第12話 どうしよう?
モフモフ島での戦闘が嘘のように静かな海の底。
お昼過ぎ、太陽はすっかり高くまで昇っている。海底にもうっすら光が届き、水中はキラキラと美しい。
そんな中。
ガン! ガラッ! ガラガラッ!!
静寂を破るような物音がして、棲家にしている横穴の上部が崩れてくる。突然の音にびっくりして目が覚めた。
なにごとだ! 人間の攻撃か?!
こんな所まで人間は追ってきたのか?! なぜ見つかった?!
昨日は追ってくる気配はなかったのに。
《ごめんなさい》
---------------ん?
ニノが謝っている。なんだろう?
---------------どうしたの?
《寝起きにノビをして天井を崩してしまいました》
先ほどの音はそういうことか。人間に見つかって攻撃されたのかと思ったが、違うなら一安心。
しかし、これからずっと怖がりながら生活はしたくない。なんとか改善しなければ。今後の課題だ。
周りを見れば、すっかり明るくなっている。やはり身体にダメージがあったのか、こんな昼まで寝ていたのは初めてだ。
起きたばかりなのに『ぐううううう』という音が聞こえそうな程の空腹感。
《お腹が空きましたね》
---------------何か食べに東の海溝へ行こうか。
今後のことを考える前にまずは腹ごしらえだ。
◇
東の海溝。真っ暗な海の底。深海はいつも真っ暗だ。何度来ても深海の暗闇は慣れないし不気味に感じる。
ツノを点灯し、辺りを照らす。さっそく巨大エビを発見する。すぐに尻尾で攻撃、巨大エビを倒していただくことにする。
いつ来ても簡単に食事が出来るほど、この海溝には色々な巨大生物が生息している。もしかして人間を避けてここに棲みついたのか。
そういえば龍みたいな巨大な海蛇もいた。あんなに強そうな巨大生物でも人間を避けているのだろうか。人間は怖いから。
それならば僕もここの住民になればいいのだろうか。一つの答えではあるが、この暗闇は気が進まない。
もっと色々と検討してみよう。落ち着ける場所はないか、明日は一度行ったきりの南の海域へ行ってみよう。
◇
---------------今日は南の火山帯に行こうと思うけどどう? 怖い?
《怖くないですよ。ちょっと注意すれば大丈夫です》
なんと言う安心感。ニノに言われると怖くなくなってくる。行ってみよう。
---------------前にデカい亀がいた場所は避けよう。
《はい。亀、嫌いですか?》
---------------嫌いではないけど。
《でも近寄らないんですね》
触らぬ神に祟りなし。
---------------南の海域に島はないの?
《少し遠いですが、いくつかあったはずです。でも島には行ったことがないので詳しくないです》
---------------へーそうなんだ。とりあえず一番近い島に行ってみようか。
《わかりました。しっかり覚えますね》
◇
南に向け泳ぎ続け、いよいよ海底火山帯に入ってきた。この海域にもたくさんの巨大生物が生息している。
ということは、ここも人間が近寄らない海域ということなのか。
いつもの巨大ガニが歩いている。カニはどこにでもいるな。
龍のような巨大な海蛇、ここにもいるのか。
水深が浅いところも多いようだ。水中なので爆発的ではないが、マグマが噴き出しているところもある。
---------------そこのマグマに触れると、どうなるかな?
《火傷します。気をつけましょう》
さすがに『平気です』とは言ってくれないか。マグマの中を移動するというような芸当はできそうもない。
◇
《あとちょっとで島に着きます》
海上に頭を出して様子をうかがってみる。
---------------島ってあの火山島?
《そうです》
---------------モフモフ島とは全然違うね。
《そうですね。危なそうです》
現在も定期的に噴火しているのだろうか。草木が全く生えていない。いかにも溶岩が固まりました、という黒い岩場ばかりだ。
なんならまだ熱そうな場所さえある。煙、出てるし。
平和そうな島ならいいなと期待したが、これは上陸前からダメそうだと思わざるを得ない。
唯一の良い点は人間がいる気配は全くないことだ。人間はここには住めないだろう。僕が人間ならば住みたくはない。
とりあえず溶岩の冷めている場所から慎重に上陸してみる。
浅瀬に入り半身が海上に現れる。のそり、のそりと島に向かって歩いていく。泳げないと動きが一気に遅くなる。
すると、その時。
グワアッ! バッッシャアア! ズウウウウンン!
近くにあった巨大な岩からハサミのついた腕と複数の脚、それに小さな頭らしき物体が出現した。
---------------えっ、何? 怖っ!
ヤドカリのような形状をした巨大生物が現れた。普通のヤドカリであれば貝殻の部分が黒い巨大な岩といった感じの巨大生物だ。
周りの溶岩の黒い岩場に馴染んでいて発見するのが遅れてしまった。
《あれ強いですよ。この島にいるとは知りませんでした》
---------------そうなんだ。これ以上、近づくのはやめようか。
《それが良いですね》
見ると僕よりも一回りデカい。特に質量が凄そうだ。岩みたいな殻があるので、ダメージを与えることが出来るのか分からない。こんな相手と争うことは得策ではない。
お互いに牽制するように距離をとって対峙する。見合ったまま徐々に距離が離れていき、巨大ヤドカリは海中へと去って行った。
しかも最後はなかなか素早く歩いていた。僕らはヤドカリより歩くのが遅いのか。地味にショックだ。
◇
巨大ヤドカリとの遭遇で上陸をやめたくなってきたが、もう少しで地上なので浅瀬を頑張って歩いていく。
そしてついに上陸した。目の前には噴煙をあげた火山がそびえ立っている。
人間から攻撃された日、それ以来の地上。爆撃とミサイルのトラウマがよみがえる。周囲の状況を確認する。
すると、上空に何か巨大な物体が。また爆撃機?
いや違う、翼竜のような巨大生物?!
痛え!!
翼竜のような巨大生物が、いきなり突っついてきた。
なんだコイツは? 凶暴だな。初めて襲われた。
尻尾を使って追い払うが、翼竜のような巨大生物は上空を悠々と旋回している。
翼竜のような巨大生物は、旋回を止めて急降下、再び僕らを突っついてきた。
《鬱陶しいですね》
---------------これはウザいね。
僕らは尻尾の炎で応戦してみる。しかし、火山島に住むだけあって効き目なし。こいつ、天敵か。
今度は地上に降り立ち、翼を広げて威嚇してくる。目つきが悪く、睨んでくる。
---------------あいつに勝てるかな?
《負けることはありませんが、倒すのは大変そうです》
空を飛ぶ相手とは相性悪そうだし、仕方ない。
今日のところはこのぐらいにしてやる! ザコっぽいセリフを吐いて去るとしよう。
火山島に来てよく分かった。もっと色々な巨大生物に対抗出来るようにならなければ。
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