にゃ王様、手形。
命が玄関を開けた先には点々と続く汚れが残されていた。
ため息を一つ吐くと洗面所から濡れ雑巾を持ってその跡を辿っていった。
するとやはりというべきか自室に辿り着く。
扉を開けた瞬間、部屋の中で寛ぐ魔王様が目に入った。
そしてそこには魔王様以外誰もいない。
命は無言で濡れ雑巾を振りかぶり、投げた!
魔王様の顔面にクリーンヒット!
『ぶっ、何をするのだ!』
「足を拭いてからって言ったよね?ドラ」
『む?』
「何でこんなに汚れてるのかな」
『…いや、それはだな』
魔王様が命に目を向けるとニコリと笑いながら背後に般若を控えている姿が目に入った。
その言葉自体には怒りが含まれてはいなかったが命の身体全体から発せられる圧が魔王様を押し潰す。
「掃除、するよね」
『はい』
「よし!ならまずは足を拭こうか」
急に元の命に戻る。先程までの般若が幻のようだ。
魔王様は投げら……ではなく、渡された濡れ雑巾で手足を拭く。
その姿を命は頷きながら眺めている。
「あ、そうだ。次これやったらご飯のおかず減らすからね」
『なん、だと…!』
器用に雑巾掛けをする魔王様に声を掛けた。
その言葉を聞いた魔王様の後ろに雷が落ちる。
『なぜだ!酷いぞ命!』
「なら約束守ろうね」
『ぐぅ、』
「はいはい、早く掃除して」
『そんなことしている場合ではないにゃ!我の飯がかかっておるのだぞ!』
「今日はちゃんと掃除したらおかずも減らさないから」
『本当か⁈』
「ほんとほんと」
『我のを取るでにゃいぞ!』
「ドラみたいに食い意地張ってないから」
『にゃんだとー!』
「ほら、早く掃除して。終わらないとご飯にならないよ」
『早くやるぞ!命』
「何で俺も……」
『飯〜、めし〜』
小躍りしながら掃除をする魔王様の姿は愛らしいが何とも言えぬ気持ちになる命だった。
♢♢♢次回予告♢♢♢
魔王様、部屋を汚すのはどうかと思いますよ…
幸せをもたらす花?花言葉が…ってこれ、もしかして今回の話引きずってません?
next:にゃ王様、クローバー。
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