第46話 もしかして強い?

 8本首の巨大生物は、酔っ払いながら本島を目指して北進を始めていた。その動きに対応して、2機のメカパウンドはデータを収集しつつ、遅滞戦闘を行っていた。

 司令部が戦況を注視していたところへ、ファイン少尉からパウンド復活の報告が入る。

 

「なに! パウンドが復活だと! そうか……、よし、時はきた。パウンドと合流した時が勝負の時だ」


 2機のメカパウンドは、街への被害が最小になるよう8本首の巨大生物を誘導するように戦闘を継続した。



 ◇



 僕らはファイン少尉から話を聞いて、2匹に増えた暗黒8本首を倒すため、急いで南山島へ向かう。


 道案内は、ファイン少尉から連絡を受けたノックス中尉だ。高速ヘリで暗黒8本首まで先導してくれる。

 現状の暗黒8本首は、少し酔っ払いながらジャピア王国の本島を目指して北進をしているそうだ。どうして酔っ払っているのか疑問ではあるが、質問は後にしておこう。


 僕らは南山島の北海岸から上陸し、暗黒8本首へ向かう。

 上陸して、はっきりと分かったことがある。それは身体が全体的にスッキリしてスリムになっているということだ。相変わらず足腰はどっしりとはしているが、以前に比べると脚が少し長くなり重量感は減っている。


 今回の進化は、陸上での身体能力アップのようだ。進化前の身体が中年太りのオッサンなら、今は健康な若者だ。少し走っただけでゼェゼェなることはない。

 以前はもっさりとした走りしか出来なかったが、今はリズミカルに走ることが出来る。人間で言うとランニング程度でしかないが、それでも以前に比べれば十分速い。

 あと貧弱だった手が立派になった。身体全体のバランスが良い。おまけに指が4本から5本に増えている。これなら物を掴むことが出来そうだ。


 目的地へ向かう通りがかりに、目についた暗黒オタマジャクシと戦ってみる。


 ---------------暗黒オタマジャクシで、進化した身体を試してみよう。


《はい》


 僕らは暗黒オタマジャクシに走り寄り、その勢いのままサッカーボールキックを繰り出してみた。僕らに勢いよく蹴られた暗黒オタマジャクシは、くの字に折れ曲がりゴロンゴロンと転がっていく。


 ---------------おお、凄い。


《思った以上ですね》


 これなら暗黒8本首が2匹相手でも戦えるかもしれない。そんな思いが湧いてくる。

 しばらく走ると、暗黒8本首が僕らの視界に入ってきた。その後方にはキラキラと光る機械メカがいる。


 僕らは街を避けて、近くの小高い丘へ陣取った。2匹の暗黒8本首は、僕らを見つけて向かってきた。


 ---------------ニノ、今度は勝つよ!


《はい!》


 2匹相手だとしても今回は進化したばかり。その上、前回と違い体力も満タンだ。最高の状態で簡単に負けるわけにはいかない。


 暗黒8本首が遠距離から威力のある青白い火球を放ってきた。

 僕らは遠距離から放たれた火球を視認、余裕をもってかわす。進化前は視認しても動きが遅くてかわせなかったが、今の身体なら造作もない。


 2匹の暗黒8本首は、火球を吐きながらも立ち止まらずに、一直線に向かってくる。僕らは右側の1匹に攻撃を絞ることにした。


 ---------------よし、右のヤツにツノで攻撃しよう。


《はい、頭から突っ込みますね!》


 僕らは右側の1匹に全力で突っ込んだ。僕らは軽快に走り寄り、ツノで肉をえぐり暗黒8本首を弾き飛ばした。


「キッシャアアアァァァァゥア!!!!」


 苦しそうな叫び声をあげながら、暗黒8本首がゴロゴロと丘を転げていく。手ごたえありだ。

 それを見たもう1匹が青白い火球を連射してきた。素早く動けるようになったとはいえ、数が多すぎ全てをかわすことが出来ずに食らってしまう


 ---------------あっつ!!!


《これはやっぱり痛いですね》


 しかし、以前よりはダメージが少なく感じる。少し耐性がついたようだ。

 僕らは、最初にダメージを与えた1匹へ追撃をしようとするのだが、もう1匹からの火球攻撃に阻まれて思うように追撃できない。


 ---------------これは厄介だね。また復活されてしまいそうだよ。


《どうしましょうか》


 その時、後方にいた2機の機械メカが、僕らの邪魔をしてくる1匹に向かって攻撃を開始した。


 ---------------あれがさっきファイン少尉が言っていたメカパウンドかな。


《キラキラしてますね》


 ---------------カッコいい。


 ここまでの道中にファイン少尉から、メカパウンドのことについての話を聞いていた。どんなモノかと思っていたが、想像よりスマートでカッコいい。こんな機械メカを見たら自然とテンションが上がってしまう。


 ---------------確か赤いのが1番機で、青いのが2番機だったかな。あれが味方なら心強いね。


《はい。頑張りましょう!》


 メカパウンド1番機と2番機が、1匹の暗黒8本首を足止めしてくれる。見ると2機のメカパウンドは、暗黒8本首の吐く火球をかわしまくり、隙をついて攻撃している。まるで予知でもしているかのような動きを見せている。


---------------えっ、何あれ。凄いな。お前の攻撃は見切っているって感じ。


《どうなっているんでしょう。凄いですね》


 これなら僕らは、ダメージを与えた目の前にいる1匹に集中できる。有り難い。ひとまず2機のメカパウンドへお礼を言っておくとしよう。


『ピヤアアアン!』(ありがとう)


 僕らはメカパウンドへお礼を言った。すると。


『ピヤアアアン!』


 スピーカーからの音声だろうか。メカパウンドが返事をした。


---------------!? メカパウンドが返事をしたね。


《ビックリしましたけど、嬉しいですね!》


 僕らのテンションはますます上がり、さらなる力が湧いてくる。僕らはメカパウンド2機のサポートを受けて最初にダメージを与えた1匹への追撃を開始する。

 先制攻撃が上手くいったとはいえ、暗黒8本首はやはり強い。8つの大きな口で噛みつきにくる。しかし今回は、前回のようにやられっぱなしの僕らではない。進化した腕で相手の首を振り解き、反撃をする。

 僕らは再度ツノを突き刺し、押し倒してからの踏みつけ攻撃を敢行する。暗黒8本首は倒れながらも、しぶとく火球を吐き抵抗してくる。


---------------ここが踏ん張りどころ。一気に行くよ!


《はい!》


 僕らは動きやすくなった身体を目一杯に使って、ツノを突き刺し、尻尾で叩きつけ、踏みつけ攻撃とラッシュする。ラッシュにより動きの鈍った暗黒8本首を尻尾の炎で丸焦げにする。最後は暗黒8本首を圧倒した。


 しかし、これで終わりではない。前回は姿焼きにしたにも関わらず復活されてしまったので、今度はミンチしてから消し炭にする。

 炭にした後も一箇所に固まらないように念入りに尻尾で撒き散らす。さらに地面ごと尻尾の炎でじっくりこんがり焼き尽くした。前回のように黒いモヤのようなものは何も見えない。


 ---------------これなら復活しないかな。


《やり過ぎぐらいですね》


 目の前にはプスプスと焦げた地面が広がっているだけ。さすがにもう良いだろう。

 まずは1匹目の暗黒8本首を消滅させた。このままの勢いで押し切りたい。残る暗黒8本首はあと1匹だ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る