第35話 巨大生物の群れ?
暗黒オタマジャクシ、1匹だけかと思ったら2匹いた。僕らは2匹の暗黒オタマジャクシから交互に噛みつかれる。1匹なら余裕だと思ったのに、2匹になると勝手が違う。とても鬱陶しい。
---------------噛みつかれてもそれほどダメージはないし、片方は放置して相手を1匹に絞ろうか。
《はい。それなら目の前にいる方に集中して攻撃しますか?》
---------------そうだね、目の前にいる方に全力でいこう。
《はい》
僕らは目の前の暗黒オタマジャクシ1匹に対して、全力であたることにした。今、僕らに噛みついている1匹は無視。目の前にいるもう1匹の暗黒オタマジャクシに対して尻尾を振り回して叩きつける。
『ブッシャアアア!!』
尻尾で叩きつけられた暗黒オタマジャクシは、メリメリッと身体が折れ曲がる。自分でやって言うのも変だが、見るからに痛そうだ。
僕らに噛みついていた暗黒オタマジャクシの方も、僕らが回転した勢いに負けて振り飛ばされた。ちょうど良かった。
しかし、振り飛ばされた方の暗黒オタマジャクシは、そのまま陸地を目指して進み始めた。
---------------あっ、振り飛ばされた方が陸地へ行ってしまう。急いで目の前のヤツを倒さないと!
《はい!》
目の前にいる暗黒オタマジャクシを再び尻尾で叩きつける。暗黒オタマジャクシも反抗して噛みつきにくるが、その威力は半減している。あと少しで倒せそうだ。
すっかり弱った暗黒オタマジャクシにトドメとばかりに頭から突っ込みツノを突き刺す。その一撃で暗黒オタマジャクシの紅い眼の光りが消え、完全に力を感じなくなった。まずは1匹目の暗黒オタマジャクシを倒すことができた。
その間にもう1匹の暗黒オタマジャクシは、遠くまで行ってしまったようだ。すでに視界から消えている。急がなければ上陸を許してしまう。
僕らは急いで暗黒オタマジャクシを追って浅瀬へ向かった。
浅瀬へ到着した僕らは、暗黒オタマジャクシの位置を確認するために立ち上がり、海面から頭を出して周囲を見回す。
そこには、僕らの想像とは全く違う光景が広がっていた。
海岸線に見えたもの、それは無数の黒い物体。暗黒オタマジャクシの群れだ。
僕らが追いかけていた1匹だけではない。何匹もの暗黒オタマジャクシが上陸を目指している。
その中で何匹かの暗黒オタマジャクシについては上陸を果たし、海岸線にある街を今まさに襲おうとしていた。
◇
ジャピア王国、巨大生物特別対策室にて。
「黒いモヤがかかった巨大生物、1匹ではないのか?! こんなに接近されるとは、索敵は何をやっていたんだ?!」
巨大生物特別対策室が設置された部屋に入室したユウリ室長が声を荒げる。ユウリ室長は現職の防衛大臣でもある。コネもなく一からのし上がってきたキレ者だ。
「はい、申し訳ございません。ソナーへの反応がなく深海のため発見が難しい上に索敵艦の数も少なく‥‥‥先ほど複数匹の巨大生物の存在を初めて確認したところでありました」
ナオト少尉がユウリ室長へ返答する。
「そうか、現状の索敵艦の数では無理はないが‥‥‥だとしても仕方ないではすまない問題だな。それで被害状況はどうなっている?」
ユウリ室長の状況確認が続く。
「はい。現在、南山島の南海岸に無数のオタマジャクシ型の巨大生物が確認され、10匹以上に上陸されています。まだ被害は報告されていませんが、海岸線の街は危うい状況です」
ナオト少尉が現在把握している状況を報告、2人の会話が続く。
「アルティア共和国の軍隊とパウンドという巨大生物は、こちらへ到着しているのか?」
「はい。すでに到着しております。巡洋艦に乗艦しているノックス中尉と連携して対処中であります」
「そうか、分かった。ナオト少尉はノックス中尉と引き続き連携してくれ。それから、今、首相から自衛軍の出撃許可が出た。自衛軍との連携はツムギ少尉を中心に頼むぞ」
「「了解しました」」
「巨大生物特別対策室の諸君、これから大変だと思うが、自分たちの任務を全うしてくれ。期待している」
ユウリ室長は最後にそう声をかけ、足早に部屋を出た。
◇
そして、オタマジャクシ型巨大生物に襲われたジャピア王国の南山島には、緊急巨大生物警報が発表された。
南地区では、けたたましくサイレンが鳴り響き、避難を促す緊急放送が流れ続けた。
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