にゃ王様、車。

固いアスファルトの上を走る車。それを見つめる魔王様。


『金属の塊が高速で走っているにゃ⁈』

「……?車」

『くるま?ゴーレムの親類か?』

「いや、違うと思うけど」

『にゃに、違うのか?』

「車は人が乗って移動するために使うんだよ」

『馬車のようなものか』

「馬が引いてるわけじゃないけど、まぁ意味合い的には一緒かな」

『魔石……はこの世界にないのだったな。ならば何故動くにゃ?』


至極当然の疑問のように命に尋ねる。それに対して「詳しくは知らないけど」と前置きをしてから答えた。


「電気をエネルギーに換えているんだ」

『エネルギーに換える?どうやってだ?』

「だから詳しくは分からないって」

『にゃぜ知らんのだ!』

「俺専門家じゃないし」

『む、それもそうか』


うーむむ、と声を漏らしながら眉間に皺を寄せる魔王様。

エネルギーの変換方法を考えているようだった。しかし、基礎も何もない。分からないものは分かりようがない。

そう考えた魔王様はまず“車”を知ることにした。


『命、その車に我を乗せるのだ』

「どこ行きたいの?」

『行くことが重要なのではない。乗ることが重要だにゃ』

「何で?」

『あれはかなり市政に普及しているようだからな。それがどういうものか知る必要がある』

「うーん?知る必要?」

『いいか、知るには体験することが一番早い。さっさと行くぞ!』

「あー、待って待って。今は父さんも母さんもいないから動かせないよ」

『?命が動かさばいいだろ?』

「免許ないから無理だって」

『免許?』

「そ。車を運転するには国の許可が必要なんだ」

『何?馬車とは大違いだな……』

「と言うわけで今は車に乗れないんだ」

『他のものは居らんのか』

「いないこともないけど……」

『ならば早く呼んでくるのだ‼︎』


早くと言い募るドラに命はボソリと一言発した。決して大きくはない声だったがその言葉を聞いた魔王様はビシリと固まった。


「姉さん、何だよね」

『……』

「あと免許持ってるの。どうする?」


魔王様の頭の中ではあの日がフラッシュバックする。この家で勝てないと本能が察知したあの瞬間。

答えはもう既に出ていた。


『呼ぶわけがなかろう⁈』


かくして魔王様の車デビューは見送られたのだった。



♢♢♢次回予告♢♢♢

やはり命の姉が苦手な魔王様。まぁ、そのうちに車にも乗ることになるでしょう。

突然魔王様の頭の中に舞い降りた“ちゅーる”という単語。これは神の啓示なのか何なのか。。


next:にゃ王様、ちゅーる。

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