にゃ王様、板。

『命』

「……」

『命!』

「……」

『おい、命!』


呼びかけられた命はベットの上で寝転がりながらスマホを見ている。

その様子に業を煮やした魔王様は無防備なその頭に飛び乗った。


「ぐふっっ」

『みーこーとー!』

「ちょっ、何すしてんのドラ!」

『我を無視するでにゃい!』

「うわ、ちょ、暴れるなって」


命は頭上で暴れる魔王様を回収し、無線イヤホンを外した。


『なぜ我のことを無視したのだ!』

「あー、聞こえてなかった…ごめんな」

『にゃんだとぉ!スライムだって声を聞くことができるというのになぜお前には聞こえんのだ!』

「え、スライムって聴覚あるの⁈」

『そこではにゃい!我に名を呼ばれたものは喜び咽び泣くものだぞ!』

「はい。ごめんなさい」

『全く、せっかく我が呼んでやったというのに』


眉を下げて謝る命。どうやら本当に聞こえていなかったようで申し訳なさそうにしている。


「それで、どうしたの?」

『暇だ!』


えっ、魔王様?それで呼んだんですか⁈

流石の命も顔を引き攣らせている。

イヤホンをしていて気付かなかった命がいけなかったがこれは結果的にどうなのか……


「えー、そうは言われても……」

『何か芸はないのか』

「そんなものないって」


暇だと喚く魔王様に困った様子の命だったが何か閃いたのか「あっ」と呟いた。


「これ一緒に見る?」


そう言って取り出したのは先程まで見ていた画面だった。


『なぜ、絵が動いている⁈何なんだこれは一体』

「スマホだよ」

『嘘をつくでない!下僕その2が使っていた写真機ではないか!』

「まぁ、確かに写真も撮れるけど……」


動画を見せるが朱坂の言っていたことを思い出し訝しみベシッ、ベシッとスマホを突く魔王様。


「何してんだよー」

『中で人間が動いておる。これは“てれび”か?』

「だからスマホだってば」

『何なんだこの板は……!』

「んー、写真を撮ったり動画を見たりゲームしたり、遠くの人と連絡を取れたりする機械……かな?」

『にゃんだと!この世界にそんなに便利な魔道具だったのか⁈』

「魔道具じゃなくて機械ねー」

『むむむ、僕の生活を知ることも王の務めだにゃ!命それを我に貸すのだ!』

「はいはい」


差し出されたスマホの画面を肉球で触る。しかしうまく反応しない。


『ぶなぁ!』

「ドラ、そっちじゃなくてこっちをタップして」

『やっているだろう!』

「あー!だからこっちだってば!」


グッと握りしめた肉球を見つめて一言。


『くっ、我の肉球がプリティーすぎたせいで……』

「ぶふっ」


思わず吹き出してしまう命と自己肯定感はマックスな最後まで締まらない魔王様であった。




♢♢♢次回予告♢♢♢

スマホ?何それ便利ー!な魔王様。しかしそのお姿では難しかった。

そうそう、今って何月?え、6月?

雨の季節ですねー。ちょっと魔王様どこへ⁈

もうすぐ雨ですよ‼︎


next:魔王様、雨。

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