第29話 テストされる?
最初の任務で多数の巨大エビを北部海域から追いやった。
その後も何度か北部海域で巨大生物が現れたため、僕らは北部海域へ出動し現れた巨大生物を南東へと追いやっていた。
ファイン少尉によると最近、北部海域で巨大生物の動きが活発らしい。理由は何だろう? 季節的なものでもあるのだろうか。
そんな中、ファイン少尉からの新たな指令が届いた。今までは僕らを見れば逃げていく弱めの巨大生物ばかりだったのだが、ついに大物が現れた。
「巨大ヤドカリが本土へかなり近づいています。追い返して下さい」
巨大ヤドカリ。僕ら以上の質量があり戦ったとしても勝てるかは分からない大物だ。とはいえ、以前戦った暗黒ヤドカリほど怖くはないので、任務を引き受けることにした。
【分かりました。やってみます】
もし苦戦したとしても人間のサポートもあることだし、なんとかなるだろう。
---------------ニノ、大変そうだけど頑張ろうね。
《大丈夫ですよ》
ニノは問題ないと思っているようだ。心強い。
◇
洋上艦に先導されて巨大ヤドカリのいる現場へ到着、海中へと潜る。するとニノがすぐに巨大ヤドカリを発見した。
《いましたよ》
---------------やっぱりデカいね。
海中を大陸方向へ進んで行く1匹の巨大ヤドカリがいる。
一見したところ僕らよりも一回りほど大きい。これは強そうだ。
少し怖いが、僕らは巨大ヤドカリの進行を塞ぐように立ちはだかってみた。
-------------どうなるかな?
《止まりましたね》
僕らを見て巨大ヤドカリは歩みを止めた。
---------------このまま引き返してくれるといいね。
巨大ヤドカリと対峙してどのぐらいの時間が経っただろう。
巨大ヤドカリは全くその場を動かない。
進むわけでもなければ戻るわけでもない。ジッとしている。
---------------全く動かないね。何を考えているんだろうか。
《よく分かりませんけど、たぶん何も考えていませんよ》
---------------あ、頭を引っ込めて殻に収まった。
《飽きたんですかね》
---------------仕方ない。ゴロゴロと押してみようか。
《やってみましょう》
殻に収まった巨大ヤドカリをゴロゴロと押して東へ運んだ。
巨大ヤドカリは反抗することもなく殻に収まっていた。
---------------今回も無事に完了だね。
《結局、大丈夫でしたね》
僕らに巨大ヤドカリの考えていることなどわかる気はしないので、穏便に解決して良かったと素直に喜ぶことにした。
◇
「知能テストを受けてもらえますか?」
ファイン少尉が突然、知能テストを受けて欲しいと言ってきた。
知能テストか‥‥‥元人間として恥ずかしい結果は残したくない。
迷っていると。
《受けましょう。第一の脳〈あるじ〉なら良い結果になりますよ》
ニノが無邪気にプレッシャーをかけてくる。
---------------そ、そうかなぁ。どうだろうなぁ。
僕がぐずぐず迷っていると、今度はファイン少尉からの催促が。
「無理にとは言いませんが、凄く賢い巨大生物と評判になっているので」
僕らは賢い巨大生物と評判だったのか。
僕は異世界から転生してきた人間とはまだ伝えていなかった。どう説明して良いのか分からないし、今は危害を加えない巨大生物と思われているぐらいが気楽で良いかなと思っていた。
なので、巨大生物のわりに賢いという評判ぐらいは立っても不思議ではない。むしろ比較対象がカニ、エビ、イカ、ヤドカリ等なので、元人間としてはその辺の生物と同レベルの知能と思われている方が心外だ。
結局、断る理由も特にないので知能テストを受けることにした。
【分かりました】
僕の返事を見てファイン少尉がニッコリ微笑む。
「それでは明日、モニターを使ってお願いしますね。私がそちらへ行って準備します」
【はい】
そんなこんなで、僕らは知能テストを受けることになった。ニノは完全に他人事のようで、期待の目でこちらを見ている。
これはかなりのプレッシャーだ。
そして翌日、知能テストが始まった。
モニターに映し出された設問にツノモールス信号を使って答えていく。
それをファイン少尉が確認して、何やらメモを取っている。
休憩を挟みながら、かなりの設問に答えて知能テストが終了した。
結果発表は明後日だ。どうなるだろうか。
◇
結果発表の日がやってきた。ニノが凄くキラキラした目をしている。何がそんなに楽しみなのだろうか。
モニターに映るファイン少尉が封筒を開けて結果を言う。緊張の瞬間だ。
「凄いです。平均的な成人程度の知能がありました。軍ではこんな巨大生物がいるはずがない、この結果は何かの間違いではないのかと疑われている程ですよ」
【そうですか。ありがとうございます】
凄いと言われているが、元人間だし当然といえば当然だ。
とりあえず平均的な成人で本当に良かった。5歳児程度などと言われたら立ち直れない。
僕的には大満足の結果なのだが、何故だかニノが不満そうだ。
---------------ニノ、どうしたの?
《〈あるじ〉は平均なんですか。もっと凄いと思いますけど》
僕に対するニノの評価はそんなに高かったのか。
嬉しいけれど、平均的で十分だ。
---------------平均的で十分だよ。
《そうですか》
何故だか理由はわからないが平均以上だと思ってくれたニノの期待に応えられるようにしっかりしなくては。
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