にゃ王様、マタタビ。

寝ている魔王様の鼻がふすふすと動いている。


「フガーー、フガーー」

「どんな寝息してんの?大丈夫?」

「ぅむが!」


突然起き上がった魔王様。

それに驚いた命は大きく肩を弾ませた。


『何じゃ?』

「…いや、何でもないよ」

『フンフン』

「え」

『命…!』

「今度は何⁈」


目覚めた魔王様は命の服を嗅ぎ始めた。

そして一通り嗅ぎ終えるとしっかりと命の目を見て言った。


『食い物か!』

「は?」

『食い物を持っとるのだろ。我にはわかる』

「持ってないけど」

『命の服から芳醇な香りがする。誤魔化そうとしても無駄にゃ!』

「えーー」

『特にそのポケットが匂う!差し出すにゃ!』

「ポケット?もしかして…」


そう言ってポケットに手を突っ込む。その指先がふわりとした物に触れた。

それを取り出した命は魔王様に見せた。

ふすふすと鼻を動かし匂いを嗅ぐ。


『これにゃ!』

「おっ、これかぁ。よく分かったね」

『香りが漂ってきたからにゃ』

「そんなに香りなんてする?」

『我ラベルになれば分かるのだ!』

「そっかぁ」

『早くそれを我に献上せよ!さかな、さ・か・な〜〜』

「ん?あーこれおもちゃだよ?」

『んな⁈何にゃと⁈』

「一応言っておくけど食べれないからね」

『にゃぜだ!』

「食べるつもりだったのかよ…人形だからね」


項垂れる魔王様。食い意地が張りすぎですって!

しかし魔王様は直ぐに回復し、人形をくれと言った。


「いいけど食べない?」

『食べんわ!』

「はいはい」


受け取った人形に頭を擦り付け喉を鳴らす魔王様。

側から見ればただの猫。

しかし何故こんなにも人形に擦り付くのか。それは命にも分からなかった。

その折に命のスマホに朱坂からのメッセージが届いた。それを開いた命はふと思い出した。


「そういえばこれくれたのって朱坂だったけ?聞いてみるかな」


そう呟いて魔王様の様子を朱坂に伝え、人形のお礼と共に何か心当たりはないかと尋ねた。

しばらくしてから帰ってきたのは「マタタビじゃね?」という一文。


「マタタビ?ってあのマタタビ?」


チラリと魔王様の様子を確認する。いまだに身体を人形に擦り付けている。


「あー、うん。猫と言ったらマタタビか。そうだな」


ニコリと笑う命。魔王様、いつまでそうしているのですか⁈アンタ猫じゃなくて魔王!

かつて世界を支配した魔王様ですよ⁈威厳が無い!



♢♢♢次回予告♢♢♢

机があれば思わず叩いてしまいそうなほど荒ぶってしまいました。この先魔王様は大丈夫でしょうか?

次回、この世界には無いはずのものが見つかる。それは一体何なのか。何故この世界にある?


next:にゃ王様、魔障石。

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