にゃ王様、魔障石。

湿度の高い空気が肌に纏わりつき汗が浮かぶ夏への移り変わりの季節。

二人は山道を歩いていた。

何故そんなところにいるのか。それは昨晩見ていたオカルトサイトのせいだった。


「“近所の山に光る何かが落ちていくのを見た。その日から山の空気がおかしい。何かは分からないが確実に変化が起きている。”」

『昨日のやつか?』

「うん」

『フン、どうせ気のせいか何かだろう』

「うーん。でもこの“光る何か”っついうのが気になるんだよね」

『見間違いだろう』

「そうかなぁ?」


そんな会話をしつつ山を登り光る何かぎ落ちたと思われる所へと進む。

軽い足取りの二人だったが段々と歩みが落ちていた。そして少しずつではあるが山に変化ぎ起きていた。

先にそれに気付いたのは我らが魔王様だった。


『おかしい』

「何が?」

『この山がにゃ』

「そうかな?」

『ここに入った時を思い出してみろ。動物がかなりいただろう』

「ん?確かにいたね。それがどうしたの?」

『今現在、鳥の鳴き声すらしない』

「確かに…」

『この付近に我ら以外の動物の気配が全くせんのだ』

「えっ!」

『この山、何かある。気を付けろ』


普段の様子からかけ離れた表情と空気を纏う魔王様に命も真剣に頷いた。

二人は警戒しつつ進んでいく。正確な場所は分からない筈が何かに呼ばれるように迷うことなく進んでいく。

そして少し開け場所に出てピタリと止まった。明らかにそこだけ空気が違う。重くのしかかるような空気。この場にいたく無いと本能的に思わせられる。

周囲に目を配るとある一点で視線が釘付けになった。

そこには光すら飲み込んでしまうような黒に鈍色が散った拳大の石があった。


「ねぇ、あれなんだろ」

『っ!めちゃくちゃやばい気配がするにゃ。気を付けよ』


ワントーン下がった声で命に牽制を掛けた。

命もそれは分かっているようで「もちろん」と返した。

それぞれが警戒しながらそれに近付く。

魔王様は何か思い当たる物があるのか、眉間に皺を寄せて睨みつけるようにそれを見ている。

手を伸ばすせば届く距離に着いた時、不意に命が手を伸ばした。

それと同時に魔王様の目には鈍色の模様が動いているように見えていた。それを見た魔王様は目を見開くと命に向かって叫ぶように言いながらその手をはたき落とした。


『待て!それに触れるでにゃい‼︎』

「えっ?」


それによって命は石に触れる直前でピタリと手を止めた。


『それを直接触れば身体に害が出るにゃ』

「身体に害?」

『そうにゃ』

「ていうか、コレがなにか知ってるの?」

『コレは“魔障石”と呼ばれる魔石の一つ。我のいた世界にあった物にゃ』

「魔石?それにドラのいた世界にあった…?じゃあ、何でここに?」

『それは我にも分からん。しかし、このままでは災いを振り撒くだろう』

「うーん、なんとかして回収したほうがいいのかなぁ」

『それが簡単にできたら苦労せんにゃ』

「直接触れなければいいのかな?あと保管方法は?」


バックの中を漁りながら神妙な顔で尋ねる命。それに対して一つ頷き答えた。


『定石は密閉空間に封印だな』

「よしっ、ならコレでいけるな」

『……。』


そう言って漁っていたバックからトングとガラス瓶を取り出しソレを摘み上げた。


『って、ちょっと待て‼︎何故そんなものを持っているにゃ⁈』

「UMAの中にはこういうのが必要な子もいるんだ」

『そうにゃのか?』

「うんうん、だからいつも最低限は用意してるんだ」

『……最、低限?』

「そ、最低限必要なんだよ」

『流石に騙されんぞ⁈』


どこが最低限なんですか命さん⁈

そんな嘘は魔王様だって騙されませんって……嘘、だよね?

しかしながら、この命の行動によって平和が保たれたのだった。



♢♢♢次回予告♢♢♢

危険物質“魔障石”?そんなにやばい物なのか?

この世界、もしかしたら他にもあるのかもしれない。それがあれば……


next:にゃ王様、魔障石Ⅱ。

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