第12話 またここにも1人

じゃ、ヤマよろしくね。また連絡する」


 「わかった。こちらこそよろしく」

 樋渡さんこと、ヒマとしれっと連絡先を交換した。今どきの陽キャとはこのことですか? 


「……やまりょうって女たらし?」

 やめろ、皆! 俺はそんなキャラじゃない! これでは某有名クズキャラで、最後は死んじゃう‼ まぁ俺は、モテないからそういう心配はないが。


 その後はやけに質問攻めされた気もするが、昼食を終え、次の授業の準備をする。俺らの学校では、3時間目が終わったら昼食。4時間目、昼休み、5時間目……と続いていく。てなことで、昼食後の4時間目は寝させてもらうぜ!


「井山、ちょっといいか?」

 と、イケメンの声で起床した俺。ちなみに授業爆睡した流れで、昼休みも爆睡しようと思ってました。まぁでも、相手が相手だし。








「佐生、どうしたんだ? 野球部の昼練とかあるんじゃないか?」

まさかのこのクラス、いやこの学校でも1番かもしれないイケメン、佐生様が話しかけてくるとは。


「まぁ、部活はやめようと思ってるし、大丈夫だから」


「え? やめる⁉ 実力あるのになんでなんだ?」

佐生は、投打ともにプロ級レベルを持っていると思う。この学校は、県内有数の強豪校だし、甲子園だって目指そうと思えば、目指せそうなのに。


「その点で話したいからさ。ちょっと話せないか?」


「わかった」

 時折、不自然な表情をしていたのは何かあったからなのか?


 





 佐生に連れられて、空き教室に入ると相棒の姿が。


「あれ? 真玲じゃん」


「あら、やまりょうさん。あなたも呼ばれたので?」


「なんで貴族風の話し方なんだよ」

 と、話していると


「2人ともすまない。ちょっと話したい事、聞きたい事があって呼ばせてもらった」

 と、佐生が話し始める。


「なんで、俺ら2人だけなんだ?」

 と、気になったことを質問する。


「まぁ、話あいそうだったからかな」

 と答える佐生。少しあやふやにされた感じで違和感が残るが。


「で本題は何なの?」

 と今度は真玲が質問する。


「その前に質問していいか? 2人はなんでそんなに仲が良いんだ? 付き合ってるのか?」

 やっぱり皆それ気になるのか。


「うーんまぁ、オタク繋がりで仲良くなったって感じかな。相棒って感じ」

 と、真玲が答えると、


「そ、そうか。なら良いんだ」

 と、ほっとした様子をみせた佐生。もしかして……


「それで、本題だ。俺は、野球をやってきた。けど、俺の1番やりたいことではないんだ」


「それって、野球はそんなに好きじゃないのか?」

 あれだけ実力もあるのに。


「別に野球は好きなんだ。けどただ上手いから続けてきたってのもあって。大きな出来事もあったし」


「大きな出来事?」

 それが本当にやりたい事なんだろうか?


「実は……俺もオタクなんだ。それで、俺は、自分の書いた作品がアニメ化するのが一番の夢なんだ」

 と、話す佐生。へーそうか。佐生もオタクなんだー。って、


「「ええぇぇぇえぇええぇぇっぇえぇぇぇぇぇえええぇええええ!!!!!」」

 俺と真玲は、思いっきり叫んでしまった。


「驚くのはわかるけど、静かにしてくれ。人が集まってくる」


「「あ、ごめん」」


「それで、俺の書いている小説がネットで大人気になって。そして書籍化することになったんだ」


「マジか……天才だ」

 俺が書いた程度では全然だったのに。


「それが、この作品なんだけど。″好かれている女の子よりその友達が好きになってしまった件″っていうんだけど」


「それ知ってる‼ 私ラブコメ好きだから読んでる!」

 まぁラブコメ好きの真玲は食いつくよな。


「それでどうするんだ? 書籍化するのか?」


「正直、2択だった。高校に通いながらだし、部活か書籍化でね」

 それで書籍化のほうを選んだのか。


「まぁ、いいんじゃないか? 夢は人それぞれだし、問題がなければ」


「野球部の皆には納得してもらえた。どうしても諦めれない夢があるって話したんだ。もちろん反対した奴もいたけど、頑張れよって送り出してくれたよ」

 いや、暖かすぎやろ! 皆聖人やな。


「自分の作品とか皆に知られるのは恥ずかしいから、とりあえず2人に話した。悪い」

 まぁそれ以外にもあるとは思うけど。


「いいんじゃない? 私はさらけだす事にしたけど、人それぞれ事情はあるし。それより、部屋とかみてみたい! 今度行っていい?」


「いつでも来てくれ」


「やまりょうも行く?」


「まぁ俺もいつか行ってみたいかな」

 まぁ俺がお邪魔虫な気もするけど。


「オーケーだ。あ、今日からは涼って呼んでいいか? 俺のことは征四郎って呼んでくれ」


 とまたオタク友達が増えたのであった。

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