第7話 無人島?

 果てしなく続く広大な海。毎日のように周辺の海域の探索を続けても新しい発見がある。


 最初の数日は東の海溝へ行き、食糧になりそうな巨大生物を何種類か発見した。カニ型やエビ型は至るところにいた。これなら食事に困ることはなさそうだ。

 他には巨大な海蛇のような生物がいてビックリもした。僕らよりも巨大だったかもしれない。見るからに強そうだった。

 基本的に巨大生物は、浅い海域より深い海域の方に多く生息しているようだ。


 次の数日は、北の海域。

 激しい海流のため巨大生物は少なく、目立った収穫は得られなかった。

 その激しい海流を越えて、さらに北へ進むと人間が住む大きな島があるらしく、海上に船を見かけることもあったので、それ以上は近づくことはやめておいた。


 続いては、南の海域。

 海底火山帯があり、緊張感のある海域だった。


---------------ここ大丈夫?


《この辺は少し危ないです。ちょっと注意していきましょう》


 いつも余裕のニノにしては珍しく緊張感が漂う。

 それもそのはず、海底火山が活発に活動している上に凄く強そうな亀のような巨大生物がいた。亀のような巨大生物は色々と面倒そうなので争ってはいけないと僕は思った。

 南の海域には出来るだけ近づくのはやめようと思い、探索は一日だけとした。


 そして最後は、西の海域。

 ニノからいくつかの無人島があると聞いているので、楽しみにしている海域だ。ただし、無人島からさらに西へ進むと、人間が住む大陸があるらしい。慎重に行動しなくては。


 さっそく西の海域へ向けて出発する。

 探索しながら身体を動かす練習をしているのだが、かなり良い感じになってきた。ニノと話しながらでもスイスイ進めるようになっている。


---------------無人島があるって話だけど、いくつくらいあるの?


《10以上はありますよ。まとまっている島々もあります》


---------------へー、結構あるんだね。それなのに人いないんだ。どんな感じだろ。


《良いところですよ。でもたまに船を見かけることがあります》


--------------じゃあ船には注意だね。


《そうですね。船はぶつかるとすぐ沈んじゃいますから》


 過去にぶつかって沈めているようだ。それなら人間に警戒されるのも無理はない。これからはそういったことは平和に暮らすためにも避けていきたい。





 ニノと話しながら泳いでいると、小さな島が見えてきた。

 美しい珊瑚に囲まれた平らな島だ。

 僕らは海面から頭だけ出して、こそーっと陸上の様子を窺ってみる。木々もなく岩だけの小島で人影はない。


---------------上陸してみよう。大丈夫かな?


《はい。きっと大丈夫です。行きましょう》


 意を決して上陸してみる。


ザバアアアアンッ


 巨体を海面から突き出すと、波しぶきが舞う。

 この世界に来て初の陸上、どんな感覚なのだろうか。

 海にいた時より自分の身体が大きく感じる。二本脚で立っているのだが、少し怖いぐらいの高さを感じる。比較物がないので分からないが、50mぐらいの高さだろうか。

 そして、動きが遅い。のっそりしている。


--------------陸上だと動きが遅いね。


《そうなんです。でも一応走ることは出来ますよ》


 少し走ってみようか? とも思ったが、この島は狭すぎる。数歩で端から端まで達してしまう。

 狭すぎてやることもないのだが、この世界で初の陸上。せっかくなので少し休憩してみよう。

 しかし。


---------------あれ? 地面に座れない?!


《尻尾がありますからね》


えっ! 尻尾、邪魔じゃん!


---------------突っ立ってるしかないの?


《尻尾に重心を置くといいですよ。こんな感じに》


 両脚から尻尾へ重心を移す。すると、椅子に座っているような感覚になり、とても休まる。尻尾、便利だ! 一瞬で手のひら返し。

 そうして、尻尾の椅子に腰掛けつつ、陸上の空気を堪能した。久しぶりの空気が旨い。





 思いの外、小さい島だったので今日はもう一ヶ所、探索しようと思う。

 ここからは少し遠いが、いくつかの島がまとまってあるそうだ。そして、その島には何と言っていいのか分からない巨大生物がいるらしい。これは気になる。


 船がいないことを確認しつつ泳いでいくと、複数の島が見えてきた。4つ? いや5つの島が連なっている。

 先ほど上陸した島に比べると1つ1つの島が大きい。一番大きな島にはたくさんの木々が生い茂っている。

 遠巻きに島の様子を伺ってみる。家などの建物はなく、人の住む気配は感じない。さらに島に近寄り海面から断崖の上を見上げると、生えている木々がガサガサと動いている。それを見たニノはソワソワしている。


--------------どうしたの?


《いますね。近寄りますか?》


 何か巨大生物がいるらしい。ニノが今までになく積極的だ。

 それならと思い、断崖を避けて島の反対側に周って上陸してみた。


 これか!


 ニノがソワソワしている理由がすぐに分かった。

 島のいたるところに何と言っていいのかわからない巨大生物が群れている。僕らに比べると随分と小さい。小さいと言っても10m以上はあるのだが。小さな巨大生物だ。

 白くて毛むくじゃらでモフモフしている。手足が短くチョコチョコと動いている。鼻と尻尾が同じような形でどっちが前でどっちが後ろかも分からない。

 とにかく言えることはモフモフしていて凄く可愛い。


《触ってみますか?》


--------------もちろん。


 当然、触ってみたい。そっと手と尻尾で触れてみる。モフモフのふっかふっか。

 モフモフたちは僕らが近付いても全然逃げない。むしろ寄ってくる。


---------------癒されるね。


《そうなんです。ふっかふかです》


 これは至福の時間。

 最初の島で覚えた尻尾の椅子の体勢になり、モフモフのふっかふかを堪能する。この世界にきて緊張の連続だったけど、初めてホッと一息つけた気がする。


---------------このモフモフしたやつたくさんいるね。


《前より増えた気がします》


--------------増えたら別の島に移動するのかな。


《泳いでいるのを見たことがありますよ》


 泳ぐ姿も見てみたい。あの手足でどうやっておよぐのだろう。

 連れて帰りたいぐらいだが、水中ではモフモフが堪能出来ないので諦める。


 モフモフに囲まれて、のんびりしていたら辺りが暗くなってきた。名残惜しいが、そろそろいつもの棲家へ帰ることにする。

 

---------------また来ようね。


《はい。また来たいです》


 癒しの可愛い生物はモフモフ。そして、この島はモフモフ島と名付けよう。

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