第31話 再び大ピンチ?

「来週からアルティア共和国、第52代大統領を決める選挙戦が始まります。現職の大統領ボワットモワ氏、対抗する新人トムベーク氏。今回の選挙はこの2人の争いとなります。両者、政策の違いは多々ありますが、その中で1番の大きな違いは巨大生物への対応となります」


 巨大生物への対応?! これは嫌な予感がする。

 引き続き、ニュースを視聴する。


「ボワットモワ氏は巨大生物との共存が国にとって利益が大きいと主張しています。巨大生物へ対抗して軍備を拡大するより、経済対策へ予算を集中して投入した方が良いという考えからです」


 なるほど、今の大統領は巨大生物を容認派なのか。

 散々、巨大ミサイルなどで攻撃された気もするけれど、アレでもマシだったのか。


 でも確かに暗黒ヤドカリ戦以降はモフモフ島にいても攻撃されなくなったし、今の大統領のおかげなのかもしれない。


 モニターに映るニュースは、まだ続く。


「対するトムベーク氏は、巨大生物は殲滅させた方が良いと主張しています。巨大イカや巨大エビは食用が可能、巨大生物の生息圏へも人類が進出すれば経済的にもより発展が可能だとの考えです」


 ---------------ぶっ!!! 殲滅だって?!


《また攻撃されてしまうのですか》


 このトムベーク氏が大統領になったらヤバ過ぎる。

 せっかく平和に暮らせるようになったのに。


 引き続きニュースを視聴する。それによると、アルティア共和国の国民も巨大生物に対する意見は様々なようだ。

 街を襲った暗黒ヤドカリとパウンドを同一視するのか、しないのか。

 巨大生物のせいで被害が出ていることは事実だが、そもそも巨大生物を殲滅することなどできるのか。

 住む地域や職業、色々な要素があり考え方も一様ではない。


 そして。


「現在の支持率は30:70、トムベーク氏が大きくリードしています。しかし、まだまだ結果は分かりません。これから1ヶ月間にわたる選挙戦が重要です」


 最後に女性アナウンサーから締めのコメントがあり、ニュースが終わった。


 ---------------ニノ、僕らに出来ることはないけど、大ピンチだよ。


《そうですね。どうしましょうか》


 ---------------とりあえずファイン少尉からの連絡を待とうか。


 モフモフ島でのんびり暮らせるようになったかと思ったが、そう簡単にはいかなかった。

 やはり巨大生物と人間が共存することは難しいようだ。



 ◇



 翌日、ファイン少尉とノックス中尉がモフモフ島にやってきた。

 ファイン少尉が困ったように話を始める。


「大統領選挙のニュース、見てもらえましたか。パウンドさんにとても影響があるんです。ボワットモワ大統領が勝てば問題ないけれど、トムベーク氏が勝ったらパウンドさんがここにいられるか分かりません。巨大生物防衛軍としてはボワットモワ大統領を支持していますが、国の正規軍はトムベーク氏を応援しています」


 ノックス中尉が話を続ける。


「軍産複合体がな。国家間の戦争がないから、巨大生物を相手に戦争したい奴らがいるんだよ」


 そんな理由で僕らは殺されてしまうのか。


【なんとかなりませんか】


 僕らはツノモールス信号で2人へ問いかけた。

 ファイン少尉が答える。


「私たちに出来ることは限られていますが、その中で防衛軍としては巨大生物が安全ということを示したいと考えています。やはり巨大生物の被害にあった人も多いから、その人たちに少しでも安心してもらいたい。それでパウンドさんに協力してもらいたいことがあって今日は来ました」


 ノックス中尉が続く。


「そうだ。俺たちは相棒パウンドに頼みがあるんだよ。頼みというのは他でもない、ボワットモワ大統領を応援してはくれないか。相棒パウンドにボワットモワ大統領の応援演説を頼みたい」


 僕らが大統領の応援演説?! 本気で言っているのだろうか。


【本気ですか】


「パウンドさん、本気ですよ。先日の知能テストの結果を見て、これなら大丈夫だと防衛軍とボワットモワ大統領の側近チームで計画を立てました」


「あとは相棒パウンドがこの話を受けてくれればさっそく準備に入るのだが、どうだ? 頼むよ」


 具体的に何をするのか分からないが、ファイン少尉とノックス中尉なら信用していいだろう。何もしないより巨大生物に友好的なボワットモワ大統領を応援したい。


 ---------------やってみても良いかなと思うけど、ニノはどう?


《私もやってみたいです》


 ----------------決まりだね。応援演説やってみよう。


 ということで、ファイン少尉とノックス中尉へ返事をする。


【応援演説やってみます】








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る