、僕らはぶつからないように、その真ん中にそっと立つ。


 ---------------なんだかモジモジしちゃうね。


《そうですね》


 すると、すぐにファイン少尉から注意される。


「動かないで下さい!」


【はい】


 僕らは、言われた通りジッとしていた。

 そうしているうち無事に検査が終わり、数日後に結果を聞いた。


 全長は以前と変わらず105m、体重は計測不能。

 見た目が変わったことに伴い骨格なども変化しているとのことだ。まあそれは良い。

 そんなことより僕にとって衝撃的な検査結果が出てしまった。


 なんと、第一のより第二のニノの方が、容量が大きいと言うことだ!


 前回の検査時は同じぐらいだったはずなのだが、どういうことだ?!


 落ち着いて理由を考えてみる。ニノは以前に比べると、考えたり、想像したり、感情が現れたりと良い方向へ変化している。

 それに比べて、僕は何も覚えず記憶についてはニノ頼み。むしろバカになってきている気さえする。これのせいか。


 検査結果を聞いて、ニノの方をチラッと見る。

 ニノは何も言わずにドヤ顔で僕の方を見つめている。


 ---------------ねぇ、ニノ。僕らは2人で1人だよね?


《まあ、そうですね》


 ニノに勝者の余裕を感じた。



 ◇



 今日も任務がなく特にやることもないので、のんびりモニターでニュースを見る。寝転がってニュースを見ている姿はただのおっさんだ。


 ---------------へぇ、食料品の値上げかぁ。大変そうだな。


《私たちは自分で獲るので関係ないですね》


 ---------------いやぁ、関係あるかもしれないよ。巨大エビが人間の食糧になっていなくなるとか。


《それは辛いですね》


 のんびりモニターでニュースを見ていると、暗黒ヤドカリ、暗黒オタマジャクシ、暗黒8本首など黒い瘴気を放つ巨大生物の特集が始まった。


 その特集を見ていたら、ひとつ気になる映像が目に入ってきた。数十年前に現れたという巨大生物に向かいあう少女の静止画像だ。最近になって数枚の写真が見つかったとのことだ。

 黒い瘴気が濃すぎて分かり辛いが、写真に写る巨大生物は、進化前の僕らの姿に似ているかも。そして、少女の方は金髪と銀髪という違いはあるものの、ニノによく似ているような感じがする。


 ---------------あの少女、ニノによく似ているね。


《言われてみると、そうですね》


 後日、気になったのでファイン少尉に巨大生物に向かいあっていた少女のことを聞いてみる。

 すると、ファイン少尉から意外な返事が返ってきた。


「あの少女は私の叔母なんですよ」


 なんと、巨大生物に向い合っていた少女は、ファイン少尉の叔母だった。メイおばさんと言うらしいが、ファイン少尉が生まれる前に亡くなり実際に会ったことはないそうだ。

 そんなメイおばさんについて、ファイン少尉が知っていることを語ってくれた。

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