第16話 巨大ミサイル?

 今日も海岸線でご挨拶。上空にはいつもの哨戒機が旋回している。


『ゴガォォン!』(こんにちは)


 しかし、人間からの挨拶はいつものようにミサイル攻撃。

 最近の流行りは爆撃よりミサイル攻撃だ。例によって確実に頭を狙ってくる。それに対して僕らは尻尾で防御しつつ、遺憾の意。


『グガオオオオン!」(やめなさい)


 いつもの流れだ。ミサイル攻撃も尻尾で迎撃出来るようになってきたし、ダメージはあまりない。人間からしたら困ったものだろう。


 そういえば今日は海岸にカメラマンとレポーターみたいな人がいる。大きな望遠レンズを付けたカメラを向けられている。


---------------あれはテレビ局かな?


《どうでしょうね?》


---------------緊張するね?


《そうですか》


 今日はカメラ映りを気にして気取って言ってみるとする。カメラ目線で言ってみよう。


『ゴガォォン!』(こんにちは)


 挨拶に併せて尻尾をフリフリ。上手く出来たと思うが、カメラ映りはどうだろう。

 巨大生物がたくさんいる世界なので巨大生物自体は珍しいものではないと思うのだが、頻繁に現れるので話題になっているのかもしれない。

 それっぽい専門家が『あの巨大生物は安全です』とか言って世論を誘導してはくれないだろうか。何という名前の国かは知らないけれど、国民の皆さんへ届いて欲しい。


 それとは別に一般人っぽい人々がスマホやカメラで録画している姿もちらほら見える。立ち入り禁止ではないのだろうか。

 この世界にも画像や動画投稿サイトとかあるのだろうか。あの巨大生物可愛い! とかいって保護の機運が高まって欲しい。

 一般の人々にもサービスしておくとしよう。


『ゴガォォン!』(こんにちは)


 そして、最も気になっているのは軍人らしきお姉さん率いる一団だ。4人チームでテキパキと作業を続けている。

 テレビ局や一般人と違ってキビキビと動き、いかにも監視しているといった雰囲気だ。

 軍人のお姉さんたちにも愛想よく挨拶しなければ。


『ゴガォォン!』(こんにちは)


 軍人のお姉さんたちは機材を使って何かをしている。よく見えないので、少し近づいてみるとしよう。

 しかし、少し近づいた途端、すぐさまミサイル攻撃をされてしまう。やはりこれ以上、近づいてはいけないようだ。


『グガオオオオン!」(やめなさい)


 遺憾の意を示しつつ、怖がらせたいわけではないので素直に退がる。そして、攻撃が止んだら感謝の気持ち。


『ピヤアアアン!』(ありがとう)


 この気持ち、軍人のお姉さんたちへ伝われ。





 そんなこんなで挨拶に通うこと6回目。日毎に一般人の観衆が増えている。安全性が伝わってきているのだろうか。それならば良いことだ。


---------------今日は何人いる?


《えっと、153人いますね。新記録ですね》


 ニノは野鳥の会の人より数えるのが早い。153人か。結構集まるものだ。爆撃やミサイル攻撃もあって危ないと思うのだが。

 しかし、多くの人々が集まってくれると挨拶のしがいもあるというものだ。


『ゴガォォン!』(こんにちは)


 今日は軍人のお姉さんたちと一緒に貫禄のあるオジサンがいる。上官だろうか。


---------------あのオジサンは見たことある?


《初めての人です》


 初めての人には丁寧に挨拶を。


『ゴガォォン!』(こんにちは)


 オジサンがこちらを凝視している。なんだろう。あのオジサンのおかげか今日は攻撃がないので、感謝の気持ちを。


『ピヤアアアン!』(ありがとう)


 今日は攻撃されなかったし、気分良く帰るとしよう。





 三日後、今日は挨拶の日だ。通算7回目になるだろうか。

 前回は観衆も多かったし、ミサイル攻撃もなかったし、いよいよ怖がられなくなってきたのかな。軍人のお姉さんが上官に話をしてくれたのかもしれない。


---------------今日も集まってるかな?


《いっぱいいて欲しいですね》


 恒例となった潜水艦からの探知とハラスメント攻撃を受けつつ、いつもの海岸線へ到着する。しかし、今日は海岸線に誰もいない。


《誰もいませんね》


---------------どうしたんだろう?


《不思議ですね》


 軍人のお姉さんたちも一般人の観衆もテレビ局の人たちも誰もいない。洋上艦の姿も見えず、凄く遠くに機影が一つ見えるだけ。

 なんだろう? これは何か嫌な予感がする。


---------------周囲を警戒しよう。


《あそこに何か見えます!》


 ニノが指を差した方向を見ると、陸地側はるか彼方の上空に何かが見える。


---------------あれミサイル?!


《すごく大きいですね》


 ニノは落ち着いているけど、このミサイルはヤバそうだ!

 今まで見たことがない大きさのミサイルが迫ってくる!

 ここでは海に潜って逃げることも出来ないので、巨大ミサイルに背を向けて尻尾で防御するぐらいしか対処方法が無さそうだ。

 考える間もなく、巨大ミサイルが迫ってくる!


---------------尻尾、最大火力!!!


《はい。いきまーす!!!》


ボッ!!!! ゴフアアアッッボボボボボッッ!!!


 尻尾から数十メートルの炎を噴き出し巨大ミサイルを迎撃する。尻尾の炎により巨大ミサイルは僕らの間近で大爆発する。

 一瞬うちに爆炎が燃え広がる。目が眩み何も見えない。爆音が空気を振動させ、爆炎で周囲が真っ赤に染まった後、辺りは黒煙に包まれる。


 もの凄い衝撃が伝わってきた。爆圧を背中に受けて、巨体の僕らでも吹き飛ばされた。ゴロンゴロンと浅瀬を転がった後、何とか這うように泳げる深さまで移動した。身体中が痛い。


---------------ニノ、大丈夫?


《は、はい。大丈夫です》


 ニノを見ると何だかヨレヨレでグッタリしている。本当に大丈夫なのか。今回の巨大ミサイルでは、僕よりニノがダメージを受けたようだ。


----------------ニノは休んでて。僕が泳いでみるよ。


《お願いします》


 僕一人ではノロノロとしか泳げないので何とか頑張って海流に乗り、その場を離れた。


 僕らに通常攻撃は効かないと考えて、違う攻撃の準備をしていたということか。残念ながら、軍人のお姉さんたちに気持ちは伝わっていなかった。


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