にゃ王様、雨。

『外へゆくぞ!』

「いや、雨降るって」

『降っておらんだろ』

「もうすぐ降るからダメ」

『いいから行くぞ!』


ただいまの空模様は晴れ。しかし一時間後には雨が降るとの天気予報がある。

命は外へ行こうとするのを止めるがそんなことを聞く魔王様ではない。

仕方なく傘を持って魔王様と共に外へ出た。


……約一時間後、見事に天気予報は当たった。ザーザーぶりの雨だ。


「ほら、だから言ったろ?雨が降るって」

『この世界のものは未来を見る能力を持ってるのかにゃ⁈』

「ただの天気予報だよ」

『天気予報とな……ふむ、天気を予測するとは面白い力を持っているな』

「力、なのか?」

『うーむ、我の魔法で再現できるか…?いやしかしこれはスキル寄りの力か……』

「おーい、ドラ?」


自分の世界へと入り込む魔王様。

命は仕方ない、と魔王様を抱えて傘をさし家へと歩き出した。


『そうにゃ!』

「うわっ」

『降ろせぃ!』


とたん、魔王様は何かに閃き雨に濡れることを厭わず飛び出す。

そして耳と尻尾をピンと立て魔法を行使した。


《天を起とし此方を終とする。水は巡り我に恵みを与える。教えよその先行きを》


魔法を行使するには音律を紡ぐ必要がある。熟練のものならば短縮化することも可能だ。しかしいくら魔王様といえども今し方作った魔法。丁重に音律を紡いでゆく。

詠唱が進むに連れ魔王様を取り巻く魔力の濃度が濃くなっていき、発動せんとしたその瞬間。


「ドラ!危ない!」


トラックがかなりの速度で近付いて来ていた。あんなものに轢かれればひとたまりもないだろう。ついにはそれが眼前まで迫っていた。


しかし、トラックはぶつかることなく爆音と共に目の前を通り過ぎていった。

……大波の置き土産をして。


トラックは大きな水溜まりの水を跳ね上げて魔王様に頭から泥水をかけていった。


「あちゃー、ドロドロだ」

『我に水をかけるとは不敬だにゃ!』


頭から泥水を被った上に魔法の行使を妨げられた魔王様は怒りを露わにした。しかしその姿はプンスコという言葉が似合い、威厳はない。


「早く帰ろっか」

『そうだにゃ』


命がポツリと吐いた言葉に賛同する。

魔王様は濡れてしまったのならもう関係ないと雨の中を歩いた。

心なしかその姿はしゅんとして見えた。


が、家に着いた時バトルが勃発した。


“風呂に入れたい命VS本能が拒否する魔王様”ファイッ!


「ほら、汚れてるんだから風呂に入るぞ!」

『やめろーー‼︎』


その日の夕方、命に負けた魔王様のブニ"ャーーという悲鳴が佐々本家で鳴り響いたとか。




♢♢♢次回予告♢♢♢

新たな魔法があと少しで誕生したというのに……!って、あれ?こっちでも魔法がちゃんと使えるようになったのですか?

それにしても落ち着いてください魔王様!またお外へ出られたのですか⁈

たまにはゆっくりしたらいいじゃないですかぁ。


next:にゃ王様、寝る。

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