にゃ王様、風邪。

長時間びしょ濡れままだった命。いくら暖かくなってきたとはいえ体調に支障をきたすなんてこと想像に容易いだろう

結果、風邪をひいた。


『どうした命?』

「ん"ー、体が怠い……」

『お前、熱いぞ』

「ゔーんー」


魔王様は鈍い反応しか返さない命に「少し待ってろ」と言い部屋を出て行った。

向かった先はリビング。

扉の先にはコーヒーを飲みながらニュースを見る父__司っちがいた。


「にゃーにゃー(我について来るのだ!)」

「どうしたんだいドラちゃん?」

「みゃー!(さっさと来んか!)」

「ん?」


……何も伝わらない。

魔王様は家族の前では人語を話さないという約束が命とある。

司っちはフワフワとした笑みを浮かべて首を傾げている。

魔王様頑張ってください!


「ニャウーー‼︎」


このままでは一生伝わらない。そう考えた魔王様は足元までいきズボンの裾を咥え引っ張る作戦に出た。


「え、なになに?」


戸惑う司っちを無視してグイグイと引っ張る。それが功を奏しついに立ち上がった司っち。魔王様はズボンから口を離すと扉を指差しにと鳴きした。


「ニャー!!(行くぞ‼︎)」

「着いてこいってことかな?」

「にゃふ!(ずっとそう言っているだろう)」

「合ってるんだよね?何処いくのかな?」


魔王様は走り出す。階段を駆け上がり廊下の角を曲がり、漸く命の部屋に帰ってきた。

そして大ジャンプリターンズ。扉を開けて命の元へ行く。

部屋に来た司っちが気付いた。


「命、体調悪いのか?」

「ん"、風邪だと思う」

「ちょっと待っててな。体温計持って来るから」

「分かった…」

「んー、どこにあったっけなぁ…あー、あと欲しいものとかあるか?」

「飲み物欲しい、かも」

「んじゃ、水も持って来るな」


そう言って部屋から出ようとしたときふと、足を止めて振り返った。

そして、魔王様に視線を向ける。


「忘れるところだった。ドラ、よくやったな」

「にゃふん‼︎(当たり前であろう)」


胸を張って答える魔王様。いやいや、あなた内心相当焦っていたでしょうに。

これにて一件落着。

ゆっくりと休んだ命は次に寝て起きた時には熱も下がり元気になることだろう。


蛇足ではあるが、その日の晩のこと。

魔王様の本日の功績は家族に知れ渡っていた。そこでお姉様が一言。


「ありがとうねドラちゃん」


それまであった威厳のある様相を崩しデレデレとしたのであった。

全てが台無しになった瞬間だった。



♢♢♢次回予告♢♢♢

さっすが魔王様!下僕も気遣う理想の君主!…ですが最後のはどうかと、、、いや、何でもないです。

ってあれ?何咥えてるんですか⁈

それ食べ物じゃなくてただの草!


next:にゃ王様、マタタビ。

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