にゃ王様、ぬいぐるみ。

「ふーん、ふふん」

「たっだいまぁー!」

『どうした?ついに壊れたのか?』


ハイテンション〜鼻歌を添えて〜 な状態で帰ってきた命に胡乱げな視線を向ける魔王様。


「ふっふっふっ、これを見よ!」

『な、それは⁈』


そう言って命が大きなビニール袋から取り出したのはこれまた大きな犬の人形だった。



『……う、』

「う?」

『裏切り者ー‼︎』

「えっ何で⁈」


魔王様による猫パンチが炸裂した。

皮は猫とえども内は魔王様。手加減していても流石の威力。


『そこに直れぃ!』

「えっあ、はい」

『よいか、命。お前は我の下僕にゃ。お前が持ち帰ったものは何だ!』

「え」

『何だ!』

「ぬいぐるみ?」

『違う!何のぬいぐるみだ』

「犬?……あ」


それが何であるか言葉にした後、つい声を漏らした。なぜこんなにも魔王様がお怒りになっているかようやく気付いたのだ。


『あ、まずい。みたいな顔を今更するでない!』

「いや、これは“まずい”じゃなくて“うわぁ、面倒”の顔だよ」

『余計悪いにゃ!』

「ありゃりゃ」


ほけほけと笑う命。

命すわぁん?何言ってんの!


『なぜ猫ではなく犬なのだ!』

「ダメだった?」

『犬は我の敵にゃ!我の敵を連れてくる下僕がいるか!』

「クレーンゲームで丁度取れそうな景品だったんだもん」

『そんなもの知らん!我を崇めるのだにゃ!』


眉を下げる命。

その時、命は閃いた。

このにゃんこを犬のぬいぐるみに陥落させよう、と。


「ほら、これ毛並みが気持ちいいよ」

『ふん!そんなもの知るか!』

「ねぇ、敵を知ることも必要でしょ?触ってみなよ」

『むぅ』


命に足に押されて肉球を押し当てる魔王様。


『!これは…!』

「ね、ね、どう?」

『…仕方ない。我のクッションになるなら置いてやってもいいにゃ』

「やったー」


やれやれとため息を吐きながらそう言った魔王様。

ですが、その…尻尾が揺れていて丸分かりです!

まぁ、そんな経緯によってぬいぐるみはクッションとしてこの部屋に置かれることが決定ふる。

追いやられてどこか寂しそうだった犬のぬいぐるみは嬉しそうにしていた。

それにしても魔王様、チョロすぎでは?


♢♢♢次回予告♢♢♢

ぬいぐるみっていいですよねー。

流石の魔王様を結局は陥落でしたか。


命が帰ってくると自分の部屋が汚れまくっていた⁈

うわぁ、これは汚い……

ん?この黒い汚れ何かの形をしている…?


next:にゃ王様、手形。

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