第32話 どうなる大統領?
大統領選挙での応援演説を引き受けた。
---------------引き受けたのはいいけど、緊張してきた。
《大丈夫ですよ》
確かにファイン少尉からの依頼内容は簡単だった。
ファイン少尉が言うには。
「パウンドさんは、挨拶を2回ずつ言ってもらえれば大丈夫です。ボワットモワ大統領派でパウンドさん好きの政治家さんがパウンドさんの挨拶を聞いて、その意訳として色々とお話しをすることになっています。その政治家さんの意訳はこんな感じです」
僕ら好きの政治家さんが意訳として、話してくれる内容がこうだ。
『巨大生物のパウンドです、初めまして。皆さんにお会いできて嬉しいです。島での生活を認めてくれてありがとうございます。他の巨大生物も人間と争わないように協力します。トムベーク氏の言う殲滅はやめてほしいです。そうならないようにボワットモワ大統領を応援します』
3種類しかない挨拶をどう意訳したらこうなるのだろうか。気になって確認してみるとこういうことらしい。
『ゴガォォン!』(こんにちは)
巨大生物のパウンドです、初めまして。
『ゴガォォン!』(こんにちは)
皆さんにお会いできて嬉しいです。
『ピヤアアアン!』(ありがとう)
島での生活を認めてくれてありがとうございます。
『ピヤアアアン!』(ありがとう)
他の巨大生物も人間と争わないように協力します。
『グルグガガアアン!』(やめなさい)
トムベーク氏の言う殲滅はやめてほしいです。
『グルグガガアアン!』(やめなさい)
そうならないようにボワットモワ大統領を応援します。
僕らの意に反した内容ではないので僕らとしては問題ないが、かなり言葉が盛られているような気がする。これはセーフなのだろうか。
僕らにはよく分からないので、政治家さんたちの判断にお任せすることにした。それ以外にすることは当日の雰囲気で尻尾を可愛く振ってくれとのことだった。
◇
応援演説の当日。
洋上艦に先導されて暗黒ヤドカリと戦った浜辺へ付近へ到着。
浅瀬に立ち上がり陸上の様子を眺めていた。
----------------たくさん人が集まってるね。
《凄い人ですね。数えきれません》
---------------怖くはないのかな。
《楽しそうですよ》
僕らを気に入ってくれていそうな子供を連れた家族連れ。
難しそうな顔をした老夫婦。
熱心に大統領を応援している中年おじさん。
お祭り気分で楽しそうな若者。
パウンド帰れ! という看板を持った集団。
---------------おおう、当然だけど反対派もいるね。
《こっち見てますね》
---------------たくさん人いるし、尻尾を振って挨拶しておこう。
尻尾をフリフリ。
それを見た観衆が大きな歓声が上がる。
---------------おお、うけた。
《喜んでますよ》
僕らが愛想を振りまいていると、ボワットモワ大統領が現れた。
イケメンで体格もよくカッコいい。そして何よりオーラが凄い。
僕らが飲み込まれてしまいそうな迫力がある。
---------------凄そうな人だ。
《そうですね。人間なのに強そうです》
そんなボワットモワ大統領の演説が始まった。
そして演説が終わると大歓声だ。
「「「「わあああああ!!!」」」」
僕らが応援する必要があるのだろうかと思うほど、集まった観衆は盛り上がっている。ボワットモワ大統領の演説が一旦終わると、次は僕らの出番となる。
僕らなどの巨大生物が好きな政治家さんの話が始まった。
巨大生物好きな政治家さんの話が一旦止まると、ファイン少尉から僕らに向かって合図がきた。
いよいよ出番だ。
『ゴガォォン!』(こんにちは)
『ゴガォォォン!』(こんにちは)
まずは『ゴガォォォン!』(こんにちは)を2回。少し変化をつけて発音してみた。
それを聞いた巨大生物好きな政治家さんが意訳を話し出す。
「巨大生物のパウンドです、初めまして。皆さんにお会いできて嬉しいです」
巨大生物好きな政治家さんの話が一区切りした。ここで再び僕らの出番だ。
『ピヤアアアン!』(ありがとう)
『ピヤァァアン!』(ありがとう)
僕らの声を聞いて、巨大生物好きな政治家さんの意訳が再開する。
「島での生活を認めてくれてありがとうございます。他の巨大生物も人間と争わないように協力します」
巨大生物好きな政治家さんと僕らが交互に話すパフォーマンスが受けて、観衆から大歓声が上がる。
意思の疎通が出来ていることに驚いている。
観衆が驚いたところでダメ押しに最後の挨拶をする。
『グルグガガアアン!』(やめなさい)
『グルグガガアアン!』(やめなさい)
最後にそれを巨大生物好きな政治家さんが意訳をして完了だ。
「トムベーク氏の言う殲滅はやめてほしいです。そうならないようにボワットモワ大統領を応援します」
「「「「うおおおおおおおお!!!!!!!」」」」
凄く受けてる! ボワットモワ大統領の演説より歓声が大きい。大成功だ。
さすが大統領のマシーンと言われる側近たちが考えたパフォーマンス。巨大生物好きな政治家さんの上手い話術と相まって大好評のようだ。
良い雰囲気なので出来るだけ可愛く尻尾を振ってみる。また歓声が上がった。
ちなみに予定外に鳴き声を発したり、尻尾から炎を出したり、ツノモールス信号は控えるように言われている。
大統領マシーンによる緻密な計算があるらしい。
政治家さんの話がしばらく続いた後、初めての応援演説が終了した。後で聞いたのだが、ボワットモワ大統領陣営は今回の結果に満足したとのことだった。
僕らの出番はあと2回。
応援演説を成功させて、ボワットモワ大統領の逆転勝利を願うのみだ。
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