第44話 互いに覚醒?
南山島の奪還作戦が開始された。まずは上空から爆撃機でオタマジャクシ型の巨大生物に対して空爆を行う。上陸予定地点である南山島、北海岸周辺のオタマジャクシ型の巨大生物を排除していく。
空爆に続き、南山島の北海岸へ上陸部隊を乗せた輸送艦が接舷する。
その後方には、上陸部隊を援護射撃するための洋上艦が展開し、空爆を掻い潜って近づいてくるオタマジャクシ型の巨大生物を砲撃する。
その間に陸上部隊が上陸を果たして陣地を形成した。ここを拠点に南山島を奪還する計画だ。
そして、最大の難敵である8本首の巨大生物に向けて、アルティア共和国から大陸間弾道巨大ミサイルが放たれる。
過去にパウンド、ヤドカリ型の巨大生物へ使用し、ダメージを与えた実績のある巨大ミサイルだ。巨大ミサイルが黒いモヤのような塊へ直撃する。攻撃を受けた黒いモヤのような塊が叫び声をあげる。
「キッシャアアアアアア!!!!」
巨大ミサイルの先制攻撃によりダメージを与える。
巨大ミサイルに続いて、上空からメカパウンド2機が強襲する。メカパウンド1番機と2番機、それぞれが巨大な輸送機から離脱して着地する。着地したメカパウンド1番機、2番機の眼前には黒いモヤのような塊だ。
メカパウンドの眼である上空を舞う複数の専用ドローン。メカパウンドの目がデータを収集、状況を正確に把握する。
メカパウンド1番機、2番機は必殺のレールガンを黒いモヤのような塊へ向けて発射した。発射された弾丸は一筋の光りとなり、黒いモヤのような塊の中心を確実に貫通する。
「キッシャアアアアアア!!!!」
「キッシャアアアアアア!!!!」
黒いモヤのような塊が再び叫び声を上げた。
その後、攻撃を受けた黒いモヤのような塊は、グネグネと形を変えながら少しずつ巨大化していく。しばらくすると巨大化が止まり、黒いモヤのような塊は2つに分裂、今度は徐々に収縮していく。
収縮していくにつれて、一つ一つの姿がはっきりと見えてくる。収縮した2つの黒い巨大な塊は、それぞれ8本首の巨大生物に姿を変えた。8本首の巨大生物が2匹に分裂した。
その様子をモニターで見ていた作戦司令部の面々は、口々に驚きの声を上げる。
「2匹に増えるだと! そんなわけがあるか!」
「そのためにオタマジャクシ型を捕食していたのか!」
「適当に数を増やしやがって。黒い巨大生物に常識はないのか?!」
「この後の作戦はどうするんだ?!」
作戦司令部の面々は驚きを隠せなかったが、2対1という数的有利の状況下で戦闘を行うという想定が崩れたため、冷静にメカパウンドを待機させる。
そして、今日の決戦のために研究開発を進めていたもう一つの対巨大生物用の新兵器を繰り出すことにした。アルティア共和国の防衛軍がパウンド歓迎会の顛末を聞いて開発した新兵器だ。
SAKEミサイル。
弾頭にアルコール度数の高い酒を装備したミサイルだ。ふざけたミサイルに思えるが、薄いウイスキーでパウンドを眠らせたという実績はある。難敵といえども眠らせてしまえばメカパウンドが8本首の巨大生物へ一方的に攻撃できる。
爆撃機から一斉にSAKEミサイルが放たれる。照準は8本首の巨大生物の大きな口だ。SAKEミサイルは正確に8本首の巨大生物の口を捉える。
「キッシャアアアアアア!?!」
「キッシャアアアアアア!?!」
8本首の巨大生物の動きが止まる。一瞬、効果があったかのように思われたが、その後、8本首は四方八方に火球を吐き始めた。仲間に火球が命中しようがお構いなしだ。8本首の巨大生物は、眠るどころか暴れ始めた。
「余計に暴れたか。しかし、このパターンも想定内。メカパウンドはそのまま待機してヤツらの消耗を待て。その間にドローン隊は2匹のデータ収集だ」
作戦司令部は無理攻めはせず、メカパウンドに有利な展開へ持ち込めるようチャンスを伺う。
◇
8本首の巨大生物が濃い黒いモヤに包まれたのと同時刻。
海中にある白い塊の監視艇に乗船するファイン少尉が、海底に沈む白い塊の変化を発見していた。
「発光し始めた?!」
海中の白い塊が白くうっすらと光を放ち始めた。
しかし、しばらくすると、その光りは消えてしまった。
「あれ、消えた‥‥‥」
それから約1時間後、白い塊が再び強い光りを放ち始めた。
「また発光し始めた。今度の輝きはすごい!」
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