第30話 ご褒美に?
今日はいくつかの任務をこなしたご褒美と防衛軍への歓迎会ということで、ファイン少尉やノックス中尉たちがお祝いをしてくれることになっている。
《楽しみですね》
ニノが朝からソワソワしている。ニノは人間の話を聞くのが好きらしい。
---------------うん、楽しみだね。みんなが来る前に自分たちの食糧を確保しに行こうか。
お祝いしてくれると言っても僕らの食糧を人間が用意できるわけはないので自分で用意する。
《そうですね。エビとイカが食べたいです》
---------------エビとイカいいね。そうしよう。12時までに戻ってこないとね。
モニターにカレンダーと時刻が表示されて日時が分かるようになっていた。基本的に何の予定もないのだが、日時が分かると何となく安心できる。
採れたての巨大エビと巨大イカを確保して、約束の12時を待つ。
すると12時10分前に何やら大きな輸送船が到着した。
《大きい船が来ましたよ! なんでしょうね?》
ニノの落ち着きが全くない。
---------------なんだろう。荷物が満載だね。
何が始まるのか分からないので島に上陸済みのファイン少尉に質問してみる。ツノモールス信号はとても便利だ。
【あれは何ですか】
ファイン少尉がツノモールス信号に気がついて返事をくれる。
「パウンドさん用のバーベキューソースとお酒ですよ」
なんと! 僕ら用のバーベキューソースにお酒とは!
少し前に【味を付けて食べてみたい】【美味しそうなお酒】などと言ったことを覚えていてくれた。
《凄く楽しみですね! お姉さんはやっぱり良い人ですね!》
ニノのテンションが今まで見たことがないほど上がっている。
居ても立ってもいられないようだ。ウキウキのニノがとても可愛い。
そういう僕のテンションも爆上がりだ。
---------------バーベキューにお酒付き。考えただけで幸せだ。
ファイン少尉たちにお礼をしなくては。
『ピヤアアアン!』(ありがとう)
挨拶に反応してファイン少尉やノックス中尉、他にもたくさんの防衛軍の皆さんが手を振ってくれている。
こんな日が来るとはとても嬉しい。
さっそくバーベキューを開始する。
巨大イカと巨大エビを尻尾の炎(弱火)で、こんがりと焼く。
そこへ防衛軍の皆さんが大型ヘリを使って大量のバーベキューソースをかけてくれた。
とても美味しそうな仕上がりだ。
【いただきます】
ツノモールス信号で食事前の挨拶をしてからガブリと頂く。
---------------美味い。
《美味しい! 美味しいですね!!》
ニノも大絶賛だ。これは美味い。
巨大生物用に塩分は控えめにしてくれたらしい。防衛軍の優しさだ。
続いてはお酒の番。
輸送船から巨大なポンプで放水ならぬ放酒をしてくれる。
僕らは大きく口を開けて放出されたお酒を受け止め飲み干した。
----------------旨い! これは薄めのウイスキーかな。飲みやすい。
《これがお酒ですか。変わった飲み物ですね》
お酒を飲んでしばらくすると、ニノの顔が赤らんできた。
《ぽわーっとします》
ニノがふらふらしている。ほんのり赤くふわふわしているニノがとても可愛い。
と思ったのだが。
《ほわぁ、眠くなってきました》
---------------ニノ、寝たらダメ!!!
ニノが寝てしまうと僕だけではシャキッと身体を動かせない。僕の叫びも虚しく、ニノはあっさりと寝てしまう。ニノを起こしたいのだが、ニノに触れることはできないので、これ以上はどうしようもない。
仕方ないのでゴロンと横になり、防衛軍の皆さんが隣の島でバーベキューを楽しんでいる姿を寂しく眺める。
僕も話に加わりたいのだが、ニノの通訳がないと何を話しているのかさっぱり分からない。巨大生物にお酒は厳禁だった。
《すぅぅ、すぅぅ、スヤァ》
そんな僕の隣でニノは幸せそうな顔で眠っていた。
◇
今日は巨大生物を追い払う任務もなく、モフモフ島でのんびりしている。
---------------今日はファイン少尉からモニターでニュースを見るように言われていたよね。
《そろそろ時間ですね》
ファイン少尉から言われた通りにモニターを見ていると、アルティア共和国、大統領選のニュースが流れ出した。
---------------大統領選があるんだ。
《大統領は偉い人間ですよね》
---------------ファイン少尉たちの国の代表だね。
《何か関係があるのですか》
---------------ニュースを見てということは何かあるんだろうね。見てみよう。
モニターでファイン少尉たちの国アルティア共和国のニュースを視聴する。女性アナウンサーが話し始めた。
「来週からアルティア共和国、第52代大統領を決める選挙戦が始まります。現職の大統領ボワットモワ氏、対抗する新人トムベーク氏。今回の選挙はこの2人の争いとなります。両者、政策の違いは多々ありますが、その中で1番大きな違いは巨大生物への対応についてとなります」
巨大生物への対応?! これは嫌な予感がする。
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