第10話 死ぬかも?
キャンプからしばらく経ったある日の朝。いつもの棲家。今日も朝までぐっすりと寝た。
---------------ニノ、おはよう。
《おはようございます》
---------------よく眠れた?
《はい。ぐっすりです》
ニノも寝ているとのことだが、僕が先に寝るまでいつも寝ない。にも関わらず、いつも先に起きているので、寝ている姿を見たことがない。
それでもいつも元気そうなので、しっかり休息は取れているのだろう。
昨日は北の海域で海流に流されるという新たな暇つぶしを見つけた。どこに流されるかわからないのが、なかなか楽しい。
ボケーっと海中を流されていたら、海上に船の影が見えたのですぐに海底まで潜り身を潜めて難を逃れた。どこに流れ着いたのかはよく分からなかったが、ニノに頼めばここに戻って来ることが出来るので安心だ。
◇
今日はモフモフ島へ遊びに行く日だ。このところ三日に一度は行ってる。通い過ぎかな。
---------------今日は晴れているし、モフモフ島でいいかな?
《もちろんです。楽しみにしてました》
いつものようにのんびりとモフモフ島へ向かう。
結構な距離があるので、そこそこ時間はかかるのだが、それもドライブのようなもの。ニノとおしゃべりしていれば楽しいし、あっという間だ。
---------------最近、モフモフの前と後ろの区別がつくようになったよ。
《今まで区別がつかなかったのですか》
---------------恥ずかしながら。性格もみんなちょっとずつ違う気がするね。
《そうですね。一体ずつ名前をつけますか》
---------------えっ、もしかしてニノは個体の判別ができるの?
《よく近寄ってくる子は、だいたい分かりますよ》
そうだったのか。僕なんかやっと前後の区別がつくようになったところだというのに。
たわいもない話をしているうちにモフモフ島へ到着する。
今日は一番大きな島に上陸するとしよう。少し歩くけど小さい山があり、山頂に行くと景色がいい。それにモフモフたちもたくさんいる。
西側の浅瀬から上陸し、のそのそと坂を登り山頂へ陣取る。尻尾の椅子に腰掛けのんびりすると、モフモフたちが元気に近寄ってくる。今日もいい触り心地だ。
やはりモフモフ島は晴れの日に限る。モフモフたちが日差しを浴びてフカフカだ。
---------------気持ちいいね。
《はい。とても気持ちいいです》
◇
しかし、それも束の間だった。快晴の空を眺めていると、何か飛んでくる物体を発見した。
あれはなんだろう? 飛行機?
疑問に思い、目を凝らして飛んでくる物体を見る。間違いない、飛行機だ。しかも爆撃機のような飛行機だ。まさかすでに人間に見つかっていたのか。
無数の爆撃機が編隊を組んで、僕らの上空にやって来た。
マズイ! これは非常にマズイ気がする。このところ地上で長居し過ぎたか。
---------------急いで海へ隠れよう。
《はい》
しかし逃げる間もなく、爆撃機が攻撃してきた。上空から黒い物体が向かってくる。
ドガアアア! ドガアアア!
爆弾だ! 背中に着弾、衝撃があり爆煙に包まれる。
ちょっとだけ痛い。というか、ちょっとだけ痛い程度で済むものなのか。
いや、僕らは大丈夫でも周りのモフモフたちは危ないのでは。モフモフたちは危険を察知して一斉に海の方へ逃げていく。その調子で早く逃げて。
狙いは僕らだろうから、しばらくここに留まってモフモフたちの盾になろう。爆撃が頭に直撃すると少しクラッとする。
ニノは大丈夫だろうか。
---------------ニノは大丈夫?
《大丈夫です》
ニノはいつも通りの表情で何も問題はなさそうだ。
空を覆い尽くすように無数の爆撃機が編隊を組んで上空を舞っている。一段と爆撃が激しくなる。爆弾の雨だ。次々に頭上に爆弾が降ってくる。
周囲の木々が燃えて火災が発生している。木々が燃えないようにこの島ではキャンプしなかったのに。酷い話だ。
二発、三発と連続して頭に直撃した。クラッとする。どうも頭を狙われているような気がする。上空からの攻撃なので、たまたまかもしれないのだが。
ものすごい爆煙に包まれて周りの様子が分からないが、モフモフたちは無事に海へ逃げ込めたかな。助かっていればいいけれど。
まだ気持ちに余裕があり、そんなことを思っていたその時だった。
ズドオオオォォォォン!
痛えええ!!!! 先程までとは違う種類の爆弾だ、貫通弾? ものすごく痛い。
最初の爆弾がテニスボールなら、今度の爆弾はソフトボールをぶつけられたぐらいに痛い。もっとも前世でボールをぶつけられたことはないけれど。とにかく頭に直撃したら相当のダメージがありそうだ。これはマズイ。
最初の爆弾より数自体は減ったのだが、強力な貫通弾が次々に降ってくる。そのうちの一つが頭に直撃した。直撃した一点への衝撃は別格でグラッと体勢が崩れてしまう。
どれだけのボール、いや爆撃を受けただろうか。ついに残弾が無くなったのか上空の爆撃機が去っていく。
爆撃が止み、周囲の爆煙が風に流され徐々に視界が開けてきた。周りを見渡すと木々は焼け焦げ、地面はエグれ地形がすっかり変わってしまっている。酷い有り様だ。
---------------終わったのかな。海岸へ急ごう。
《はい。急ぎましょう》
海岸へ向かって歩き始めるが、身体中がヒリヒリする。アザでも出来てしまったかな。もっともあれだけの爆撃を受けてアザぐらいで済むなら十分なのだが。
《また何か来ます》
海岸へ向かい歩き始めたばかりだというのにニノが何かを発見した。
今度の攻撃はミサイルだ! 爆撃が止んで人間からの攻撃は終わったのかと思ったのだが、そんなことはないようだ。
ズドオオオォォォン!
頭にミサイルが一発、直撃する。
痛ええええ!!!! またソフトボールクラスの衝撃だ。今度は確実に頭が狙われていることがよくわかる。野球で頭を狙ったらピッチャーは退場だよ。
さらに頭部へ複数発のミサイルが直撃する。正確無比のコントロールだ。きっちり頭に命中する。頭部への直撃により、クラクラして歩くのも困難になってきた。
ミサイルの波状攻撃が続く。頭を目掛けてひっきりなしにミサイルが飛んでくる。さっきの爆撃といい、このミサイルといい撃ちすぎだろう。税金の無駄遣い、血税の無駄遣いだ。
そんなことを考えている場合ではない。いよいよ、本気でヤバい気がする。頭がグワングワンして、立っているのもやっとになってきた。
このまま頭に直撃を食らい続けたらどうなるのか? さすがに意識を失うだろうか? 僕は第一の脳だけど、意識を失った場合に僕はどうなるんだ? 意識が戻ったとして、僕は元に戻れるのか?
---------------意識を失うと僕はどうなるの?
《わかりません。ごめんなさい》
なるほど。これは絶対にヤバイ。圧倒的にマズイ。もう気持ちに余裕が全くなくない。
一体いつまで続くんだ、このミサイル攻撃。頭ばかり狙いやがって。マジで殺しにきているな。それも当たり前か、こっちは正体不明の巨大生物なんだから。
殺しにきてるってことは、当然やり返してもいいんだよね。反撃される覚悟があるから攻撃しているんだよね。
よく見ると焼け焦げた木々の中には逃げ遅れた数匹のモフモフが真っ黒に焦げて倒れている。ニノはあの倒れているモフモフが誰だかわかるのかな。可愛いそうに。
僕もモフモフたちも人間に何もしてないだろう。一方的に攻撃してきやがって。
僕が完全にキレた頃、長かった攻撃がようやく止んだ。もうもうと立ち込めていた爆煙が風によって流されていく。
こちらのダメージの確認なのか、次の攻撃への準備なのか、一時的に攻撃が止んでいる。
その隙にはるか遠くにいる洋上艦隊の姿を確認した。
あいつらからの攻撃か。遠すぎて正確に数えることはできないが、結構な数が居そうだけれど。
---------------あれ全部、沈められる?
《どれだけいても余裕ですよ》
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