第8話 少し違う朝
また憂鬱な月曜がやってきた。最悪な状況のクラスをどうするか。
と学校には行かないといけないので、仕方なく準備する。平加先生にダメでしたと伝えるしかないのか、いやだめだ。それではクラスに遺恨が残る。かといって、解決できる力は俺にはないしなぁ。どうやっても残るよなぁ。最悪な1年になるよなぁ。
くそ眠いくそ眠いくそ眠い。と、どうにかこうにか身体を動かし準備完了。なぜ眠いのかというと……それは桐峰さんとの出会いがあったからである。
あの後、連絡先を交換し、オタク談議でオールしてしまう始末。後はこれからの関係性。桐峰さんは、しばらくはオタクを隠すという今のままを維持しつつ、いつか公表したいということだった。俺が不運で委員長になってしまったため、学校で話すことは大丈夫だが、話しすぎると怪しまれる。あとは、学校以外で会う事があったら最大限協力すること。お互いめちゃめちゃめーっちゃ信頼する人には話してよい。秘密が洩れた際には、責任がある方が最大限対処するなどざっくりとルールも決めた。てか距離の詰め方えぐくない? これがイケてる女子なの?
「改めてよろしくね。そういやなんて呼べばいい?」
「委員長でいいよ。皆そういってるし」
「それは学校での呼び方でしょ。じゃなくて、プライベートっていうか?」
「あーなるほど」
「うーん涼とか? でも面白みないしな~」
「面白さ必要なのかよ……」
「だってこういうのアニメとかだと盛り上がるじゃん? いーやま、りょうりょう。いやりょう……」
「なんでもいいからはやく決めてくれ」
「じゃ、やまりょうで。なんかアイドルっぽくていいし」
「へいへい」
「やまりょうはどうするの?」
「うーんそうだな。俺は普通にじゃ、真玲って呼ぶよ」
「えー面白くないよ、やまりょう」
「候補が、きりれい、みねみね、みねまれとか壊滅してたんだけど」
「あちゃーもうちょっといい苗字だったらよかったな。ま、よろしく。やまりょう」
というのが昨晩ありまして。 いや、イケてる女子恐ろしい。
家を出ると、毎度のごとく太が待っていた。太は唯一信頼できる友達なので、桐峰さん、いや真玲のことを伝えた。
「いやいや超絶イベント起きてるでござる!」
「まぁ、太もオタクだし仲良くなれると思うよ。神絵師だし」
「いつか拝見したいでござるな」
「この事は言うなよ、絶対に」
「もちろんでござる」
やっぱりいいやつだな、太って。
とかれこれ通学路を歩いていると、ありゃ、話題の人物が。噂をすればなんとやら。真玲は、こっちに気づくとススス……と近づいてきた。
「おっはーやまりょう!。野山君もおはよう!」
真玲は、一瞬で状況を把握したようだ。てか、俺信用できる友達が太しかいないしな! ぬはは。
「き、真玲は大丈夫なの? いつもは山王さんとかと登校してるじゃん」
未だに女子を名前呼びするのは慣れないんだよなぁ。本人がいるとめっちゃ恥ずかしいし。
「まぁ、いろいろ揉めた弊害で気まずくなっちゃったけどね。あの子、間違いなくうちのエースの佐生君狙いだから」
問題が明るみになったことで、少し関係がギクシャクしたようだ。影響あんまりないといいけど。
「真玲は佐生とは絡まないのか?」
「まぁ、うちの女王が狙ってるから私も絡むことはあるけど。でも、女王が独占してるから、あんまり絡まないなぁ。あれで、佐生君も隠れオタクとかだと仲良くなれそうだけど」
あーなんかわかる。共通の知り合いだけ、トイレ行ったときとか気まずいよな。女王様の山王さんが佐生に好意を寄せていて、それつながりで絡むけど、女王が独占するからあんまり話さないってことか。佐生が隠れオタクだったら、オタクの平均顔面偏差値上がるからやめてクレメンス。
「はは、まさか」
「それより大変だね、やまりょう? 今日中に決めないとでしょ?」
「ほんとそうだよ。平加先生も放任主義だし」
「私手伝おうか?」
いや、神かな?
「大丈夫なのか?」
あんまり話しすぎたりしたら怪しまれるのでは?
「だいじょぶだいじょぶ。やまりょうが引き当てた貧乏くじ役立ってるから」
と話していると学校についた。なんか、こっちみられてざわざわしてるけど? と不安に思っていると
「見てて」
真玲の顔が変わった。役者のようだ。
「委員長、体育祭のことよろしくね。色々問題もあるけどなんかあったら!」
と明るい声で言って、去っていった。
すると、
「なんだ、委員長か」
「あのクラス、荒れたっていう噂だしな」
とざわざわしていたのが収まった。
「いや、委員長キャラって便利なときもあるんだな」
と感心して、ぼそっと呟いた。
「あの、涼殿」
「うん?」
そういや、太喋ってなかったな。置いてけぼりにしちゃったな。
「仲良くなりすぎにもほどがあるでござる」
まぁ、真玲のキャラもあったしなぁ。
「まぁ色々あったからね。てか太、黙ってたな。気使わなくてもよかったのに」
「俺には、越えられない壁があるぜ、でござる」
「そんな強がらなくてもいいじゃない」
「俺をなめるんじゃねぇぞ、でござる」
太は俺より重症だった件、でござる。
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