第43話 奪還作戦?

 ジャピア王国は、オタマジャクシ型の巨大生物の本島への侵入を防いだ。その戦いで、メカパウンドがオタマジャクシ型の巨大生物に対して極めて有効ということが確認できたため、南山島の奪還作戦を検討していた。


 若干のダメージを受けたメカパウンド2番機は修復。

 さらにアルティア共和国から、メカパウンド1番機がジャピア王国へ輸送された。


 KM-29 メカパウンド1番機(アルティア共和国オリジナル)

 KM-30 メカパウンド2番機(ジャピア王国カスタム)


 2機のメカパウンドは基本的な性能は同じだが、レールガンの仕様だけが違っていた。

 1番機のレールガンは連射性能は低いが威力が大きい。

 2番機のレールガンは威力は小さいが連射性能が高い。

 1番機は8本首の巨大生物、2番機はオタマジャクシ型の巨大生物を対象として武装をチューニングしていた。

 どちらもシルバーがベースのカラーリングだが1番機はレッド、2番機はブルーの箇所があり一目で違いが分かる。


 巨大な格納庫へ2機のメカパウンドが立ち並ぶ。そのメカパウンド格納庫の一角へ南山島奪還作戦の司令部が設置された。


 司令部には、ジャピア王国からユウリ対策室長、ナオト少尉、ツムギ少尉など。アルティア共和国からフォーリア長官、ベルーガ大佐、ノックス中尉、ファイン少尉などの姿が見える。


「壮観だな。2番機の初陣の話を聞くと期待できそうだな」


 格納庫の片隅でメカパウンドを見上げながら、ノックス中尉がファイン少尉へ話しかける。


「そうですね。これならオタマジャクシ型の巨大生物の群れと8本首とも互角以上に戦えるかもしれませんね。ただ‥‥‥」


 ファイン少尉が不安そうな表情を見せる。


「ただ、どうした?」


「8本首が進化しなければ、です」


「まだ進化するというのか。まさか首が9本や10本になったりするのか」


「可能性はあると思います」


 ファイン少尉は、少し考えて話を切り出した。


「すみません。やはり私は先日、海中で見つけた白い塊の監視しに行ってきます」


「あの白い塊か。あれが何かは全くわかっていないんだろう?」


「そうですが、私はあの場所にあった白い塊がパウンドと関係があると思っています」


「確かに俺も期待はしている。あの白い塊に今のところ何の変化もない。行っても無駄ではないか?」


「そうかもしれません。でも私はあの白い塊がパウンドで、もうすぐ復活する、そんな気がして。私はパウンドが復活した時に側にいたいんです。そして、現状を伝えたい」


 ノックス中尉は黙り込みひとしきり考えたあと、ファイン少尉へ答えた。


「よし、わかった。ファイン少尉がここにいても出来ることは少ない。それに白い塊の監視任務を外されたわけではないからな。ベルーガ大佐には俺から言っておく。また一緒に怒られよう」


「ありがとうございます、ノックス中尉。これだって南山島を奪還するために必要なことのはずです。でもダメだったら一緒に怒られて下さいね」


「そうならないように期待しているぞ。俺はパウンドに関してファイン少尉の考えを最も信頼しているからな」


「ありがとうございます、ノックス中尉。白い塊の監視場所に着いたら連絡します」


 ファイン少尉はノックス中尉へお礼をいい、格納庫を後にした。


「私はパウンドが8本首を倒すために復活すると信じてる‥‥‥」


 ファイン少尉はそう呟き、海中で発見した巨大な白い塊の監視へと向かった。



 ◇



 その数日後。南山島奪還作戦が開始される日の朝、その異変は始まった。8本首の巨大生物が周囲にいるオタマジャクシ型の巨大生物を襲い、食べ始めたのだ。


 8つの大きな口を使い次々にオタマジャクシ型の巨大生物へ襲いかかる。周囲にいた無数のオタマジャクシ型の巨大生物を食べ尽した8本首の巨大生物は、その後、濃い黒いモヤに包まれた。


 その異様な光景は南山島を監視中のドローンに搭載されたカメラが捉えていた。8本首の巨大生物の異様な行動をモニターの映像で見ていた司令部は時間を繰り上げ南山島奪還作戦を発動した。


「8本首の異常な行動が確認された。8本首は今、黒いモヤに包まれ動きを止めている。8本首が何をする気かは分からないが、待つことはない。南山島奪還作戦、状況を開始する」


 アルティア共和国、ジャピア王国の連合軍総司令となったフォーリア長官が攻撃命令を発した。


 ジャピア王国の南山島。人類と暗黒巨大生物の決戦が始まろうとしている。



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