第39話 決着した?

 暗黒8本首との戦いは、持久戦の様相になってきた。 


 ---------------スタミナ勝負だね。


《まだ大丈夫です》


 暗黒8本首は、どのぐらいの余裕があるのだろうか。蛇の顔を見ても無表情なので、全く分からない。


 慎重にいこうかと思っていたその時、上空にアルティア共和国のものと思われる爆撃機の編隊が見えてきた。

 人間のサポートだ。良いタイミングで来てくれた。


 ---------------ちょうど良いところだね。ちょっと休めるかも。


《そうですね。良かったです》


 僕らは、暗黒8本首から少しだけ距離をとる。それと同時に爆撃機からの攻撃が始まった。


 ズドオオオォォォォン!

 ズドオオオォォォォン!


 僕らがモフモフ島で初めて攻撃された時にも容赦なく降り注いだ貫通弾。ソフトボールをぶつけられたぐらい痛いやつだ。


 ---------------味方だと頼もしいね。


《今日も凄くたくさんですね》


 ニノの言う通り、アルティア共和国は今日もケチらず盛大に爆撃している。爆撃に見舞われた暗黒8本首は、爆炎に包まれた。周囲には黒煙が広がり、何も見えなくなっていく。


 しばらく見守っていると、黒煙が風に流されて、暗黒8本首の姿が再び現れる。黒焦げになってはいるが、まだモゾモゾと動いている。


《弱ってますね》


 ---------------そうだね、ツノで突っ込んで押し倒そう。


 僕らは頭から突っ込み、8本首の付け根辺りにツノを突き刺した。


『キッシャアアアアアア!!!!』


 ツノを突き刺された暗黒8本首は、刺された箇所からドクドクと体液を流して苦しそうにのたうっている。その暗黒8本首に対して、僕らは全体重をかけて踏みつける。何度か踏みつけるうちに暗黒8本首の動きが止まり、瞳の紅い光も消えていった。

 見た目は死んでいるようだが、黒煙とも黒い瘴気とも見分けのつかない黒いものが暗黒8本首を包んでいる。


 ---------------うーん、死んだのかな。


《どうでしょう。ピクリともしませんね》


 ---------------なんか心配だし、もう少し尻尾の炎で燃やしておこうか。


《それが良いですね》


 僕らは念のため、尻尾の炎で暗黒8本首を燃やしておいた。

 暗黒8本首は完全に真っ黒焦げだ。


 それを見たジャピア王国の軍隊が歓声をあげる。

 僕らの周囲で暗黒オタマジャクシを近づけないように頑張ってくれていたジャピア王国の陸上部隊の人たちだ。

 僕らの勝利を見て喜んでいる。


 ---------------ぜぇぜぇ、さすがにもういいかな。


《はぁ、はぁ。炎を出し過ぎましたね。立ってるのも辛いですね》


 ---------------本当にね。ちょっと横になろう。この後、暗黒オタマジャクシも倒さないといけないし。


《そうですね。まだそれもありますね》


 黒焦げの暗黒8本首から少し離れて、僕らはゴロンと横になった。

 ここで暗黒オタマジャクシの群れに襲われると困ってしまうが、ジャピア王国の軍隊が守ってくれている。

 人間との共闘なので安心だ。


 暗黒8本首と僕らの戦闘力は同じようなレベルだったと思うが、人間に敵対した暗黒8本首は真っ黒焦げになり死んでしまった。

 それに対して、人間と共闘した僕らは、寝れば回復できる程度のダメージだ。


 人間と共闘できていなければ僕らが真っ黒焦げでも不思議ではない。そんなことを思いながら暗黒8本首を眺めていたら、原形を留めていることが少し気になってきた。

 念のためバラバラにしておいた方がいいかもしれない。そんな気がした。


 ---------------少し休んだら後でバラバラにしようか。


《そうですね》


 僕らはバラバラにすることを後回しにした。

 まともに動けない状態だったとはいえ、これは僕らの油断だったのかもしれない。人間と共闘したせいで、本来ならニノに備わっていた野性の感覚がなくなってしまったのかもしれない。


 人間も追撃はせず、僕らと黒焦げになった暗黒8本首の周囲に集まってきた。暗黒オタマジャクシの掃討作戦を検討している。


 勝利したと思い込んだ僕らと人間は、暗黒8本首の周囲を包む黒いものが少し濃くなっていることに誰一人として、気がついていなかった。



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