第8話 キャンプする?
毎日コツコツと周辺の探索を続けている。そうしている間に、この世界の生活にも慣れてきた。
先日はついに初の食事をした。
最初の頃はなかなか空腹にならなかったが、たくさん動くようになってエネルギーの消費が多くなり、ちょくちょく空腹になるようになったのだ。
最初の食事はニノお薦めの大ダコにした。
例の東の海溝の底へ行き、ツノを光らせて周囲を見渡す。
---------------大ダコいるかな
《数は少ないですけど、頑張って探しましょう》
どこまでも続く広い海溝だなと思いつつ、大ダコを探す。
エビ型の巨大生物は簡単に見つかるのだが、なかなか大ダコは見つからない。別にエビでも良いのだが、急いだところで他にやることはない。なので、今日一日は大ダコを探すつもりだ。
---------------またエビか。ここはエビばかりだね。
《エビがたくさんいる所にタコもよくいますよ。だからきっとタコもいます》
---------------もしかしたら動きまわらない方がいいのかも。
こちらが動きまわっていると警戒されるのかなと思い、エビがたくさんいる近くで身を隠してじっと大ダコが現るのを待つことにした。
しばらくエビを眺めながら気長に待っていると、エビを目指して上の方から大ダコがゆっくりと近づいてきた。
ついに初の獲物が目の前に。
巨大なタコではあるが、僕らに比べれば一回りほど小さい。ただ、動きは素早く8本脚に吸盤となかなか強そうに見える。しかし、ニノは僕らの方が余裕で強いと言っていた。それならば狩るか! と思うのだが、思うだけで狩りの方法は全く分からない。初回はニノにお任せだ。
--------------大ダコ来たね。ニノやっちゃって。
《はい。それじゃあいきますよ》
一瞬。大ダコを秒殺した。強い! 強すぎる!
倒し方はこうだ。隠れてじっとしていた状態から一気に加速し大ダコまでの距離をつめたところでくるりと反転、その勢いを利用して巨大な尻尾を叩きつける。その一撃で大ダコをKO。相手に何もさせずに完勝した。
あっさりと大ダコを倒し初めての食事。お味の方はどうだろうか。
---------------いただきます。
食べやすそうな脚からいただいてみる。
うん、見たまんまのタコの味。変な味じゃなくて良かったが、絶賛する程の味ではない。まさに普通。
ただし食感は素晴らしい。とても柔らかく食べやすい。もっとも鋭い歯と強靭な顎を持っているので、柔らかく感じるのかもしれないのだが。とにかくフワフワでいくらでも食べられる。
---------------フワフワで柔らかいね。
《気に入ってもらえましたか》
あまりの大きさに完食できるのか心配だったが、それは杞憂だった。あっという間に食べ終わり腹八分目。ちょうど良かった。
◇
そんな感じでそれ以降、空腹になったらタコ、カニ、エビなどを食べていた。しかし、いつも生食ばかりで飽きてきた。
調理とまで贅沢は言わないが、焼いたり出来ないものだろうかと思っていたところ、ニノから驚きの発言が。
《尻尾の先から火が出ますよ》
---------------えっ?! マジで?!
すぐに浮上して、尻尾の先を海面に出してみた。
---------------ニノ、お願い。
《弱火からいきますね》
尻尾の先に少しむず痒さを感じたと思ったら。
ボワッ
炎が出てる。自分の身体から炎が出ている。
《強火はこんな感じです》
ゴオオオッッ!
先ほどの10倍はあろうか。ビックリした。強火というより業火。尋常じゃない。
《一瞬ですけど最大はこうです》
ボッ!!! ゴワアアアッッッ!!!
怖っ!!! 爆炎が数十メートル噴き上がる。
---------------ニノ、わかったから止めて。ありがとう。
火が使えるのは便利だけど、この爆炎には少し引く。自分の身体が怖くなる。
---------------火をつけてって言ったら、弱火で十分だからね
《そうですか。わかりました》
取り扱い注意だな。しかしこの身体、ツノは光るし、尻尾から炎は出る。これはもう一人文明開花。インフラ整備済みと言えるだろう。
◇
そんなことがあった数日後。僕らはモフモフ島でキャンプをしていた。
次に空腹になったらキャンプをしようと決めていたのだ。もっとも毎日が野宿みたいなものではあるのだが、場所が変われば気分も変わる。
今日はせっかくのキャンプということで、2種類の食材を用意する。
巨大カニと巨大イカ。巨大イカは運が良くないと見つけられないが、本日はどうだろうか。浜辺でイカ焼きが食べたい。どうにか見つかって欲しい。
以前に見かけた海域を探してみる。ツノを最大限に光らせて周囲を探る。しばらくの間うろうろしていると。
《見つけました!》
---------------でかした! よし、狩ろう。
見つけてしまえば、巨大イカは弱いのであっさりと捕獲する。まずはイカを確保した。幸先の良いスタートだ。
カニは島の近くにいるだろうから島へと向かう。
いつもは一番大きい島に上陸することが多いのだが、本日は別の島へ上陸する。理由は一番大きい島には木々が生い茂っていて、炎を使って全焼させてしまったりしたら大変だからだ。
ということで、平地が多くて草木が少ない島へと向かう。
この島にはモフモフたちが少なく危険に晒すことがない。
モフモフたちばかり過保護にして、イカとカニには申し訳ない気もするが、美味しくいただくので許して下さい。
のっそりとイカを咥えて上陸する。一旦、イカを置いて海へ戻り、カニを確保し再上陸。
予定通りイカとカニ、2種類の食材を用意した。それでは尻尾の炎、弱火でじっくりと焼くとしよう。
いよいよキャンプのスタートだ。
---------------始めるよ。
《はい。楽しみです》
まずはイカから。炙っていると食欲をそそる良い匂いがしてきた。尻尾の炎で焼くこと数十分、こんがりと焼けたところをガブリといただく。
イカ焼き旨い! やはり火を通すと旨味が増す。
《生も良いですけど、焼いた方が美味しいですね》
---------------そうだろう、そうだろう。
これはビールが欲しくなる。
---------------身体からビールは出ないの? レモンサワーでもいいよ。
《出ませんよ》
調子に乗って聞いてみたが、やはり無理だった。
次にカニ。こちらもこんがりと焼く。殻は硬くて美味しくないので取り除いて、中身だけいただくとしよう。
もちろん散らかったカニの殻は持って帰ります。来た時よりも美しく。マナーは大事。
焼きガニ、これまた旨い。二度目になるが、酒が欲しい。
そんなこんなでイカに続いて、カニも完食。
---------------満腹だね
《初めて焼いて食べました。どっちも美味しかったです》
気がつけば身体が煙くなっている。陸上に長くいたせで肌がカサカサした気がするし、少し海に入ってさっぱりするか。
巨大生物になっても清潔感は保ちたい。
暗くなってきたので本来なら焚き火でもしたいところだが、僕らの手先は不器用なので尻尾の炎を眺めるだけで我慢する。
それでも十分に良い雰囲気だ。
---------------今日は楽しかったね。
《はい。とっても。のんびり炎を眺めるなんて初めてです》
もう少しのんびりしたら寝るとしよう。
その時、上空の雲の隙間に何か光るものが見えた気がした。
なんだろう? 流れ星かな。綺麗な夜空だ。
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