第41話 絶望の中?

 8本首、オタマジャクシ型の巨大生物に占拠されたジャピア王国の南山島。全ての灯りが消えているため、夜間は真っ黒な暗黒の島。



 ◇



 ジャピア王国に設置された巨大生物特別対策室では、ツムギ少尉がドローンを操縦して南山島の様子を監視していた。

 ドローンはアソジ山へ向けて飛行しながら、その道中にいるオタマジャクシ型の巨大生物をカメラに捉えていた。おびただしい数のオタマジャクシ型の巨大生物がモニターに映し出されている。


「南山島の様子はどうだ?」


「無数のオタマジャクシ型の巨大生物が活動しているわ」


 ナオト少尉が問いにツムギ少尉が返答する。

 ドローンはアソジ山の上空へ到着後、火球攻撃を警戒して少し離れた位置から8本首の巨大生物をカメラに捉える。モニターには、8本首の巨大生物の周辺にうごめくオタマジャクシ型の巨大生物も映っていた。


「相変わらずアソジ山に8本首がいるわ。どうしてなのか、8本首とオタマジャクシ型は争わないようね」


「ヤツらで争ってくれれば希望も持てるのにな。中央のアソジ山に8本首、オタマジャクシ型に島の各地を占拠されていてはどうしようもない」


「そうね、今日は少しでもオタマジャクシ型の生態を調べましょう」


 2人はそう言いながら、モニターに映る絶望的な様子を見つめる。


「ところでナオト少尉は、巨大生物パウンドがどうなったか知ってる?」


 今度はツムギ少尉がナオト少尉へ問いかける。


「パウンド? 昨日、ノックス中尉に聞いたけど、見失ったきりだと言っていたよ。毎日、調査艇で捜索しているらしい」


「そう、まだ見つからないのね。あんなに大きい生物なのに」


「不思議だよな。ファイン少尉がパウンド関連の情報を集めて分析しているそうだ。ノックス中尉は、その分析に期待していたよ」


「ファイン少尉、パウンドと最初に意志の疎通をした人ね」


「凄いよな。俺には真似できない。ノックス中尉が会話らしきことをしているのを見てもまだ信じられない」


「私も信じられないし、とても怖いわ。話をするなんてとんでもない。だけど、そのパウンドがいないと南山島を奪還できない気もする。怖いと思いながら頼るのは勝手だけれど」


「……パウンドの復活か、どこまで期待していいものか。そうだ、期待と言えばアルティア共和国と共同で新兵器を開発している噂を聞いたが、何か知っているか?」


「いえ、私もアルティア共和国と共同で新兵器を開発しているという噂だけ。こんな状況なのに私たちに出来ることが少なくて歯痒いわね」



 ◇



 ジャピア王国では、被害が拡大しないよう南山島の監視を続けていた。8本首の巨大生物については謎が多いが、現状ではオタマジャクシ型の巨大生物については、刺激を与えなければ群れを作ったまま大人しくいていることが判明していた。


「オタマジャクシ型は、大きな群れを形成してあまり動かないのは幸いね。このまま街への被害が拡大しないうちに南山島を取り戻したいわね」


 監視任務を続けながら、ツムギ少尉がナオト少尉へ話しかける。


「そうだな。避難した住民も苦労しているし、早くなんとかしないとな」


 2人が南山島の監視を続けているところへ、ユウリ室長から別室への呼び出しが入る。何か重要な案件があるということだ。


「2人ともご苦労。さっそくだが、これを見てくれ」


 そう言って、ユウリ室長は2人の前に一冊の資料を差し出した。

 その資料の表紙には、こう書かれていた。


 KM-30 メカパウンド2番機


「メカパウンド?! もしかして、アルティア共和国と共同で開発している新兵器とはこれですか?!」


 ナオト少尉が驚きの声をあげる。


「共同開発の話は知っていたか。そうだ、アルティア共和国のレーン博士が主導して開発したものだ。南山島が奪われたことにより完成が早まった」


「レーン博士と言えば、アルティア共和国における兵器開発での第一人者ですよね。巨大生物の研究もしているという。その博士が関わっているのですか」


 ツムギ少尉が驚き、確認をする。


「そうだ。アルティア共和国が収集したパウンドのデータから対巨大生物用決戦兵器として開発された。形状の理由など、いずれ話を聞く機会もあるだろう」


「はい。ところで表紙に2番機とありますが、もう1機あるのでしょうか?」


 ツムギ少尉が疑問を口にする。


「1番機はアルティア共和国が保有している。性能はほぼ同じだな。ここのメンバーには計画が進んでいることを伝えたかったのだが、アルティア共和国との政治的な都合もあり機密事項が多くてな」


「はい、わかっております。この資料は拝見しても?」


「もちろんだ。君たちからの情報も役に立っているぞ」


 ナオト少尉とツムギ少尉が資料を手にして、内容を確認する。


「体高30m、全長60m。パウンドよりかなり小さい」

「武装は電磁加速砲、通称レールガン。背中にある弾丸パックで補充」

「AIによるセミオートマ、搭乗者はなく遠隔操作」

「専用のドローン映像をAIが解析、相手についてのデータ量が増すほどに強くなる」

「開発中だった大型兵器をパウンドの身体情報を元に改良」


 資料を見たナオト少尉は、ユウリ室長へ質問をする。


「それで自分たちはなにをすれば良いでありますか」


「2人にはメカパウンドの眼になって貰いたい」


「眼、ですか?」


「ああ、君たち2人にはメカパウンド専用ドローンを操作してもらう。複数のドローンが撮影した映像をAIが解析、メカパウンドの動作をサポートする仕組みになっている。博士によるとデータの質と量が大事ということらしい、詳しいことは後で技術班に聞いてくれ」


「「はい。了解しました」」

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