第34話 巨大生物特別対策室?

 アルティア共和国の同盟国であるジャピア王国。

 ジャピア王国はアルティア共和国の北東にあり、3つの大きな島から成り立っている島国である。

 3つの島は、最大の面積で首都のある本島、本島の北に位置する北海島、本島の南に位置する南山島とそれぞれ呼ばれている。


 その南山島の近海で黒い瘴気を纏う巨大生物がジャピア王国の索敵艦により確認された。

 黒い瘴気を纏う巨大生物が確認されたことにより、ジャピア王国は『巨大生物特別対策室』を設置した。



 ◇



 ジャピア王国『巨大生物特別対策室』にて。

 モニターを2人の軍人が見つめている。そのモニターには、黒い巨大なモヤのような塊が海中を進んでいる様子が映し出されていた。索敵艦が撮影した映像だ。


「これは‥‥‥この黒いモヤのようなものは、先日アルティア共和国を襲ったヤドカリ型の巨大生物と同じものかしら?」 


 モニターを見ながら1人の女性軍人が呟く。呟いたのはツムギ少尉。

 ツムギ少尉は自衛軍に所属し、ドローンを使用しての情報収集を得意としている。自衛軍から巨大生物特別対策室に抜擢された優秀な軍人だ。


「海中の映像だから分かり難いが、そう見えるな。それによく見ると、黒いモヤから手足と尻尾がぼんやりと見えるぞ。ほら、ここ」


 隣にいるナオト少尉がツムギ少尉へモニターを指差しながら話しかける。ナオト少尉も自衛軍に所属し、ツムギ少尉と共に情報収集や索敵を行う男性軍人だ。ツムギ少尉とは軍学校の同期である。


「本当、小さな手が見えるわね。それから小さな手に比べると大きな足と尻尾‥‥‥形状はオタマジャクシみたい」


 ツムギ少尉がナオト少尉の指差す先を見て感想を述べる。


「あ、ここを見て。ここにも黒いモヤが見えるわよ」


 続いてツムギ少尉のモニターを指差した箇所には、別の黒いモヤが映っていた。


「もしかして黒いモヤの巨大生物は1匹だけではないのか。すぐにユウリ室長へ報告しなければ!」



 ◇



 ツムギ少尉とナオト少尉がモニターを見るのと同時刻。僕らは洋上艦に先導されジャピア王国、南山島の近海に到着した。海岸まで数キロ程と言ったところだ。


《モフモフ島と違って大きな島ですね》


 ニノが島を見た感想を言う。


 ---------------島っていうか大陸みたいなもんだよね。ファイン少尉によると、この島に1000万人が住んでるって言ってたしね。


《たくさんの人間がいますね。私たちは世界中で1匹だけですよ》


 ----------------忘れてたけどそうだったね。僕らが1000万いたら、それはそれで嫌だけど。


 呑気に話をしていると、先導している洋上艦へ乗艦しているノックス中尉から指令がきた。僕らに先発して欲しいということだ。


 ----------------なるほど、僕らが先陣か。アルティア共和国の防衛軍はこちらへ向かっている途中で、ジャピア王国の軍隊は国会の承認が得られたら出動してくる、と。自分の国が危ないんだから早く来て欲しいよね。


《よく分かりませんが、私たちだけで倒しちゃいましょう》


 ---------------そうだね、何とか頑張ってみるか。よし、言われた地点へ向かうとしよう!


《はい。行きましょう!》



 ◇



 ノックス中尉に指定された海の底。深海のため、光が届かず暗闇が広がっている。


 ---------------ここら辺のはずだよね。ニノ、何かいる?


《真っ暗でよくわかりませんね。ツノ、光らせますね》


 真ん中のツノを光らせて、ぼやっと辺りを明るく照らす。

 照らした光の中に底砂を巻き上げながら陸地へ向かっている黒いモヤを発見した。


 ---------------あれか。


《それほど大きくはないですね。弱そうです》


 ---------------確かに海中だとあまり怖くないね。近づいてみよう。


 近寄ってよく見ると、かなり気持ちが悪い生物だった。

 オタマジャクシを大きくしたような身体に黒いモヤ、身体の半分を占める巨大な頭部、その頭部にある大きな口、黒い身体に紅い輝く瞳は一際目立つ。


 ---------------気持ち悪いね。あの黒いモヤモヤは暗黒ヤドカリと同じもの?


《同じです。倒した方が良いと思います》


 ---------------そっか。暗黒オタマジャクシってところかな。倒しにいくよ!


《はい》


 まずは尻尾で叩きつけてみる。


『ブッシャアアア!!!』


 暗黒オタマジャクシが大きな口を開けて不気味な音を出した。

 ダメージを受けた暗黒オタマジャクシは、身体をくねらせながら僕らから距離をとる。もしかして僕らと戦わずに陸地まで逃げるつもりか。


 見逃すわけにはいかないので、暗黒オタマジャクシの進行方向へ周り込む。海中での動きは、暗黒オタマジャクシより僕らの方が上だ。


 ---------------逃がすわけにはいかないね。もう一度、尻尾で攻撃しよう。


《はい。いきます!》


 再び尻尾で叩きつける。


『ブッシャアアア!!!』


 暗黒オタマジャクシが苦しそうにもがいている。

 これなら余裕で倒せそうだと思ったのだが、首筋を別の暗黒オタマジャクシに噛みつかれた。

 暗黒オタマジャクシ、1匹だけではないのか?!




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