第36話 不吉な兆候?
僕らは浅瀬で立ち上がり、暗黒オタマジャクシの群れを発見して、愕然としていた。海岸線が暗黒オタマジャクシにより黒く染まっている。
次々とジャピア王国へ上陸していく暗黒オタマジャクシ。
もぞもぞと海から陸へ上がり、陸上を這っていく。暗黒オタマジャクシが這いずった後は、黒い瘴気により腐ったように黒く変色している。
これは暗黒ヤドカリの時と同様だ。
すでに多くの住民は避難しているようだが、一部残っている住民をジャピア王国の軍隊が誘導している。
まだジャピア王国の軍隊による暗黒オタマジャクシへの攻撃は始まってはいないようだ。
《どうしましょうか?》
ニノが緊張した面持ちで僕に尋ねてきた。僕も予想外のことに混乱しているが、とりあえず放っておくわけにはいかない。
---------------街の状況が分からないから上陸は止めて、浅瀬にいる暗黒オタマジャクシだけでも倒していこう。
《そうですね、頑張りましょう》
ひとまず少しでも暗黒オタマジャクシの上陸を防ぐことにした。
そうしているうちにノックス中尉から状況の説明や指示があるだろう。
---------------まずは1番近くにいるアイツを倒そう!
僕らは海中と比べると陸上での動きは遅い。しかし、暗黒オタマジャクシの方が僕らよりさらに遅かった。これなら僕らでも先行している暗黒オタマジャクシに追いつくことが出来そうだ。
暗黒オタマジャクシに全力で近づき、尻尾での一撃を加える。
『ブッシャアアア!!!!!』
暗黒オタマジャクシが不気味な叫び声をあげる。陸上での一撃は、海中での攻撃より大きなダメージを与えることが出来るようだ。尻尾の一撃により動きが鈍くなった。
しかし。
『プシャァァァァァァッッッ!!!!』
暗黒オタマジャクシが大きな口から何かを吐いてきた。
深緑色のドロっとした粘着性のある液体だ。
---------------何これ?! キモッ!
かけられたところがピリピリと痛い。
しかし、耐えられないほどではないため、もう一撃を尻尾で加える。
『ブッシャアアア‥‥‥』
この一撃により、まずは1匹目の暗黒オタマジャクシを撃退した。すぐに2匹目といきたいが、その前に。
---------------何だか分からないピリピリする液体を海水で洗い流そう。
《そうですね。これは嫌ですね》
浅瀬でゴロゴロと身体を砂地に擦りつけつつ、海水で深緑色の液体を洗い流した。
---------------今回は浅瀬だったから良かったけど、陸地だと厄介だね。
《ピリピリして痛いし、気持ち悪いですね》
◇
僕らはどうすることが最善なのかよく分からずに、海岸線をウロウロしながら、暗黒オタマジャクシを追っていた。そんな中、近づいてきた洋上艦に乗艦中のノックス中尉から指示がきた。
「住民の避難が完了したので、上陸した暗黒オタマジャクシを追って倒して欲しい」
ツノモールス信号で返答する。
【分かりました】
引き続きノックス中尉からの要望がくる。
「ジャピア王国の陸上部隊も暗黒オタマジャクシの迎撃に入る。協力してくれ」
いよいよジャピア王国の軍隊も動き出したようだ。
僕らは周辺を見渡し、上陸していく暗黒オタマジャクシを追って倒すことにする。人間と意志の疎通が出来るようになっていて本当に良かった。そうでなければオロオロするだけで、何も役に立たなかったかもしれない。
暗黒オタマジャクシを追いかけてジャピア王国へ上陸する。
僕らにとって初めての土地だ。多くの住宅が立ち並び、綺麗に整備された街が見える。周囲には美しい河川や田畑も見え、その先には南山島の象徴と言われる巨大な火山が、独立峰らしい美しい姿でそびえ立っていた。
僕らは出来るだけ住宅地を避けて暗黒オタマジャクシを追っていく。僕らも暗黒オタマジャクシも動きが遅くもっさりしている。
《追いつくの大変ですね》
---------------陸上は辛いね。追いつけば割と簡単に倒せるのに。
僕らは追いつくのに時間がかかってしまい、なかなか暗黒オタマジャクシを倒すことができないでいた。
そんな中、前方で黒煙が上がる。ジャピア王国の軍隊が暗黒オタマジャクシに対して攻撃を開始したようだ。
---------------僕らも頑張って倒そう。
《はい》
僕らも頑張って周囲にいる暗黒オタマジャクシを倒していく。
と、その時だった。
遥か前方にそびえ立つ独立峰、南山島の象徴と言われる巨大な火山が噴火した。霞んでいて見えづらいが、それでもマグマや噴煙が上がっていることが見てとれる。
---------------うわぁ、こんな時に最悪だ。どうするんだろう。
《大変ですね》
南山島のほぼ中央にある巨大な火山が不吉にも噴火した。
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